表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/60

004 ボイコット

 アップルフォンが鳴っている。いや、既に五分程鳴り続けていた。

「クロ~まだ鳴ってる~?」

「鳴ってる。どうする?」

「電源切って放置~休んだ後でお詫びの電話入れるから出ないでね~」

 枕に顔を埋めて耳を塞ぐリナの指示を受けて、彼女に飼われている元ホームレスの青年、クロはアップルフォンの電源を素早く切った。

 その後、うつ伏せに寝転がっているリナの背中を指圧し、凝りを解す作業に戻った。

「あ~きもちい~」

「年寄りっぽいよ。その言い方」

 しかしここは自宅で、見ているのはマッサージをしているペットだけ、今のリナにとって外聞を気にする必要はなかった。現に服装も簡素なスポブラとセットのショーツ姿だ。

「いい人だし、金払いもいいんだけどね。流石にほぼ毎日はないわ~おまけに固定客の相手もしなきゃだし、もう休んでる暇がないわ~」

「お疲れ様。今日くらいはゆっくり休んでて」

 軽く手を振って応えるリナ。

 枕元には煙草と灰皿の喫煙セット、そしてカクテル缶がおいてあり、冷蔵庫の中にはクロ特製のプリンがある。もう完全に自堕落モードに入っていた。

 マッサージも終わり、寝転がったまま煙草を咥えて火を点けると、リナはファッション雑誌を手元に引き寄せ、枕元に広げて読み始めた。

「にしてもなんで、ワタシなんだろうね~あんだけ金払いがいいなら、けっこういい職業に就いてると思うのにね~」

 なんとなしに発言したリナだが、クロは割と真面目に返してきた。




「単純に、寂しいんじゃないかな?」

「あんだけ美人でお金持ってるのに~?」




 しかし、リナは軽口で疑問を返した。それでもクロは、言葉を選んで会話を続けた。

「例えばだけど、もし俺が女子高生に欲情する変態だったら、拾って飼ってた?」

「飼わな~い。むしろ置いて逃げる~」

「そういうことだよ」

 そこでリナは、首を回してクロの方を見た。彼も咥えられた煙草の灰が落ちないかと見つめた。

「要するに、誰でもいいわけじゃないんだよ。周囲に人がたくさんいても、本当にいて欲しい数人がいないと、人によっては結構寂しがったりすることがあるんだって。……まあ、これは受け売りだけどね」

「にしても詳しくない、クロ」

「物覚えがいいだけだよ。……無駄にね」

 差し出されたプリンに、リナは煙草を灰皿に追いやってから口を付けた。クロも煙草の灰皿が落ちていないか布団を見やっている。問題ないと判断してか、出したままの自分の布団の上に腰掛けた。

「ま、人が変わるなんてよくある話だしね。気長に待つしかないよ」

「そうだよね~ということはクロも何かの拍子に変わったりして?」

「……変態に?」

「変態に」

「それはやだな~」

 煙草を嗜みつつペットと一緒にプリンを食べる。

 そんな休日をリナはまったりと楽しんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