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★最強決定戦

 大会に出ることになって。

 予選があるというのだ。

 権力者もしくはギルドの推薦があれば本選のみなのだが、一般人には予選が必要だった。推薦により本選出場決定チームは六チーム。これに予選から成り上がるチームが六組。合わせて十二組のトーナメント方式で優勝者を決める。それよりも予選参加チーム数が多すぎだ。予選出場権はギルドの依頼によるゴブリン討伐を一度以上こなしていることである。もうちょっと難しくしてくれればすぐ終わるのになあ。でもまあこれはこれで盛り上がるそうだが。

 予選ルールは簡単。場外に押し出せばよいだけだった。バトルロワイヤル形式でチーム戦である。最後に生き残っているチームメンバーが本選出場だ。

 ということで舞台ステージの上に僕らはいる。中世ヨーロッパのコロセウムみたいな設備である。観客動員数はかなりものだ。舞台上は出場者がひしめき合っていて乗っているぐらいが限界である。ちょっと押したら何人か脱落するのではなかろうか。

 まあ、全員が残れるわけがない。というか記念出場とかも多いらしいのだ。どうせだからこの祭りに乗っておこうとか。だから自主脱落も頻繁なんだって。

 放送が入った。司会さんが叫びだす。


「さあああああああ、やってきました。王国最強決定戦」


 ん? なんか題名変わったような?


「予選のルールは簡単。押し出せ押し出せ、それだけだあああああ」


 早くしてください。もうラッシュアワーってこんな感じなのかな。乗ったことないからわからないけれど、押し合いへし合いしているのだった。もうね、しんどい。


「さあさあ。そろそろ始めるとしましょう。行きますよ。レディーゴー」


 合図がおかしい。それよりもまずは人数を減らさないと。なんにもできない。

 ドガン。

 誰か、なにも考えずに魔法でも使ったのだろう。

 何人か吹っ飛んでいた。ご愁傷様です。


「誰だ魔法使ったやつ。空気読め」


 ベテラン風戦士さんが大声で詰っていた。


「おおっと、サルスミ選手いきなり派手に火炎魔法を発動させました」

「彼は去年学園を次席で卒業したようですね。火属性に連なる魔法が得意で好みの女性はおしとやかな方。先週にはダークウルフの討伐を達成していました。その時に亡くした髪の毛が印象的です」

「さすが学園次席。強力な魔法を使いました」


 次席は空気読めないのか……。

 解説の人もいるのね。情報量もすごいです。

 しかし、どうでもいいことばっかり解説していないですか?

 異性のタイプとか知らんし。

 とりあえず防御するか。今のように不意に魔法で飛ばされるかもしれないからね。

 スローウナと正宗に他の奴らを近づけさせないように頼む。

 そして土精霊に土壁と作ってもらう。当分籠っていようかな。酸素に困るほどには時間がかかるわけでもないだろう。

 いざとなればさっさと外に出てしまえばよいからね。


「おお。エリアの中心で土のかまくらができてしまったぞ」

「作ったのはおそらく……初参加の、スイン選手でしょう。ギルドランクは低いですが精霊の使い方は上手いようです」


 僕の情報はあんまり流れていないのね。まあ、あんまり依頼をこなしているわけでなかったし。

 ギルドのランクは王国・帝国・教国で統一されている。ギルドは政治とは距離を置いているのでどの国にも信頼されている。需要と供給の関係や強力な冒険者を抱えている理由から、各国に一目置かれているのだ。

 

「そのスイン選手を同じメンバーも隠れてしまったああああああ」


 そんな目立つような紹介はやめて。

 もっと慎ましく生きていきたいのですよ。

 お、なかなか攻撃が来ないぞ? いきなり激しい攻撃が来るかと思っていたのだけど予想を裏切られた。

 実況者の声でおおよその残り人数がわかっている。いらない情報も入ってくるが。

 ……そろそろ強者のみが残ってきたようだ。


「残りの選手が開始早々と隠れてしまったスイン選手に一斉に攻撃するようです」

「お互いに攻撃して消耗を避けるためでしょう。今のところスイン選手のメンバーは戦っていませんからね」

「みなさん。派手な攻撃を放つようです。観客の皆さん気を付けてください」


 やっべ。話が本当なら強化しなければ。

 すぐ逃げれるように地面に穴を掘ってあるのだけど。舞台の端が出口になっている。土精霊は便利だね。

 それから壁の強化のため、二重三重と張りめぐらせ。金属を加工する。それに魔力を流すだけで基本強度は上がる。膨大に魔力を使うけど。

 危なくなったら逃げたらいいからな。ぎりぎりまで頑張るか。

 と、まあ四人を退避させて頑張って耐える。厳しいね。


「ぐわっ」「ぐふっ」「ぐなっ」「ぐえっ」


 だれかのやられた声がした。


「しゅ、終了でーす。予選通過チームが決定しました」


 おお、なんとか終わったようだ。何がどうなったんだ?

