出逢った美少女と、豪邸?
それから数分。
少し辺りをキョロキョロと見回したかと思えば、そこにジッと立ち尽くし始める彼女。
それまでずっと残ってた自分に驚きだが、もう一度声を掛けてみる。
「あの〜...」
そう口を開きかけたのだが、ハッとした様子を見せると、こちらへズカズカと歩み寄ってくる。
「じ、ジーピーエスとかいうのが壊れたのです。迎えを待ってたです。地図と現在地と方位磁石があれば、辿り着けたはずなのです!」
それもそれでどうかと思うけど...
というか、そんな三代条件揃ってたら迷子の量は減ってると思う。
「...じゃあ、どこら辺とか分かりますか?家の特徴とかでもいいんで」
「?」
問いかけると、彼女は不思議そうに首を傾げた。
「途中まで送ります。僕、地元民ですし、ちょっとした所もまぁ...それなりに案内出来ますよ?」
「おぉ...!その手があったのです」
心底驚いた様子を見せる彼女。
もし提案しなかったらこの子どうしてたんだろう...
そう思いながら、僕は片手を差し出す。
「僕は“裏崎 透”。君は?」
「“ユカリ”、なのですよ」
そう言って握手してくれる彼女に、目を瞬かせる。
まるであの食べ物のユカリの様だ、と思ったのは頭の隅に置いておく。
「...苗字は?」
「...ユカリはユカリなのです」
「あ、その...苗字...」
「ユカリなのです」
これは意地でも教える気が無いな...と思い、僕は取り敢えず、よろしく...と、苦笑を浮かべた。
「お節介さんは好きなのです」
「う〜ん...それ、褒められてる?」
「大いに褒めたのです。感謝するのです」
そう言って、ドヤ顔で胸を張るユカリ。
今の、誇らしげにする要素あったかな...?
「では、早速出発するのですよ」
「そうですね...じゃあ、何か目印はないですか?」
さっきも聞いたが、こればっかりは聞かなければどうしようもない。
「目印、ですか...」
彼女はそう呟くと唸り始める。
そして数秒後、ハッとした様子を見せて、突然こちらを、ビシッ!と指差してきた。
「ど、どうですか?」
「隣が、この町で一番じゃないかという程の、豪邸なのです!」
「...え...豪邸...?」
「です」
その言葉に、今度はこちらがショックを受ける番だった。
この町で一番大きな豪邸といえば、自分がよく知っているあそこしかない...!
「?」
ユカリさんは、只々不思議そうに首を傾げていた。