第一話 恋愛話にハナが咲く
「あーあ、どこかに、ステキな王子様……いないかな~」
キャラクター性を出そうと頑張って染めた金髪のストレートヘアーが、演出的な風に乗る。
あ、もちろんこの人の地毛は黒です。
「なにお前、どこぞのお嬢様みたいなこと言ってんだ?」
「私は正真正銘のお嬢様ですけど!?」
自分で「お嬢様ですけど!?」と言うのは、どうかと思うけどね。
広い庭にパラソルを立てて、イスに腰をかけて、ティータイムを楽しんでいる中野姫夏こと、ヒメに痛烈なツッコミを受ける。
これは中野夜夏である僕とお嬢様であるヒメとの習慣のひとつであり、コミュニケーションのようなものでもある。
残りのメンバーの三人が来るまであと、およそ五分程度それまで。
「それはいいとしてだ」
「よくないんですけど……」
「いきなりどうしたんだ? 発情期か?」
「おまけにスルーですか……それとそんなわけないでしょ!! 〝今は〟発情してませんわよ!!」
「…………」
「たまにしてんのか?」とは、あえて聞きたいとは思わない。
「純粋な乙女の悩みです」
……純粋ですか。たまに発情する乙女のどこに純粋さの部分があるのか、問いただしたいものだな。
それとはまた別にさっきの発言を聞くかぎり、おそらく恋の悩みか……。
ヒメの恋に関しては少しだけ気になるな……。
「恋、したいのか?」
「違いますわ。王子様にただ会ってみたいだけですわ」
「…………」
なんか……期待したのとは微妙にイメージが違う気がする……。
「じゃー、王子様を招待でもしたらいいだろ?」
「ヨルはなにもわかってませんわね……私が言ってるのは〝二次元の王子様〟ですわ!」
「…………」
こいつ……もうダメだ。どこまでも、ダメダメだ……。
あとヒメは僕のことを夜夏の夜を取って「ヨル」と呼んでいる。
とりあえずまぁ。
「無理だろ、それは」
「わかってますわよ、ヨルが勝手に私の独り言を聞くからですわ」
「そりゃー悪かったよ」
それにしてもヒメの恋愛観というのだけは、また別に知りたいものだ。
ヒメの向かいの席に腰をかけ、物は試しにと聞いてみる。
「ヒメは好きな人とかは、できたことあるのか?」
「どうしました? 突然に」
「いや、なんか気になったから」
「うーん、そうですわね~」
テーブルに頬杖をつき、眼を上や斜めにやったり、うーんと、うなりはじめた。
「ないならないで、そこまで深く悩まなくていいから……」
「なら、ないわね。とくに」
「そう、ですか……」
そうだよな、生まれた時からの金持ちで気品を張ってきた彼女が、そう易々とそこらへんにいる男に恋愛感情を揺さぶられるわけがないか。
でもって今日のヒメの格好は、言動からしてドレスでも着ているかのようにも思えるが、Tシャツにロングスカートとかなりラフっぽい格好をしている。
「好みとかないのか?」
「今日はヤケにしつこいですわね」
「いいだろ、べつに」
ここまで話題を広げて、やめるのはなんか惜しい気がするし、とことん恋愛観を聞いてみたい。
「そうですわね、やっぱり容姿は良いほうがいいですわね」
「だよな、他には?」
「あとは定番ですけど、私のことをわかってくれる器が大きいお方がいいですわね」
たしかにな。ということは好みは年上……になるのか? 年下にこの条件でいないわけでもないが。
「あとはないのか?」
「そう、ですわね…………」
「?」
ヒメは突然「フヒヒ」と奇妙な声をもらす。
