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★冒険者になろう4

「なんでゴブリンの場所がわかるの?」

「えっと、木に聞いただけです」

「へーそんな活用方法があるんだ」

「スイン様も感知できると思いますよ」

「えっ?」


 僕はどこにゴブリンがいるかわからないよ。スキルとか活用するのかな。


「スイン様は精霊使いじゃないですか。聞いてみたらどうですか?」

「精霊が教えてくれるの? やってみるね。エーちゃん、アーちゃん」

「エーちゃん? アーちゃん?」

「なにー?」

 

 エーちゃんは風の精霊のこと。エアからの連想。アーちゃんは地の精霊。アースからの連想。自分で名付けたながら安直だね。


「ゴブリンの場所わかる?」

「こっちー」

「連れてくー」

 

 どうやらわかるようだ。アーちゃんはゴブリンの移動する振動から読み取ったらしいし、エーちゃんは身体が風を押しのける感覚でわかるんだって。

 本人から聞いたことではなくスローウナに聞いた。

 あっちにいるらしいけれど、その前に聞いて置かなければならないことがある。

 僕の攻撃のことだ。


「スローウナは精霊のことよく知っているね」

「エルフの仲間にいましたもので」

「じゃあどうやって攻撃するかも知っているよね?」

「はい。どうやら精霊に攻撃したいイメージを伝えることで攻撃しているようです。やってみてはどうですか?」

「こうかな?」


 イメージするは風による刃。いわゆる【カマイタチ】である。ゲームやアニメでよくある技なので、イメージしてみようかと思ったのだ。


「風魔法の【ウィンドカッター】と同じですね」

「そうなの。じゃあそっちの名前で呼ぼうかな」

「それがいいと思います。敵もスイン様のことを普通の魔法使いだと思うでしょう」

「思ってもらったら何かいいことあるの?」

「魔法は一定の効果を引き出すことができますが応用が効きません。しかし、精霊使いはイメージで同じ事を行うので自由に効果を引き出すことができます。そこが精霊使いのいいところなのです」

「へー。じゃあ、いろいろイメージトレーニングしとかないとね」

「はい。今日のところはこんな感じで十分でしょう」


 やらないといけないことがどっと増えた。

 地の精霊のイメージを膨れましておく。一番に思いつくのは土の壁である。定番だよね。風の壁は見えない分作りにくかった。

 急ぐこともないので歩いてい向かうと精霊が囁く。


「むこうにひとがいるー」

「なにしているかわかる?」

「たたかっているー」

「なにと?」

「ひととー」


 どうやら人同士で戦ってるらしい。


「いってみましょう。盗賊かも知れません」

「そ、そうだね」


 盗賊を討伐すると懸賞金がもらえたりするらしい。殺しても捕縛してもどちらでも大丈夫なのだが僕としては捕まえたい。

 日本人感覚が抜けていないのかもしれない。

 現場に到着してみると、本当に盗賊が高級そうな馬車を囲んでいた。

 

「スイン様加勢しましょう」

「ああ」


 馬車に一人いるのかな。猫耳の侍女さんが盗賊相手に馬車を守っているように戦っている。

 なにあの武器。鎖の先に短刀が付いているような得物。使い慣れているのか、馬車には近づけないように扱っている。


「加勢します」

「すみません、お願いします」


 スローウナが切り込んで盗賊の一人を切り倒した。状況がわかっているのだろう侍女が言う。

 

「【アースウォール】」


 僕は馬車を囲む土の壁を作っておく。これで馬車の中にいる守られている人は大丈夫だと思う。スローウナに切られるような人には突破できないぐらいの強度がある。

 

「うりょああ。死ねええ」

「ふっ、そんなものですか」


 なんなくスローウナは斬り伏せてゆく。すごいんだ。猫耳メイドさんは馬車から離れないながらもなかなか強く、戦っている。


「ちっ……うおりゃあああああ。しねぇぇぇぇぇ」


 今度は僕に向かってきた。スローウナもメイドさんも他の盗賊らに囲まれており、助けはない。

 ヤバイ。凶刃が僕を襲う。

 

「う、うわあ。【ウィンドカッター】」

 

 風の刃が盗賊男を細かく切る。生きていた姓名を切り刻み肉片に変える。

 グロい。血が溢れ出ている。

 おぇえ。

 吐いた。胃液が溢れかえった。

 

「ひ、ひと、人を殺してしまった……」


 覚悟が足りなかったのだ。人を殺すのに。

 現代日本人の倫理観に反することができなかった。本当に覚悟を慣れが足りなかったのだ。

 

「……スイン様?」


 どうやら討伐し終わったようだ。逃げ帰ったのかもしれない。


「僕、人を殺したことなかったよぅ、ごめんなさいぃ……」

「す、スイン様……?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「スイン様、終わりました。大丈夫ですよ」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「スイン様っ。どうしたんですか? 話してください」


