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二人と別れたユウキは役人に連れられ、大きな列車に乗った。
基本的に地区の役人や、警察と呼ばれる者は、自身の地区より1~2、上の地区の者が担当している。
上位の地区に反抗しずらい世界、それを活用した結果このような体制になった。
つまり自身の地区の役人に歯向うことはできない。
逆を言えば、下位の地区の役人にはある程度発言権はあると言うことだ。
行きしに役人から地図を渡された。
この世界の地図と、第十三地区の大体の地形の様だ。
第十三地区は、地図上で唯一の山の傘下にある。
周りは有刺鉄線、更に山にも囲まれまるで檻の様な場所だ。
地区境を越えてすぐに議会会場があるのは第六地区と同じ。
しかし、他は商会、そして住人と書いてあるだけで、その他は立ち入り禁止と書いてある。
右下に小さく書かれた、地下とは何のことだろうか。
「着いたぞ、降りなさい。」
じっくり地図を見ている間に着いた様だ。
さすが地区を直進する列車、着くのが早い。
降りるとさっそく議会会場に連れられた。
その場で第十三地区の役人に引き渡されると、足早に役人は去っていった。
確かに既に異様な雰囲気は感じるが、役人の態度は余りにも感じが悪い。
はぁ、と一つため息をつき、これから世話になるであろう新しい役人に挨拶した。
「はじめまして、第六地区より商人の修行に来ました、ユウキです。これからよろしくお願いいたします。」
できるだけで丁寧に挨拶をし、日本人特有に深々と頭を下げた。
そして、チラっと役人の方を見ると、何故か役人は目を見張ってこちらを見ていた。
「え…」
何だろう、私、変なことしたかな。
「…あ、いやはや、失礼しました!いやその余りにも、以外、だったもので…」
「何がですか?」
「なんと言いますか、そのぉ、第六地区なんて高貴な方が、私なんぞにそうやって頭を下げられるなんて…」
高貴?
第六地区って、そんなに身分が上に感じるのか。
普段の生活を思い出してみるが、極普通の家庭だったように感じる。
毎日良いもの食べている訳じゃないし、着るものだってたまにしか買わない。
元の世界と生活水準は変わらなかった、だからすぐにこの世界に馴染めたのだろうけど。
「常識的な行動をしたつもりなんですが…」
「常識、常識ねぇ…」
そう言うと役人は苦い顔をした。
「そっか、お嬢さんはまだ地区境を出たばかり…いや、それにしても世間知らずの様な気もするが…」
ブツブツ呟いた後、役人は意を決したようにこちらをみて言った。
「お嬢さん、悪いことは言わないから、ここでは常識なんて言葉は無いと思って下さい。
君は今日から商人として、ここで生計をたてていくのでしょう?
ここではお嬢さんみたいに商人として来た子も皆、底意地の悪い連中ばかりです。
騙されないように気をつけてください。」
そう言って最後にため息をはいた。
そんな役人の顔に現れた苦労に、ユウキは乾いた笑いしかでなかった。
「そんなに治安が悪いのですか?」
「えぇ、そらもう、俺はここに役人するぐらいなら、第十一地区で便所掃除をしていた方がまだマシだったとおもいます。」
「それは…ご苦労痛み入ります…」
「とにかく、ユウキさん、あんたはイイコそうだ。
ここの住人に潰されない様おれは全力でサポートするぜ!」
さっきまでの悲壮はどこへやら、口調も初対面よりかなり軟派になった役人は、一人燃えているようだ。
協力者が出来るのは良いことだ。
それに役人ならここの事は、誰よりも把握しているはず。
「ありがとうございます、えーと、お名前は…」
「第十地区ナックだ!よろしく!」
一人、知り合いができました。
確認事項
この世界の大まかなルール
1、自身より上位の地区の者に逆らってはならない
2、自身より上位の地区境を越えてはならない
これを破った者は、罰として"地区落ち"となる