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「ちょっとあんた!これは何かの間違いじゃないのか!?」
「そうよ!なんだってユウキがこんなッ」
「ご両親、このクジは娘さん本人が引いたクジ。
一度引いたクジはやり直しはできませぬ。
では発表!
第六地区商人、シオン、ユウヒの娘ユウキの所属は"第十三地区"!
ではこれにて選択の儀を終了する!」
人生とは思いもよらぬところでつまづく。
"ユウキ"になってからの人生は順風満帆だった。
優しくて賢い両親、素敵な友人たち。
定められたレールだと言えば聞こえは悪いけど、私にとっては将来の心配が無い"ユウキ"は本当に楽だ。
けどこんなとこで挫折する羽目になるなんて…
『第十三地区』
この世界の貧民の中でも最下層と言われている、『人ならざるもの』が集う地区だ。
地面は泥臭いは生ゴミと言われるぐらい劣悪な環境。
商人も中々いきたがらないので、外界からの供給もなく、独自のネットワークが発達しているらしい。
つまり商人にとっては全く需要が無い地区。
政府もこの地区だけは反対の意味で特別扱いらしく、常に厳戒体制で見張られ、地区の周りには強力な電気が流れる有刺鉄線が張られている。
噂によると、選択の儀のクジも一万人に一人ぐらいの確立でしか引かれないらしい。
その一万人に一人に、私は選ばれたのだ。
そんな環境で商売か…
上手くいくイメージがないわ…
けれど決まってしまったものは仕方ない。
政府の言うことは絶対なのだから。
「やはりもう一度抗議に…」
「お母さん、お父さん。いいわ、私行くわ、第十三地区に。」
「ユウキッ何を言ってるのか分かっているのか…!」
「うん。いずれお母さんとお父さんの跡を継ぐ為にも、これは私へ課せられた試練だと思うの。
私、頑張ってみたい。」
「ユウキ…」
これは物語みたいに転生した、私への試練だと自分を納得させる。
大丈夫、覚悟は決まった。
「…貴女がそこまでいうなら、私達は応援するわ。ね、シオン。」
「あぁ、そうだな、ユウヒ。」
「じゃあお父さん、お母さん、いってきます!」