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偽魔王になりました

「カイト様。一つ聞いてよろしいですか?」


 午前の会議の中で言われた。ここでは大臣クラスの人しかいない。

 なんだろうね。いきなり改まっちゃって。


「カイト様は本当に魔王様で?」

「ど、どういう意味だ?」

「巷でサチカ様が魔王ではないかというのが噂になっておりまして。まあ、噂ですが」

「そそそそそそそそ、そんなことがあるわけないじゃないですか」


 師匠。もっと落ち着いてください。バレバレじゃないですか。ポーカーフェイスを体得しましょうよ。いつものようにしていてください。

 

「嘘じゃったのか……」


 ほら、ドワーフの長老にバレちゃったじゃない。


「ええ、まあ……」

「なんで嘘をついたのじゃ?」

「えっと、魔王をしたかったからです、よ?」


 疑問形になってしまった。他の理由があるのだ。


『ほんとかの?』


 今度はダークエルフのおじいちゃんから。頭の中に響くように声がした。


『こ、これは?』

『テレパシーじゃよ。近距離しか使えんが話したい人だけで相談できるのじゃ』

『なんか微妙に使えないな』

『そうでもないぞ。外交やこのような秘密の相談が必要になった時に重宝するのだ』


 えっと……この人は獣人代表の将軍だったかな。声だけじゃまだ判断がつかない。 


『へー』

『でじゃ、他に理由があると見たが?』

『まあ……師匠はいませんよね?』

『言えないことなのかの?』

『えっと……恥ずかしくて』

『ほう……?』

『えと、女性に魔王名乗らせるのってどうかと思うじゃないですか』

『『『『『『…………』』』』』』』

『……なにこの沈黙』

『いやなに。男だのうと思っただけじゃ』


 そんなこと言われたら恥ずかしいじゃないか。


『ほら早く普通の状態でしましょう。師匠が困ってるじゃないですか』


 師匠は話に加わることができず、みんなが黙ってしまったのに困惑していた。


「まあ、影武者と思えば良いじゃろうな」


 この感じでこの話題は纏まった。国民にはあくまで俺が魔王だということを貫く。


「そうか。じゃあ次の議題じゃ。森を焼く手はずだがどうすればいいんじゃ?」

「あ、それは……地属性と水属性と火属性魔法の使える人を動員するとして。まず予定範囲外に燃え移らないように土の壁を作って火をかけましょう。それで消化すればいいんじゃないのかな。それで耕す感じでどうか?」

「人員は?」

「該当人員は城で従事するもので」

「エルフ族は除いてもいいですかな?」

「えっと……?」

「エルフ族、ダークエルフも含めてじゃが、彼らは木の声が聞こえるのじゃ」


 そんな声が聞こえるんだ。ちょっと俺も聞いてみたい。

 つーか、せっかく出席しているのだから、俺も会議に参入してみたいのだがそんな安易な話題はないのだ。ちょっと、俺も混ぜてくれませんかね?


「それじゃあ任意参加で」

「カイト殿もそれでよろしいか?」

「は、はい」

「次は国際情勢についてじゃ」


 おい。一言で済んでしまった。もっと俺にも入れる話題をください。


「特に変わったことはないが、あらためて説明せておこうかの」

「「お願いします」」

「勢力が一番大きく中央に位置取っているのが帝国じゃ。周りのほとんどの国を勢力下に置いているな。属国は我が国、エルフの里がなってしまってるな。エルフの里にいたっては税を納めることで不干渉を約束されている。実質我が国がぐらいが弾圧されておるな」

「これから挽回するんだけどね」

「中央から南にかけて帝国、西に我が国、北に教国、東に王国だな」


 帝国が一番強く、次に王国、そして王国と同盟を結ぶ教国と続く。俺達の国が一番勢力的に弱いのだ。属国だしどんどん力を削られていってのだ。

 帝国以外の三国を合わせても帝国にかなわない。同盟を結べればよいのだが、教国と我が国の関係は悪い。教国は魔族を教義的に認めていないのだ。それにもとない不干渉なのが王国である。

 つまり、味方がいない。


「で、いつから宣戦布告するんじゃ?」


 俺達はもう完全に帝国に喧嘩を売るつもりなのだ。絶対に独立するのだ。


「次の徴税の時にしようかと思います」

「師匠、それはなんで? もっと早くても遅くてもいいんじゃない?」

「人質がいるからじゃな?」

「それもあります」

「人質って?」

「種族ごとに崇められる人や首領も娘などが帝国につかまっているのだ。反乱を防ぐのが目的じゃな。個人では絶対に逆らうことはなくなるだろう。我らが立ち上がることになったら力ずくで抑え続けるのだ」


