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★武士

「やや我こそは教国……何だったでござるか?」

「特別武人戦力特務隊です」

「のマサムネでござる」

 

 なんか厄介そうな人が出た。目的地に向かう道中で襲撃らしいものにあった。僕としては関わり合いになりたくないのだけど、そうも言ってられないんだろうな。

 ポップしたのは刀をもつ片目を瞑った男とその取り巻き。眼帯男は割と美形。後方の女性の魔法使いと女の子僧侶だな。


「…………」

「…………」

「…………」


 お互いに無言。

 なんか続きがありそうだもの。この男戦国時代の鎧をところどころあしらったような装備で既に刀を抜いているのだ。穏やかな状況でもない。

 しびれを切らした侍男が言う。


「そちらは?」

「あ、こっちの番か。ちょっとだけ待って。今から考えるから」

「うむ。待つでござる」


 付き合いはいいらしい。

 で、こっちは自己紹介を思案。

 

「少々お待ちを」


――審議中――


 よし決定した。


「僕は精霊使いのスインです。商人です」

「私はスローウナです。スイン様の奴隷をしております」

「やいやい我こそわ魔狼ホラリュールだぞ」

「がうがう、カルニカ」


 別に考えることなかったね。相手に合わせて大仰な名乗りでもしようかとは思ったんだけどね。慣れないことはしないということで。


「魔狼……魔物だな。その耳が何よりの証拠。拙者が成敗してくれる。覚悟っ」


 もちろん服は着せてますよ。全裸登場は色々アウトなのでもう、人型に常時なってもらって、予備の服を貸している。スローウナのもので裾が長く身丈に合っていない。

 街についたらちゃんとした背丈に遭う服を買ってあげないとね。


「うおっ」


 いきなり襲いかかってきやがった。見境ないのかよもう。噂通り教国は魔族とか排斥しているようだ。ここにいるやつ僕以外はみんな魔族のようなものだもんな。駄目だ。教国には入れない。元々教国には向かっていなかったけどさ。

 男の凶刃をとっさに抜いたスローウナの剣で防ぐ。

 敵方の後衛も詠唱に入っているのが見えている。


「狼になっちゃうよ」


 とのホラリュールの宣言で狼モードにそれを見た敵後衛は遁走した。逃げ足だけめっちゃ早い。

 ホラリュールの狼モードは親魔狼の半分ぐらいの大きさである。威嚇だけでも十分に怖い。


「やるなお主」


 などと斬り合っている人を忘れて逃げていってしまった。仲間じゃないのかなあ。

 二人は接近して斬り合っていたのだが一度後ろに飛び退り間合いをとった所で敵侍が気づく。


「あいつらどこ行ったでござる?」

「ん?」


 敵だというのに尋ねてくるので、教えてあげる事で戦闘回避でもできたらいいなという思いから答えてやった。


「逃げた。ホラリュールの姿見たら逃げてった」

「むむむ。ここが拙者の死に場所ということか……もう一度でいいから米を食べたかったでござる」


 この人死ぬつもりだよ。喧嘩売っといてこの状況になっちゃったんだものなあ。

 ん?


「お米のこと知っているの?」

「お、お主も知っているのでござるか? この国の奴らは誰も知らんようで困っていたのでござる」

「もしかして日本人?」

「そういうお主も?」

「そう」

「この国で初めて日本人にあったでござる」

「とりあえず武器を下ろして話しない?」

「そ、そうでござるな。失礼いたした。あらためて名乗りなおそう。拙者、伊達政宗でござる」


 まだホラリュールは警戒して変身を解いていないが。

 伊達政宗だとっ?

 戦国大名のあの独眼竜とか呼ばれるようなあの人?