「ならば!! 私にひざまづき、忠誠を誓い、奴隷になり、踏まれることに快感を覚え、私なしで生きることができなくなりそうな人ですわ!!!」
「いねぇよ! そんなやつ!?」
発狂したヒメに鋭いツッコミを入れたものの、それはそれでどこかに居そうだな……。
「まぁ全部ウソですけど」
「ぜ、全部!?」
「まぁ私を、惚れさせた人が好きな人ですわ、やっぱり」
そう口にするとニコッと笑顔を作る。
「……そ、そうだよな、ははは」
それを言われたら、あとはもう質問はないわけで、その、わかってたけどね。う~ん……わからん……。
「どうした? 夜夏? いきなり腕を組んだりして」
考えていた僕に質問をかける声がし、左肩のほうに振り向く。
いつの間にか、となりには小さい男の子がしてそうなファッションに怪訝な表情をしている高西莉乃。
その横にふわふわとした格好の吾妻南雲ちゃんは、小首を傾げる。
控えめに莉乃の後ろに立ち、身を縮こませている。おとなしめな風貌で自分を見せない北松冬葉の三人が立っていた。
「いつから来てた?」
「えっ? そうだなー、姫夏が発狂してるらへんから見えて、今ここに着いた」
つまり内容はまったく知らないってことか、別にたいした話もしてないし、聞かれて悪くもないけどね。
「ねぇねぇ、どんなお話をしてたの?」
莉乃の一歩後ろにいた冬葉がヒメに聞き、ヒメはそれを丁寧に説明する。
説明中……
「れ、恋愛…………」
「恋ですか~」
「あたしは、今興味ねぇな」
冬葉は頬を少し赤らめ、南雲ちゃんは微動だにしない反応で莉乃は率直な答えをだした。
「皆さんはありますか? 恋したこと」
「え? わたしは……」
「南雲ですか? そうですね~」
このままだとずっと考えるな……この二人は。
「えっとー、とりあえず座ったら?」
ヒメの質問に真剣に答えようとする二人と、ガン無視している莉乃に座るよう声をかける。
それに応じるように「そ、そうだね」と冬葉の返事を合図に三人は各場所に座る。
僕の前からヒメ、冬葉、南雲ちゃん、そんで僕の横に莉乃が座る。一番右は空席になっている。
「で、あるんですの」
「姫夏に話す義理もねぇし、あと理由もない!」
改めて聞くヒメに、莉乃が反発的な態度を見せる。
「理由なんて聞きたいからに決まってますでしょうに。それ以外になにかあるのかしら?」
「なんだよ、それが人に物を頼む態度か?」
まったくこの二人はいつもいつも、いがみ合って、少しは仲良くできないものか。
では時間もムダだし、仲裁に入るか。
「じゃ~公平にじゃんけんで決めよう。勝ったほうの意見を通す。四人ともそれでいいだろ?」
念のためというか当然なのだが、冬葉と南雲ちゃんの許可もいるし聞いておく。
この意見には冬葉と南雲ちゃんは頷く。
ヒメと莉乃には「チッ」と舌打ちが僕に向けられた。
「じゃー、いくぞ、じゃんけん――――」
「では皆さんの恋バナを聞かせていただこうかしら」
ヒメが見事な一発勝ちで幕を下ろし、莉乃も悔しがってはいたが、それ以上はなにも言わなくなった。認めてはいないだろうけど。
「順番はどうする?」
莉乃に気を配りながらヒメに尋ねる。
「順番ですか? なら……冬葉、南雲、莉乃……ヨルでどうかしら」
「てっ、僕もか!?」
「では、さっそく冬葉。お話を聞かせてくださいな」
「ちょ……聞けよ!」
すげぇ無視された……。
でもそれは、さておき。
さっきから頷く以外ずっと黙ってお茶だけ飲んでいた冬葉だが、口が今ゆっくりと開き、語りはじめる。