 そんなことになってるのかよ。完全に魔族を弾圧するつもりなんだ。


「徴税の時には軍隊を連れてくるのだ。その時には帝都には兵力がすくなるところを狙って奪還するのだな。それならば、高レベルの人物を選抜しなければならないな」

「ええ、わたし80オーバーなので行きますけど」

「そ、そうなのか……すごいな」

「ま、まあ、半年ぐらいあるそうですから選抜などはそのうちということで……」


 ミーナはいつも魔物を討伐しているしサチカは兵士と君臨しているので、順調にレベルが上がっている。

 ミーナにいたっては魔人さんやダークエルフさんたちに教えてもらっていた。

 ウィザードは手数が多いことが特徴なのに、ミーナは強力範囲魔法を乱発しだしていた。いや、別にいいんだけどね、俺のレベルが上がっていないことを考えるといろいろ複雑。内政とか勉強とかであんまり戦っていないし、むしろ外にも出てないな。


「あとは……うむ、金が無いの」

「あー、それは余っているお金を寄付してもらいましょう」

「うむ、任意に自由な量を出してもらうことにするかの」

「はい、それで。でもこれによると、紙のにかかるお金が高すぎですよね」


 この国以外の三カ国が紙の製造を独占しているのだ。ここの国は製造方法がない。なので高く売り叩かれる。


「えっと紙って羊皮紙ですよね?」

「そうじゃの」


 師匠、なにか知っているのだろうか。思案顔で考えているようだ。

 

「……木の繊維からできるらしいんだけど」

「それは本当ですかっ?」

「よくは知らないけれど……ちょっとだけ、さわりだけの知識しか覚えていないんだが」

「それはしかたがありませんが、まあ、職人に任せましょうの」

「そうです師匠。師匠はすごいですよ」

「そうかなあ……」


 これで会議はお開き。

 俺はこれからまた勉強。最近昼も外に出れていないんですけど。そろそろ頭がパンクするんじゃないかと心配なのだが。

 

「カイト様、これから軍事会議がありますので勉強はお休みでございます」

「マジでよっしゃああああああ」

「そこまで喜ばれると厳しくしていきたくあります」

「やーめーてー」


 俺の秘書なのに。教師なのに。俺の味方だと思っていたのに。

 そんなに俺をいじめるのが好きなのか。この人Sだったのか。

 

「はい好きですね」


 ということで軍事会議に参加することになった。


「では初めてなので、自己紹介から行います」


 これは嬉しい。僕がわかるのは宰相さんのダークエルフお爺さんと軍務大臣の狼の獣人さんと師匠、秘書ぐらいだったのだ。

 彼らは朝の会議に出ていたのだから顔はわかる。名前はわからないので役職や役割で判断である。

 上記の二人の紹介はなしで他の人だけでやっていく。

 第一軍、精鋭兵の集まりの一番偉い人はダークエルフのオジサン。

 第二軍、騎兵隊はダークエルフのお姉さん。

 第三軍、重歩兵はリザードマン。

 第四軍、一般兵のほうはドワーフの人。

 第五軍、獣人部。狼獣人。

 第六軍、魔法部。魔人のお爺さん。

 第七軍、航空部。翼人。

 第八軍、情報部。猫の獣人さん。

 第九軍、補給部、鬼族の人。

 第十軍、工作部、ドワーフの人だね。

 これらの人が出席していた。このような部の下に所属やらなにやらがまとめられているんだって。師匠がそれを監督したらしい。その間、俺は勉強してましたよ。

 

「議題は帝国に対向することだが……どうするのだ? サチカ殿」

「えっと……まず人質になっている人を助けないといけないんだよね」

「ええ、あんまり情報も集まっていないので、現地で探さなければなりません」

「選抜しましょう。一人はわたしが行きます」

「サチカ殿が?」

「ええ、レベルも高いですから。一点突破できる人材が必要だろう?」

「必要になるのだろうが……よろしいので?」

「はい。あとは……バンパイアの強い人を数人と感覚の聞く獣人を」


 できるだけ秘匿に適した人材が必要らしい。当然だが。

 

「はい……」

「次は接近してきている帝国に対してですが」

「それは半数の部隊をもって当たります」

「間に合いますか?」

「後どのぐらいでしょう?」

「国境に至るまでは三日ほどでしょうか……」

「地図見せて下さい」


 俺もう寝ていい?

 徹夜続きはきついのですよ。

 口挟むことないもん。どうしろと。

 皆さんで頑張って作戦でもなんでも考えてください。

 

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