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006 男女

「ただいま~」

「おかえり。早かったね、今日は」

 あの後、ファミレスの前でカオルと別れたリナは、そのまま家路に着いていた。途中、不審な影も見かけたが、大方借金取りがカオルを見張りに来たのだろうと見逃した。

 リナに尾行も付けず、カオルを襲う気配がないところを見ても、余計な手を出さない玄人の所業だと理解できてしまう。そんなところに首を突っ込んでも、ただの少女にできることなどなかった。

 腰掛けているクロの傍に寝転がり、膝をそのまま枕にしてから、リナはさっきまでの話を聞かせた。

「……というかさ、相手の男ってなんでカオルさんに甘えなかったんだろうね。そうすればみんな幸せだったのにさ~」

「ん~、男の方が許せなかったんじゃない?」

「何を~?」

 膝の上で頭を揺らすリナを撫でつつ、クロは思いついたことを話し始めた。

「元婚約者なんでしょ。だから堂々と付き合いたくて、自分で解決しようとしているんじゃないかな?」

「にゃるほどね~……ワタシから言わせれば、馬鹿みたいな意地だと思うけどね」

「そんなもんだよ、男なんて」

 呆れたように話す二人。

「それに見方によってはだけどさ、この話って結婚詐欺っぽくない?」

「……あ~言われてみれば」

 確かに、とリナは頷いた。

 男は借金持ちで、女は金持ち。しかも女は一度決めると躊躇なく実行できるタイプ、典型的な詐欺のカモだ。

「まあ、明日会うのならその時にお金を取るかもしれないし、そのまま挨拶して別れるだけかもしれないけどね」

「う~ん……クロはどう思う?」

「明日の朝会うなら詐欺じゃないかもね。銀行開いてないし」

 電話があったのは夜、そして次の朝に会って消えるとなると、たしかに出金している暇はない。通帳ごとということも考えられるが、時間がかかる上に止められる可能性がある以上、それはないだろう。

「となるとガチか~……」

 クロがリナの頭を撫でるのをやめた。主人の雰囲気が変わるのを感じ取ったからだ。

「クロ、ちょっとごめん」

 クロの膝から起きあがり、立ち上がったリナは窓際に移動し、窓枠に身体を隠しながら外の様子を窺った。

「……つけられた?」

「つけられたっぽい。いやこれって……」

 自分の耳に自信のあったリナは、つけられていたことに対して若干憤りを感じていたが、それはクロの言葉で払拭される。

「発信機じゃない、これって」

「……え?」

 振り返ったリナに、いつ手元に引き寄せたのか、クロがスクバに付いていた小さな虫みたいな機械を指で摘んで持ち上げていた。

「そういえば、変な電子音がするなとは思っていたけど……」

「まあ、盗聴機は付いてないみたいだし、会話を聞かれた訳じゃなさそうだよ」

 大方、人数に余裕ができたから、保険で見張りを立てているといったところだろう。

「よしクロ、壊しちゃえ」

「そしたら下の人達が乗り込んでくるよ。相手も後ろめたいことがあるって勘違いして」

「勘違いというか……別口の後ろめたいことに巻き込まれたと言わない、これ」

 とはいえ、このまま放置というわけにはいかない。

 おまけに勝手につけられて気分の悪いことこの上ないのだ。

「仕方ない。あれを使って……」

「あれ?」

 窓枠から離れたリナは、戸棚に顔を突っ込んで、中身をひっくり返しながらあるものを探し始めた。

「……後で片づけてよ」

「クロ、よろしく~」

「まったく……あれ、これって」

 同じように戸棚に近寄り、覗き込んだクロはリナが引っ張りだしたものを不思議そうに見つめた。

「……なんでこれ、普段から使わなかったの?」

「その分手入れが面倒でさ~というわけでクロ」

 引っ張りだした『あれ』を弄りつつ、リナはクロに命じた。

「出かけるよ~」

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