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天国のラブストーリー  作者: 赤塚窓陽
チェリー、16歳
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チェリー、16歳 (6)

「じゃあチェリー、気を付けてね。そうそう、綾月のやつが最近彼女と別れてイライラしてるみたいだから、会ってもあんまり目とか合わさないように」


 レンが言った。


 綾月というのは、私たちの高校の周辺では有名な悪いやつ……いわゆる不良っていうやつだ。本名はたしか、綾月遊人(あやつきゆうと)。私たちの高校のとなりにある、ちょっと荒れた公立高校に通っている。


その綾月が、どうやら最近彼女と別れていらついているようで、周囲でも暴言を浴びせられたとか、ガンをつけられたとかの被害報告が跡をたたない。


「ありがと、気を付ける。そっちも気を付けてね」


 レンとマリアに私も言うと、2人もうん、とうなずいて、それからお互いに手を振って、それぞれの向かう場所へと急いだ。


--------------------♪--------------------


 私は電車の扉の横に立って、窓から景色を眺めた。

 私の家と学校は電車で2駅の距離で、電車に乗っている時間は少ないけれど、この窓から眺める夜景が最高に好きだった。


 夜景といっても、観光地で見るようなキレイなものではなくて、ただ街中のショッピングモールや住宅街や街灯の明かりが見えるだけだけれど、一日の終わりにそれを見ると、なんだか少し疲れが癒される気がする。今日も一日がんばった私へのささやかなごほうび。


 そんな夜の景色を眺めながら、私はさっきレンやマリアと、ソー先輩について喋ったことを思い返した。


 もうすぐ部活を引退するソー先輩。

 ソー先輩も受験して大学に行ったりして、私たちの学校からはいなくなるんだな、と当たり前のことだけれど、そう思った。


 それから、ソー先輩の次は自分たちの番。ということも思い出した。私たちにももうじき、夢に向かって本気で頑張らないといけないときが来る。そう思うと不安が胸に湧いて出てくるけれど、同時に、楽しみにも思った。


 2年後の私が、希望する大学に進めているかどうかは分からない。将来、憧れている職業に就けているかも分からない。けれど、未来の自分はどうなっているだろうって考えるのは、結構楽しい。


これから出会うであろう友人はどんな人かな、とか、大人になってもレンやマリア達とは仲良しでいてるのかな、とか、もし結婚してるとしたらどんな人としてるのか、とか。人生ってこれからどうなるか分からない。だからちょっと怖くて、だから楽しい。


 電車の速度がふっとゆるんだ。窓を過ぎ去る夜の景色が、見慣れた地元の街へと変わっていく。

 駅名のアナウンスが流れたあと電車が止まると、私はいつもの駅に降りたった。


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