「えっと……幼名は梵天丸の?」

「よく知っておるでござるな。いかにもそのマサムネと申す」


 いやね、最近見たアニメで伊達政宗が出てくるのがあったんだよね……。


「そちらはスイン殿、スローウナ殿、カルニカ殿、ホラリュール殿、でよろしいのでござるな?」

「がう」


 カルニカの代表して返事。


「拙者いろいろあって知らないことが多いのでござるが少し身の上話をしてようござるか?」

「いいですけど。ホラリュール。ヒトモードになっていいよ」

「わかった」


 ホラリュールを元に戻し(?)腰を落ち着けて話をすることになった。

 話をしていると彼……は彼女だった。男ではなく女性だった。マサムネさんは姫大名だったらしい。女に生まれてきたのだが、一人っ子で当主になるには男ではなければならないらしいな。戦国時代は大変だ。

 今時点でホラリュールやカルニカは『美味しそうな匂いだ』とか言ってどこか行ってしまった。本能か何かで戻ってくるだろう。そんなに心配はしていない。僕よりは強いんじゃないかな。

 で、なにかの拍子で転移してしまったらしい。

 教国に召喚され勇者として祭り上げられたのだ。侍として修練していたおかげで近接戦闘にはかなりのレベルであったのだが日本にはない魔法は適正がなかったと。あれだ、イメージの問題なんだろうね。

戦国時代の妖術とかに相当している魔法なぞ、大名が信じれるわけがないよね。織田信長だって現実主義の合理主義者だったそうだし。そうでもないと天下統一とかできないんだろうね。

 それで修行のためたびに出て今。


「初の実践だったのだござるが、このような結果なのでござった」


 教国に魔物はともかく魔族までも悪だと聞かされていて僕らを襲ったんだって。日本にもいなかったしだからな。

 一種の洗脳だ。しかたがないのかもしれない。

 

「肉取ってきた」

「がうがう」


 獣っ娘たちが帰ってきた。ほらね。大丈夫だったでしょう。しかも僕よりも大きいクマを抱えている。狩ってきたのだろうな。

 というかまさに肉だけれど。まだ肉ではないよね。もう少し処理したら肉にはなるだろうけれどさ。


「肉食う」

「がう」


 昼時だからね。腹が減っては戦はできぬとも言うし。戦でないが。


「はいはい。これから作るからな。ちょっとだけ待ってて」


 ちょっと休憩。

 肉だけでなく荷馬車に積んである野菜も合わせて料理。


「これだけでも旨いことは旨いでござるが、やはり米がほしいでござる……」


 今回の食事はバーベキューにした。別名焼肉。準備が簡単なので。

 網と食材と火があればできる。


「そうですよね……」


 時代は違うが日本の心は同じだ。ああ、お米が食べたい。サチカさんもきっとそうだ。見つからないかな。

 

「オコメとはどんなに美味しいものなのでしょう?」

「おいしいもの?」

「がう? こめ?」


 こちらの人たちはお米の味を知らないんだよね。もったいないなあ。あの味を知ればやみつきになると思うのだけど。

 

「そういえば、この辺に私の里があると思うのですが……寄ってみてはどうでしょう?」

「そうなの? スローウナの里ってことはエルフの里だよね。行ってみてもいいの? 追い出されたりしない?」


 エルフは排他的というイメージなのだが。


「そんなことはないと思います。隠れ里ではありますが見つけた者を歓迎しますし、なにより私がいますから」

 

 そうか。寄るぐらいならいいか。商いする場所にはなるだろう。

 そんなに商業がメインでもないんだけど。世界を見て回るためのついでなのだ。


「拙者も同行してようござるか?」

「そうします? 教国には当分行きませんけど」

「ようござる。もう教国の勇者はやめるのでござる。この御仁のように優しい魔族もいらっしゃるようなので世界を見て回りたいでござる」


 まさかとは思うが肉をくれたから心変わりしたわけじゃないよね。


「僕達と一緒ですね」

「そうなのでござるか。良ければこれからもいっしょにいたいと思うのでござる」


 まあ、事情を知っている人がいるほうが心強いし。

 