「これはね、わたしがまだ小学生の時のことなんだけど」
小学生ということは僕と出会う前か。
「もうね、十年も前になるんだけどね、えっと……その……凄くたくましくて、賢くて、足も速くて、おしゃべりも上手な男の子がいたの」
「まあ素晴らしいお方なんですのね」
「ほえ~」
ヒメと南雲ちゃんは、冬葉の両サイドにいるせいか、挟み撃ちのように目線と体勢を冬葉のほうに向き、じっくり聞いている。
そのせいか冬葉は肩身を狭くし、縮こまって話している。
小一か。僕はすでにヒメの遊び相手をされてたな。楽しかったけど。
「わたしとは、まるで真逆な子でわたしはいつも教室で本を読む、おとなしい子だったんだけどね……」
そこは今と変わらんな。
お茶をすすりながら聞く。僕のとなりにいる莉乃はというとなにも体勢も変わらず、意気消沈していた。
「えっと……たしか運動会だったかな、その時にわたしとその子が偶然、二人三脚のパートナーになったの」
「あらそれは運命ですわね、きっと」
「冬葉ちゃんすご~い」
南雲ちゃんが手でパチパチと拍手する。
一年生で二人三脚とかするのか。すごいな。
莉乃は無言で、目の前にある大好きなお菓子すら取らず、じっとうつむいたままでいる。
でも見るかぎり話は聞いてないことはないようだ。
「その子と一緒に一生懸命に練習したんだけど……」
冬葉が目線を下にずらし、小さな声で、
「わたし……運動会をズル休みしちゃったの……」
「えっ、どうしてですの?」
「なんで~?」
「……多分わたし、怖かったんだと思うんだ、失敗してその子に嫌われるのが……」
「気にしませんわよ、きっと」
「うんうん」
聞き入っているヒメと南雲ちゃんから熱い視線を両方から受ける冬葉。
「そうだね。で、その子から運動会が終わったあとになんて言ったと思う?」
「え? うーん、『今回はゆるしてやる!』とかじゃないかしら」
「『気にすんな』とかじゃないかな~」
二人が質問に答えると冬葉が、ためらいながらも、
「『冬葉の分も走ってやったからな』だって、この時にね、子供のわたしにもわかったことがあるんだ」
「なになにっ? 早く言いなさい!」
「気になる~」
急かす冬葉にテンションMAXの二人。
でも……あれ? 呼び捨て?
なんかその男の子……僕も知ってるような……。
「わたしこの子のそばにずっといたいな、って思ったんだ」
「きゃ~しびれますわ~」
「お~」
「でっ、今はどうなんですの?」
「え? 今も近くに住んで、毎日……会ってるよ……」
これで確信した。相手はおそらく…………でも二人が盛り上がってるし、水を差すのはやめておこう。
「お付き合いはなさらないの?」
「……しないよ。ぜったいに」
「……そうですか。それでお話は終わりでいいかしら?」
「うん、終わりだよ」
結局、終始黙って聞いていただけの莉乃はともかく、南雲ちゃんは「残念です~」と残念がっていた。
冬葉は話して、またその時のことでも思い出しているだろうか、目は少しあさっての方向に意識が飛んでいた。
あと相手の男の子の名前を聞き出さないらへんは、ヒメなりの気遣いでもあるのだろうな。
「ではお次は南雲ですわね。お願いしますわ」
「わかった~では、いくね~」
冬葉と交代した南雲ちゃんが、なに食わぬ顔で語りだす。
「それじゃ~この話をしようかな~、たしかこれは一週間ぐらい前、だったかな~」
「一週間前ですの!?」
やべっ、先にヒメにツッコミをされてしまった……無念なり!