 僕はスローウナに抱きしめられてようやく落ち着いてきた。

 話すことにする。


「僕、人に命を奪ってしまったんだ……初めてだったんだよ……」

「なんです。それだけですか」

「それだけってっ……」

「それだけです。命を奪うことは当たり前です。それともスイン様は肉を食べたことはないのですか?」

「た、食べたことあるけど……」

「その肉も命から奪ったものですよ」

「でも……」

「でももありません。どの命も同じです。たとえ害虫でも人間でも食物でも。私たちは他の生命の上に成り立っているのです。ですから命を奪うのはしかたがないことなのです。とくに悪さをするものは」

「でもっ」

「今のは悪人です。殺されても当然の奴らです。スイン様が悪くはないのですよ」

「だからって僕は……」

「いいのです。少しずつ慣れていけばよいのです。ゆっくり慣れていきましょう」

「う、うん……」

「よろしいですか? 助けていただいてありがとうございます」


 メイドさんが話しかけてきた。僕とスローウナの対談は空気を読んで割り込んでこなかった。

 よくできた侍従さんだ。


「助けていただいたことは感謝したいのですが……」

「ですが?」

「ミラノ様を助けていただきたいのです」

「ご、ごめん」


 解除し忘れていた。馬車が土の壁に囲まれているのだ。忘れていた。


「たすけてー。くらいよ、どうしたの、クラム生きてるよね。大丈夫だよね? ねえ?」


 うんさっさと出してあげよう。精霊たちに頼んで解体してもらう。元からあったように土に帰っていく。元から土なんだけどね。


「やっと出れた。大丈夫だったクラム?」

「はい、この方たちに助けて頂きました」

「ふん、感謝するわ」

「……はあ」


 ミラノ様はすぐに馬車に乗り込んでしまい姿が見えなくなった。もうちょっと誠意というものを持つべきだろうに。貴族様なんだろうか。こんな人がああいのは嫌だなあ。


「じゃあ行くわよクラム」

「はいお嬢様。お礼は帝都でいたしますのでお泊りしている宿をお教え下さいませんか?」

「【健やかな宿】におります」

「わかりました。後日参上させて頂きますので」

「待ってます」

「では」


 二人を乗せた馬車は行ってしまった。もう盗賊に帝都につくまでに襲われることはないだろう。こんなところに盗賊の集まりが二つや三つあったら困る。二回も同じ相手を襲うこともないだろうということだ。


「では、丁度よい敵を探しましょう」

「うん。アーちゃん、何かいる?」

「むこうにいるよー」

「行ってみましょう」


 戦うこと、殺すことに慣れないと生きていけない。

 見つかった魔物は当初の目的、ゴブリンだった。

 僕の精霊術である【ウィンドカッター】以外を練習してみようかと。できるなら。

 どんなイメージでしようか。風の塊を飛ばす空気砲とか。……秘密の道具で同じのがあったような。

 土の方も作らないと。同じアイデアで土の弾でも飛ばすか。

 土って金属も含まれているらしい。ドワーフが鍛冶屋に向いているのはドワーフ自身が土の魔法に長けているからでもある。

 簡易銃が出来上がる。銃というものでもないけど。銃弾を飛ばすだけで銃身がないけれど。

 スローウナによると初めての攻撃方法らしいので【アースガン】とでも呼ぼうか。なぜかというと風の力も併用しているからだ。初速を爆発で行うことができないので圧縮した風を使うことにした。銃身も風で作るので見えないし加速している。

 結果、本物の銃よりも強力になった。銃弾も大きくできるし。

 ゴブリンさんたちも皆殺しにできてしまった。

 吐いたけど。思いっきり結構な量吐いた。盗賊と同じぐらいグロい光景が目の前に展開されていたのだ。

 

「だめですね……」

「うん……」


 落ち込むよこれは。ヤバイ。血を見るだけで吐き気が湧き出てくるようだ。

 蚊は殺したことあるんだけど、それ以上の虫って見たことないんだよ。ニホンでは体調の関係から施設の外を出歩くこともなかったのだ。

 休みを入れながら、ゆっくりと街に戻る。

 ギルドに寄って依頼の精算してもらう。カレーラピットを討伐した分とゴブリンの分を合わせるとかなりの量になったのだった。あんまり僕はなんにもしていないけれど。剥ぎ取りはスローウナに頼りきりなのだった。

 

「討伐系は当分無理ですね」

「採取も無理、討伐も無理ということは……することなくなった」

「いえ、お手伝いとかありますよ。最低ランクですけれど」

「それしかないね……はあ」

「ええ、お手伝い依頼を終わってから少しだけ魔物を討伐しに行きましょう」


 うーん。しかたがないよな。血の付いた肉を見ると吐気がするのだ。冒険者としては地名て益なきもするが、あいにく僕らには社会的信用も地位もないのだ。

 地道にランク上げをして行かなければならない。


「二十個ほどお手伝い依頼をこなすと一つ上のランクに上がることができます。Dランクに上がるのにはお手伝い依頼は五十個必要です」

「それまでには討伐系をこなせるようになりたいな」


 お手伝い依頼は救済の役割が強い。大きい依頼を失敗したりしてお金に困った人が受けるようなものなのらしい。

 次の目標がはっきり決まった。

 生き物を殺すことに慣れよう。

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