008 銃撃戦2
施設は広いと言っても、複雑な構造ではなく、単純に広い部屋を直結させたようなフロアが重なっている建造物にクロ達はいるみたいなので、一度辿り着けた今となっては、もう迷う理由はない。
「どうしたものやら……」
流石に施設内で発砲したのはまずかった。
入った途端、階段に前に陣取った他の黒服達が、休憩用の椅子やテーブルを盾にして発砲してきたのだ。近くに落ちていた窓ガラスの破片を鏡代わりにして覗きこんでも、男の数以外、発砲当初から隠れるまでの光景と大差がなかった。
「どうしよっかな~クロお手製の閃光弾は持ってないし~……あ」
ふとポン、と手を打ち、リナはそのまま建物から離れた。銃撃がやまないなと考えながら身を低くして進み、目的の場所を見つけた。
「あったあった、っと」
そうして見つけた非常階段を進んで行くリナ。目的の階まで進めば何とかなるか、と考えて。
「……げ、煙草が落ちてる。また誰かが吸いに来ない内に……ってあれ?」
リナが吸っているのと同じ銘柄だったこともあってか、思わずその不自然な煙草を拾い上げていた。
「咥えた後があるのに……火が点いていない?」
なんでこんなもったいないことを?
しげしげと眺めながらも階段を上るリナだが、目的の一つ下の階で足を止めることになった。
「やっぱり来たか~」
弄んでいた煙草を投げ捨て、片手で構えていた軽機関銃を両手で構え直すリナ。そのまま近づいてくる足音に向けて扉越しに銃口を向け、そのまま引き金を引いた。
ガガガガ……!!
「派手にやってるな……どうだ?」
「これくらいなら……しかし、これはひどい」
その男達は強引に乗り込み、人の手術を横から攫ったのだ。ただし、ひどいのは環境や最初に行われていた手術の腕ではない。
「いくらマイクロフィルムとはいえ……普通、睾丸に隠すかな?」
「それは、たしかにひどいな……」
乗り込んだ男達は三人、そのうちの一人である男は手術をし、もう一人は少し離れた壁に背中を預けて銃を弄っていた。そして、最後の一人である男は……。
「そう言えば……オヤジ達はどこに行ったの?」
「隣の部屋にあいつら連れて行った。今頃長い話でもしているんじゃないか?」
階下の銃声とは違う音が響くが、二人は関せずと見張りと手術を続けた。
「あと兄さん、一応銃も消毒しておいてよ。ここで雑菌が入ったら対処できないんだからさ」
「大丈夫だ。俺毎消毒液被ってるよ。一緒にぶっかけただろうが」
「あれはこれよりましとはいえ、本当にひどかった……」