「ずいぶん最近のことなんだね、南雲ちゃん」
いつの間にか、意識が帰ってきていた冬葉も南雲ちゃんのほうを向いて話
を聞く。
「うん、街に出かけた時に~落とし物を一緒にさがしてもらったんだよ~」
「あら、これまた優しいお方がいたものですわね」
ヒメは冬葉の時と同じように、憧れているような眼差しで南雲ちゃんを見つめる。
「まあ南雲はかわいいしな……」
意気消沈していたはずの莉乃が、いきなりしゃべったことにみんながびっくりする。まさに真横にいる僕は皆以上にびびった。
ヒメは体勢を立てなおし、莉乃に。
「あら~莉乃ったら、いたんですの。もう帰ったのかと」
また消沈しかけたたき火に油を注ぐようなことをさらっと言うな、このお嬢さんは。
「いたらわりぃかよ、つかさっき姫夏、あたしの名前も言ったよな?」
「……あ~! たしかに言いましたわね、これはこれはすいませんわね。では南雲のお話の続きを聞きましょうか」
ヒメが素直に謝罪を認めたものだからか莉乃は、怒りをどこにぶつけていいか、迷いながらもとりあえず自分を落ち着かせるためか深呼吸をする。
「ひーふー……じゃ、南雲、続けてもいいぞ」
「うん、わかった~」
ただのごまかしにしかならないのか、まだ莉乃の顔はすっきりしてないのは見てとれる。
そんでもってなんか僕、さっきから全然しゃべってないな……どうしよう。
「じゃ~再開するね~、落とし物はそのあと無事に見つかったんだけどね~でも南雲、方向音痴だから、街中もついでに案内してもらったんだ~」
「ま~いいですわね。想像するだけでドキドキしますわ~」
「そ、そうだね!」
「南雲は相変わらずドジだな」
ヒメも相変わらずテンションが高い、冬葉もずっと頬が赤いし、莉乃も変わらずの反応。
で、僕はまだしゃべるタイミングを失ったままである。
「一時間ぐらい案内してもらっちゃって~途中いろいろ食べさせてもらったりもしたよ~」
南雲ちゃんの表情は眉ひとつ動かず、転々と話している。
「あら気前もいい方ですのね。点数高いわよ」
「なに食べたの?」
「えっとね~ソフトクリーム、パフェ、チーズケーキ~だったかな~」
「よく食うな南雲は」
「え~そうかな~」
食べた時のことを思いだしたのか、南雲ちゃんの目がぽわんとしている。
聞いていてなんだが、恋バナというより親戚のお兄さんと出かけた話にしか聞こえないのは僕だけだろうか。
「じゃ~続けるよ~、そのあとお兄さんなんだか、お仕事中だったみたいで~急いでどっか行っちゃったんだ~」
「あら、残念だったわね~でもきっとまた会えますわよ」
「南雲ちゃんは目立つからまた会えるよ! わたしが保証するよ!」
「ははは! 南雲らしいな。番号ぐらい聞けばよかったのによ」
「今度はみんなとパフェ食べたいな~」
慰めるヒメと冬葉とジョークを言いながら笑う莉乃。
それとは関係のない的外れなことを言う南雲ちゃん。
あと話をまとめれば、それ……警官じゃないか、多分。予測でしかないが。まぁまた以下同文で雰囲気を壊さないようにしよう。
こんなことを考えてるうちに、しゃべるタイミング以下同文。
「では南雲の話は以上でよろしいかしら?」
「終わりだよ~」
僕からしたら恋バナっぽくなかったが、ヒメは満足のようだ。
「なら莉乃の番ね。せいぜい私を起こしたまま終わらせてほしいわ」
「なら話さねぇぞ!!」
ヒメのいつもの挑発に莉乃はノり、取っ組み合う。
莉乃を反対にするとノリ。あ、なんでもないです。
仲裁する身になってほしいね。
「はいはい。いがみ合ってないではやく進めろよ」
おっ! やっとしゃべれたぞ!
