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011 きっかけ

「ま、今が楽しけりゃそれでいいか、って思って生きているのが現状、ってね」

「ふぅん……」

 記憶喪失だが、援助交際してても楽しく生きれればいいという少女に、青年は肯定も否定もせず、ただ納得したというように頷いた。

 何を考えているかは分からないが、リナにとっては警戒すべき相手ではないと考えられるのが嬉しかった。というより、好意も悪意もない分、興味を持たれていないというのが正しいのだろうが、彼女にとっては悪意を向けられないだけに安心できた。

「それで、あんたも私の身体、買いたい?」

「別にいい。好みじゃないし」

 一瞬、リナはスカートに手をかけて挑発してやろうかとも思った。しかし、先程の件で嘘じゃないと知っている分、むやみにちょっかいをかける必要もないと思いとどまる。

「そういやさっきもそんなこと言ってたっけ、ちなみに好みは?」

「なんて言えばいいのかな……」

 リナの質問に、青年は悩みながらも、たどたどしく答えた。

「こう、熟女と言うには若めで、少女と言うには色気があるというか……大人だけど若い女性、って言えばいいのかな?」

「要するに……20半ば位の女っぽい、色気のある女性が好みってこと?」

「多分それ」

 となるとOLとかも好きなのかな、とリナは内心考えた。そもそも、先程輪姦されていた女性もよくよく思いだしてみればそんな感じの人間だったのだ。

 だから青年が好みの女性を見ていたというのも納得できる。

「じゃあさ、何でさっき混ざらなかったの?」

 好みなら手を出せばいい。

 リナの経験上、大抵の男は好みじゃなくても、性的刺激さえ感じられれば興奮する生物だ。だからこそ、『未成年』、『制服』という要素を追加して、興奮材料を増やしているのだ。

 だからこそ、リナは納得がいかなかった。先程の話を聞いたならば尚更だ。

「混ざっても、できないんだ」

「できないって……ED?」

「というよりも、性欲が薄いというか何というか……好みなんだけど身体が求めていないというか、そういう不思議な感覚なのを、ずっと見ながら考えてた」

「……根が深そうだねぇ~」

 リナは苦笑し、スクバを抱えて立ち上がった。

「でも気に入った。よかったらしばらく家に来ない?」

「……いいの?」

 不思議そうに見てくる青年に、リナは指さしながら答えた。

「そんかし家事全般よろしくね。いやぁ、一人暮らしだとやること多くて大変でさ~」

 青年を指さし、おどけてくるリナに、青年はまじめ腐って答える。

「分かった。……よろしく」

「うんっ!」

 そうして二人は並んで歩き、リナの住むアパートまでの家路についた。




「……あ、それとワタシにいろんな意味で手、出したら撃つから」

「了解。家事の範疇まで許してくれたら大丈夫」

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