Act6.「8つのキーワード」
FCロックマン世代にオススメです(?)
8つのキーワードの在り処には心当たりがあった。今まで戦ってきた魔王軍の刺客の人数が8人だったからおそらくその刺客と戦った場所に再び出向けばキーワードが見つかるハズだ!急げ!ワンとミライの命が懸かっている!
別にゲームの中の話なのでゆっくりと行動した所で問題は無いはずだけど、必要以上にキャラクターに感情移入をしてしまった僕は自然と1分でも1秒でも早く行動しようとコントローラーのボタンを押す力が強まってしまう。
まずはワンと出会った思い出の山へ足を運ぶ、そこで最初の魔王軍の刺客「ショーサイ」と戦ったからだ。その場所に到着すると驚いたことに倒したハズのショーサイが幽霊となって待ち構えていた。
なるほど、これは今まで戦ってきた相手と再戦するいわゆる「ボスラッシュ」というモノか。イベントの趣旨を理解した僕はショーサイへ戦いを挑む。最初に戦った時はスカイはワンにおんぶに抱っこでほとんど戦力にならなかったけど今は違う。様々な苦難を乗り越え、成長した、強くなった。もはやレベルが違うのだ!
ショーサイの魂を秒殺し、一つ目のキーワードを手に入れた。それはアルファベットの 「 U 」
「よっしゃ!」
僕は念の為にそのキーワードをメモに書き留めて、このままの勢いで今まで辿って来た道を再び歩みだす。
●船上で戦った二人目の刺客「ドンカッセ」からは 「 S 」
●古城でミライに呪いを掛けた三人目の刺客「ミッツ」からは [ E ]
●砂漠の四人目の刺客「ブルクワドラ」からは [ D ]
●宿屋で女性の下着を盗んでいた五人目「ブーファイ」は [ I ]
●常人の6倍の速さで移動できる六人目[ゴン=ヘキサ]から [ K ]
●村長の体内に潜んでいた七人目[ジーニー]からは再び [ U ]
ワンもミライもいない、たった一人での戦闘はつらく、険しいモノだった。傷だらけになりながらも仲間の為に国中を飛び交い奮闘するスカイの姿を想像した僕は思わず涙で頬を濡らしてしまう。
「もう少し…もう少しだからなぁ…!」
涙と一緒に垂れた鼻水を指でぬぐい、そのままの手でコントローラを強く握りなおす。このゲーム機が堀田から借りたものだということはとうに忘れていた。
そして残された八人目最後の刺客、魔王ゲラを倒した空中魔王城の墜落した跡地へと赴く。
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魔王ゲラの魂
『…また会ったな…小娘…』
スカイ
『あなたで最後よ……ワンとミライが待ってる、早く決着をつけましょう!』
魔王ゲラの魂
『フフ…わしの忠告は聞こえなかったのか?ヤツの石化を戻してもお前のことは覚えていないのかもしれないのだぞ』
スカイ
『わかってる』
魔王ゲラの魂
『下手をすればわしの右腕だった凶悪な悪魔の頃まで記憶がリセットされているかもしれんのだ…そうなったらせっかくお前が救った王国を滅ぼしてしまうかもしれない、そして最悪お前自身ワンに殺されてしまうかもしれないのだぞ…』
スカイ
『わかってる』
魔王ゲラの魂
『お前は、国民を…王国を裏切っている反逆者なのだぞ、今なら間に合うぞ、キーワードはあきらめろ』
スカイ
『いや』
魔王ゲラの魂
『…何故だ…なぜそこまでヤツにこだわる…?何故だ…?』
スカイ
『…魔族のあなたには分からないでしょうね…人間には、周りを敵に回すことよりも…自分が死ぬことよりも耐えられないモノがあるのよ…』
魔王ゲラの魂
『…何だと?』
スカイ
『それは、自分に嘘をつくこと…信念を隠して、言い訳して、臆病になってしまうこと…これは…ワンから教わったことよ』
魔王ゲラの魂
『………………』
スカイ
『ワンはもう魔族なんかじゃない、人間よ!私はそれを信じてる…だから私はあなたを倒してキーワードを完成させる!これが私の裏切ることの出来ない気持ちよ!』
魔王ゲラの魂
『………………そうか……わかった……』
スカイ
『…?』
魔王ゲラの魂
『もって行くが良い…これが最後のキーワードだ』
スカイ
『……えっ?…何故?私を倒さないの?』
魔王ゲラの魂
『…負けたよ小娘…お前の信念に…』
スカイ
『…ゲラ……』
魔王ゲラの魂
『あやつが…ワンが謀反を起こした気持ちが…少し分かった気がする…さらばだ小娘…いや、スカイよ、終生その信念を守り通すが良い…………』