「それにカイト殿の事情も知りたいのでござる」


 まだ話していないしね。


「じゃあー賛成の人?」


 こういうのは関係のある人全員の賛成がほしいよね。


「「「…………」」」

「だめなのでござるか?」

「いないのか?」


 大丈夫。三人とも理由がありそうだ。

 まずスローウナ。


「私はカイト様の奴隷です。私の意見はカイト様の意見ですから」


 そしてカルニカ。


「がう?」


 極めつけのホラリュール。


「どうでもいいよ」


 こいつら……。

 

「じゃあ加入に賛成ということで」

「いいのでござるか、嬉しいでござる」


 ということで侍大名マサムネがパーティに加わった。


「ところでどうして片方の目を瞑っているの?」


 ホラリュールがマサムネに聞いた。

 そういうのはねそんなに無邪気に聞くことじゃないんだよ。人には色々と事情というものがあってだね……。

 《独眼竜》伊達政宗と呼ばれるようになった眼帯は何かの病気で視力を失ったからだと聞いた気がする。噂通りならば。


「ん、これは……拙者、病で視力を失ったのでござるが、幸い片目なので困ることは多くはなかったのでござる。しかし教国の召喚に応じる前に神様に会ったのでござる」


 ここからはマサムネの話を元にイメージした二人の会話。



マサムネ「ここは?」

神「あのね、あなた異世界から呼ばれているんだけどどうする?」

マサムネ「どうするとは? お主は?」

神「私、神様。あなたの世界でもあるでしょう? マリアとかキリストとか仏とか。そんな感じの」

マサムネ「ああ、あるな」

神「そうその神様」

マサムネ「それで神様が何の用?」

神「……もっと敬いなさいよ」

マサムネ「どうせこんな白い世界、夢の中でござる。それなら別にどうしようと拙者の勝手でござる」

神「ふーむ。それなら証拠でも見せちゃおっかなー」

マサムネ「いいぞなんでもやってくれでござる」

神「それならあなたのこの目を治しましょう。そーれ」

マサムネ「うっ。見える見えるぞ。なんと。視界がすごく広がったでござる」

神「そりゃね。単純に見えている目が増えたんだから。それで、どう? 信じる気になった?」

マサムネ「少しぐらいは信用してもようござる。しかしこの枠は何でござるか?」

神「ふふふ。それはね表示枠と言って人や物が詳細にわかるようになったのよ」

マサムネ「つまり真偽がわかると?」

神「そうよ。それには嘘はないけど、自分レベルが相手より低ければ情報量が減るわ」

マサムネ「れべる?」

神「あなたのこれから行く世界はレベルがあるの。こう表示枠を見ると念じてご覧なさい」

マサムネ「むむむ、それでござるか」

神「今与えた目――真眼――の表示枠はあなたしか見えないけれど、それは誰もが見えるからね」

マサムネ「ふむ……これがレベルか……拙者は二十となっているでござる」

神「割と高いわね。まあ高くて困ることはないでしょう」

マサムネ「普通の人はどのぐらいなのでござるか?」

神「庶民の一般人は五ぐらいかな」

マサムネ「最高は?」

神「昔、五百まで行った人がいたかな」

マサムネ「…………」

神「それでね。あなたの呼ばれている世界なんだけど、異世界なんだけど、大きく違うのは魔法があるんだよね」

マサムネ「まほう?」

神「あなたの世界では普通には起こらない超常現象を起こすことよ」

マサムネ「妖術の類でござるか」

神「そうともいうわね」

マサムネ「どうして拙者にそれを教えるのでござるか? 拙者以外にも同じ境遇の人はいるのでござるか?」

神「それはね、あなたがイレギュラーだからよ。本当は魔法をよく知るような人物が選ばれるのだけど、今回は召喚術を間違って発動したのよね。だから選定基準が変わってしまったの。以前は勝手にその世界に送ってもなんとかなるケースが多いけれど、あなたは無理そうだったからね」

マサムネ「むむむ……ちなみに行かないという選択肢は?」

神「ないわね。そろそろ行きなさい。詳しいことは真眼と召喚者に聞くといいわ」



 以上。

 マサムネさんチート持ちだった。

こっち側の話のほうが素早く書けますね……

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