 土壁を解除して周りを見ると、何人かがちらほらと立っている様子が見えた。各々方武器を構えている。筋肉隆々なおっさんが多いのが気になるけれど、そういうものなのかもしれない。


「では昼食をとっていただき、お昼から本選を行います」

「わーい、わーい。ごはんだー」

「がうがう」


 昼飯を食べた。予選突破者で食べていた。予算の関係で用意された食事は十分においしかった。安いけど。この地に在住の冒険者が言うには大きい居酒屋のメニューだってさ。『安い、多い、おいしい』が売りのどこかで聞いたようなフレーズだったが、真実ではある。冒険者御用達になってしまうわけだよ。うちのメンバーがドカ食いしているが僕は知らない。

 予選通過者たちで仲良くなっていると、係の人がやってきて、トーナメント表をくれた。

 予選通過者と推薦組が戦うようになっているようで、知らない奴らばっかりだった。知り合いと戦うのって気が引けてしまうのでよかった。

 

「お前は残念だったな。ギルドランクAAが相手か……俺らのほうがましだな。王宮騎士隊だもんな」

「そうなんですか?」

「知らないのか。スインが相手するのはランクAAのチーム『エリアの魔剣士』だ。全員魔剣士で固めていて融通が利きやすいのが特徴だな」


 親切なおじさんに教えてもらう。

 日本で聞いたことのある題名に似たチーム名だった。魔剣士かぁ……。


「しかし拙者たちにかかればこんな無名の敵など恐れるに足らんな」


 いやいやマサムネさん。無名なのはむしろこっちですよ。ただ僕らが聞いたことのないだけじゃないですか。推薦されるぐらいには強いんでしょう。

 とまあ大会本戦が始まる。


「さあ、やってまいりました。最強決定戦、本戦の始まりだーあああああああああああああ」


 盛り上がっているが、あれ? 予選の時とフィールドが違うんですけど。陸上大会のトラックみたいになっているね。


「本日最初の戦いはエリアの魔剣士とスインたちだーああああ」


 スインたちっていうチーム名じゃないですよ。単にチーム名を登録していないだけなのだ。司会者の人はギルドからの情報でしゃっべっているのだろうね。


「競技のルールは簡単」


 どうせ戦うだけじゃないの。総当たり戦か大将戦かのちがいだろうか。


「障害物走だああああああああああああああ」


 全く違った。なんか運動会みたいである。

 

「一人がトラックを一周以上走ることで、チームとしては六週になります」

「さまざまな障害物を配置していますね。もちろん相手の走者に直接攻撃もありとなっています」


 走力だけでなく戦闘力や臨機応変さが必要になってくるな。

 戦力的にも意味があるぞ。あいにくうちはバカばっかりだけど。スローウナはともかく獣っ子たちはが不安だ。勇者だったマサムネはどうかわからないけど。


「ここで少々の作戦タイムです。有効に活用してください」


 うれしいものである。絶対必要だと思うのだ。向こうは知らないがこっちは何にも知らなかったしね。


「拙者が一番槍を務めさせていただきたい」

「わたしも一番がいい」

「がうがう」


 お前ら、目立ちたがりばかりだな。この種目も知っていたような節が見え隠れしているし。

 何とか僕が最初に走ろうと思う。全力ダッシュなんてしたことがないし、喘息持っているからね。アンカーはないとして、様子見のために僕が一番に走りたい。

 少し考えてみると、後ろから妨害は簡単だが前から妨害行動は難しいように思う。

 ということで初めは後ろについていたらいいのではないか。


「いや、最初は僕が走ります。リーダー命令で」

「む、それでは仕方がないな。大将に任せるでござる」

「群れのかしらには従う」

「がうがう」


 命令権振りかざしたらいいだけだった。

 順番を決めてしまう。僕の次はマサムネ、それから、ホロリュール、カルニカ、最後にスローウナだ。

 向こうには平均チームらしいのだから順番にこだわることはあまりないのだけどね。

 マサムネは次鋒で喜んでいたし、ホラリュールは真ん中ではしゃいでいた。ホラリュールの理由がわからん。カルニカは最後に近いので嫌そうにしていたけれど、大将の次にすごいと言ったら乗り気だった。この三人は単純すぎやしないかい。

 お、作戦タイムも終わるようだ。僕はスタート地点に移動して合図を待つ。

 

「位置について。よーい、スタート」

やべー、ストックが……。

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