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単なる村の女の子だったスカイが…土壇場で弱気になってつい逃げ出しそうになっていたいた、あのスカイが…ついにやり遂げた。スカイの強い信念が、魔王の心ですら動かしたのだ。感動し、心が高鳴ったのか体温が上昇、額の冷却シートはベロリと剥がれ落ちた。
「あとは…あとはキーワードを!」
気がつくと窓から差し込む日光量がいつの間にか増えている、今は朝の10時か11時か、しかしもう今が何日で何曜日で何時なのかは関係なくなっていた。とにかく早く、急いでキーワードをワンに届ける。それだけだった。
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兵士
『スカイだ!反逆者が戻ってきたぞ!』
王様
『ヤツを止めよ!石像には近づけるな!』
スカイ
『くそう!ワン!ミライ!あと少し頑張って!』
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共に魔王と戦った兵士達が今ではスカイを反逆者とみなして立ちはだかってくる。ここまで来て…やられてたまるか!
僕は物語の雰囲気に流され、未だに途中経過を保存せずにいた。つまりここでしくじったらトータルで10時間近い労力が無駄になってしまう。
「うおおおおおおおおおおおおッ!!どけ!どけぇ!」
立ちはだかる兵士達を倒して倒して倒し、どんどん進む!
倒して倒して…
倒して…
僕の選択は…
スカイの選択は正しかったのだろうか…
こんなにも傷を負って、周囲を裏切って…傷つけて…
仮に、ワンを見捨てておけば、スカイは英雄として崇められ、何不自由ない生活が待っていたハズなのに。
あの選択肢は間違いだったのだろうか?
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王様
『スカイ!最後のチャンスだ!ここで諦めてくれれば、これまでのことは水に流そう!さぁ、正しい選択をしてくれ!』
スカイ
『…王様…申し訳ありません…私にとって…この信念は…この選択は…たとえ天地が逆になろうと…変わりません…』
王様
『…』
スカイ
『…私と、ミライにとって…ワンのいない世界に平和などというモノはあり得ないのです!』
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少しでも信念をゆらつかせた僕がバカだった。何が正しいかどうかじゃない。僕は自分を、スカイを最後まで信じる。それだけだ!
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王様
『…残念だ……』
王様
『やれ!!』
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弓兵達が一斉に弓を引いた、しかしそれはスカイに向けてではなく、ミライとワンがいる城の中庭だ!なんてこった!ミライに攻撃を向けることでスカイを中庭に無防備な状態でおびき寄せて一網打尽にするという作戦なのか!?僕は怒りのあまりコントローラーを思い切り握り締め、ミシミシと音を立たせた。
「急げぇぇぇぇぇ!」
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スカイ
『やめろぉぉぉぉーーーーッ!』
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走れ!走るんだ!スカイ!!コントローラーの十字ボタンがめり込むかと思うほどに僕は思いっきり押し込んだ。
豪雨のような凄まじい量の矢が放たれて放物線を描く。矢を放たれたミライは何時間にも及ぶワンの護衛で虫の息になっている。
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スカイ
『ミライーッ!』
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足が千切れそうなほどに走り、スカイはようやくワンとミライの元へとたどり着いた!しかしもう矢はすぐそこまで迫っている!急げ!呪縛を解くキーワードを唱えるんだ!
石化の呪いを解くために…
ワンの記憶を取り戻すために…
スカイ達の輝かしい未来のために!
「『 ウ セ デ ィ ク ス !!』」
ぶっちゃけ七闘士の名前考えるのが一番しんどかった。