「……ヨルいたのね、気づきませんでしたわ」
「夜夏くん静かだったもんね」
「夜夏くんは観察官~」
「夜夏いたなら返事ぐらいしろよ」
「いや、莉乃! お前は気づけよ!? 横だろうよ!」
みんなして僕は、存在認識されてなかったみたいです。なんかさびしい気もするけど。
「……………………」
「冗談だよ、すまん……南雲に気を取られ過ぎただけだ! だから落ち込むなよ!」
僕が黙ってしまったからか、落ち込んだように見られたようで急いだそぶりで莉乃が僕に向けて謝り、それに続いてみんなも励ます。
「黙ってないで輪に入りなさいな、ヨルらしくないわよ」
「そうだよ、みんなで楽しもうよ」
「う~」
落ち込んだつもりではなかったが心がそういう顔にさせたのかもしれない。
過去のトラウマ――治ったと思っていたんだが、まだ残っているみたいだ。
でも、ここにいる四人はそんな僕に明るく振る舞い、いつも気にかけてくれる優しい仲間なんだ。だから絶対に失いたくない。だから……
落ち込むのは良くないし、明るく笑顔で。
「違うぞ、楽しいし、ほら! はや……く、つづ……きを……」
なんか横から莉乃が睨んでいるように見えるが気のせいではないようです。地雷踏んだか……。
「そういえば、そうでしたわね! 莉乃、ほら聞かせてちょうだい、あなたの〝恋バナ〟ってやつを」
「クソっ……」
話す気がさらさらなかった、莉乃は小さく呟き。
しんみりした空気はどこえやら、そうだなこれが僕らなんだな。
「あら? ないのなら次に――」
「わかったよ!! 話せばいいんだろ! 話せば!」
ぶるぶると震え、歯をぎりぎりと鳴らし、あと一ミリでも刺激を与えようものなら爆発しそうな、そんな顔をしていた。
「なー莉乃、無理に話さなくても……」
「夜夏、これは無理やりじゃない。あたしが語りたいから語るんだ。だから強制じゃねぇ、わかったか」
「お、おう……わかった」
なんか莉乃の気迫に圧倒され、納得してしまったが本人が、言うなら退くしかない。
当の莉乃はまっすぐに向き、目の前にあるお菓子を通り越し、冬葉の顔を見ながら、語りはじめた。
「これは二ヶ月前のことだ。たしか姫夏の屋敷に向かう途中で偶然にも人形を拾ったんだ」
「あらシンデレラのガラスのくつを、人形に変えた感じですの?」
王子に会ってないぞ? とは今も言わないでおく。
「ゴミ捨て場にあったんだけどさ、妙にかわいいしさ、そのままヒメの屋敷まで持っていって見せびらかそうと思ったんだ」
この時点で僕を入れて四人の頭には疑問符が浮かんでいた。
なんか恋バナではなくどちらかというと……。
「で、それを持って五メートルぐらい歩いた時に顔を見たら――――」
「な――――!!!!! それっ!!! 恋バナじゃなくって、怖い話じゃねーかーーー!!!」
当然のごとく、ヒメの奇声の中にある文句と反論が混じった声が轟く。
「なんだよ姫夏、ここからが面白いんだぜ」
「ちげぇんだよ!!! 聞きてぇのはコ・イ・バ・ナ!!!」
さっきまでヒメとは、打って変わって豹変したヒメ。通称・男姫さまモード。
男と書いて《おひめさま》程度に、イライラが達すると男口調になることから僕が名付けた。こうなると問題が解決するまで戻らない。
「はは~出たな男姫さま! ならば勝負しようぜ」
「どれでバトんだよ」
火柱が飛び交う二人を止めるのはもう無理っぽい。こうなったら気がすむまで放っておくほかない。
僕を含む、三人は見守る方法以外ないのだが、冬葉と南雲ちゃんは案の定、予想していたらしく、おとなしく本を読んでいた。
「なら~、同世代の男子と話した回数で勝負しようぜ。もちろん夜夏抜きで」
莉乃が内容をだす。
なんちゅう勝負内容だよ……。
「いいぜ。望むところだ」
「いさぎよいな、自信あんのか?」
胸を張り合う二人、端から見ればバカバカしい、でもそれを一生懸命にやる清々しさには見習いたいものがある。
「じゃーオレサマからいくぜ……二人だ……」
……微妙。
「ぎゃ~はっはっは~、たいしたことねーなー!」
莉乃はヒメの数を聞いて腹を抱えて大笑いする。
「笑ってんじゃねー、じゃー莉乃はどうなんだよ!!」
「いいぜ。聞いて驚くなよ。あたしはな! 三人だぜ!」
告げながら、堂々と腰に手をあてエッヘンといばる。
自信満々だがヒメと変わらん気がする……。
「ま、負けた……だと……」
「どーだー!! あたしの力を思い知ったか!!! このフンコロガシが!!!」
「な、なら! 次はヨルと手をつないだ回数で勝負!!」
なんか巻き込まれた……。
「それ姫夏が有利じゃねぇか! 認めねぇぞ!」
ごもっともな意見をだす莉乃。
「なんだ? 文句でもあんのか?」
「なら、せめてここ一年間にしようぜ!」
「いいだろう。なら同時に発表しようじゃないか」
「じゃーいくぜ」
莉乃の合図とともに「いっせいのっ!」と声を張り、
「「じゅー!」」
ハモりながら、まったく同じ数の答えをだした。
それに対して二人は。
「「同じかよ!?」」
またすげぇハモった!?
「ならばオレサマはヨルと、この前風呂に入ったぜ」
「入ってねえよ!? ウソ言うな!」
ヒメの真っ赤なガセネタには、訂正の意味を込めながらツッコむ。
「夜夏……それはホントか?」
「いや聞いてたか!? 人の話!?」
「それがホントなら点数は高いな……」
あっ、聞いてませんね、二人共。
諦めたら負けなんかな、だからツッコみ続けよう。
「まだまだあるぜ~オレサマの戯れの数々が」
「あたしだって負けないぜ、あたしなんかこの前、夜夏とすごいことしたんだぜ」
「具体的に言わねぇとわかんないな~莉乃ちゃんよ~」
「き~、それはだな……」
僕にも莉乃とそんな出来事の覚えはないし、ヒメはそんな莉乃を見抜いているようだ。
「まさか意地張ってからのデタラメじゃねーだろーなー」
なにも言い返せない莉乃に、さらに追い討ちをかけるように言うヒメはなんだが悪者にしか見えない。
「い、言ったな……」
「じゃー言ってみな、お前の武勇伝をよ!」
「あ、あたしは…………夜夏と○○○をしたぜ!!」
……………………。
「ふっはっはっは! よくぞ言ったな! 褒めてやろう!」
さっきツッコみ続けると決めたが、これはツッコんだら負けだ。そう言い聞かせた。
ヒメがなぜ褒めるのかも不明だし、よくわからん。
「どうやら勝負はつかないようだし、どうだ! ここはゲームで決着をつけようじゃねーか」
「いいぜ。望むところだ!」
勝手な言い争いは、引き分けのようで延長戦のゲームをはじめるため、二人は屋敷に向かって歩いて行く。
それに気づいたのか南雲ちゃんもいつの間にやら二人の後ろに付いていった。
そんでもって、長い長い目の前での戦争は終わった。
「ふー」と息つく間もなく僕のすることは、後片付けである。
この家には、特別お手伝いさんやお世話係などはいない。いるのは、おばあさまとたまにくる執事のおじいちゃんだけ。
だからヒメの身の周りの世話は僕がやっている。
そんなに苦でもないし、嫌ってわけでもない。
黙々と作業をすすめる僕に……
「ねー夜夏くん…………」
テーブルの上のお茶などを片付けている僕に、まだ座っていた冬葉が声をかける。
「えっ? なに?」
「夜夏くんはどんな恋バナを……話すつもりだったの……」
「あ、そうだな~今までそういうようなものと無縁だったし……」
ごまかそう。そう思っていた、だって今の僕には必要のない感情。
だから、出番がきても適当に流そう、そう決めていた。
「……姫夏ちゃんのこととか」
冬葉が小さな声で呟く。
聞き逃してもいいようなそんな声で。
予想してなかった質問ではなかった。でも答えづらいからあまり口にしたくない……そんな感じだ。
「ヒメか? あいつのことは……好きだよ……でも、これは恋とかそんなんじゃなくて、その……そう! 〝誇り〟なんだと思う。だからさ、単なる〝立派な姉〟なだけだよ」
自分でもびっくりするくらい言葉がでてこない。長い間そばにいても、五十字ぐらいの言葉しか口にできない。
冬葉はひと呼吸置いて、ゆっくり「そっか……ありがとう」と耳をすまさないと聞こえないぐらい小さく呟いた。
それだけを言って、冬葉も屋敷のほうに向かって走っていった。
昼の部につづきます(また違う話だけど)。では。
感想、誤字、脱字および作品の矛盾など、感想まってます。
友城にい




