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学校長になりました

 今回の戦争、以後は独立戦役と呼称するのだが、快勝しそれはもう盛大に凱旋。

 盛大に戦勝パーティーを行った。

 貴族らしくない村の集まり的お祭りだった。そうとても庶民的なお祭りだ。大量のお酒と料理があればなんとかなるのだ。

 最後には男どもが雑魚寝で寝落ちしたりした。

 それから公式に戦果報酬を承りました。俺にはくれなかったけれどな。ええ、わかったいましたとも。俺が払う側だからな。ええ、しかたがないんです。

 そしてようやく師匠が帰ってきました。政務中枢の皆さんでお迎えなのだけど。

 なんかいっぱい連れているのですが。

 まさか全員が神獣とかないよね?


「おかえりなさい師匠」

「うむ。神獣、通称ポチを連れて帰ってきたぞ」

「ポチですかの?」

「ワン」


 威厳がない……。

 宰相さんも苦笑いである。


「うん、神獣と言っても名前がないと不便でな。(仮)としてポチに決定した」

「はあ……」

「まだ封印が解除できていないのでよろしく頼む」

「はっ」

「師匠でも解呪できなかったんですか?」


 高レベルの聖騎士なのにね。どれだけ強い呪文をかけられているのだろうか。


「まあ、その呪文は一人ではできないようなものだったから」

「それじゃむりだよな……」

「こちらでお預かりいたします。魔法の得意なものを集めて解呪いたしますので」

「ああ……よろしく頼む」


 師匠は抱えてた白い子犬を宰相さんに預ける。

 ポチもなにか言いたそうな仕草だったが、犬語は誰も話せないので通訳もできない。犬系の獣人さんのにもわからないそうで、犬語と獣人(犬)語はぜんぜん違う言語体系なのだろう。

 詳しいことは言語学者にでも任せてください。

 

「こっちは上手くいったようだな?」

「うん、まあそれは後ほど会議で詳しく説明します」

「そうか……わたしも疲れたからな。今日は休ませてもらおうか」

「それがいいですよ」


 この数日間はずっと敵地にいたのだから、十分な休息が必要だよな。いくら師匠がすごくても疲労はあるのだろう。疲れないと言われたら信じてしまうけれど、そういう訳にはいかないんだな。

 師匠の連れてきた人たちも宿の手配をして、休んでもらう。



 そして翌日。

 朝の会議。

 もうあんまり眠たくない。俺の勉強会もそろそろ落ち着いてきたのだった。勉強ってさ、慣れとかあるんだよ。覚え方というか理解の仕方というかそんな感じのもののコツがわかったのだった。

 そのおかげで結構時間が短縮できるようになったのだ。


「そうか。上手くいったのだな?」

「はい、十分な戦果も上がりました」

「師匠の方も上手くいったのですよね?」

「ああ、連れてきた人たちはどうなっている? 適当に職を与えて欲しいのだが」

「はっ、手配しておきます」


 それについては今、新たな施設を準備中である。

 それは協会である。

 前からあったのだが、かなり形骸化していたのだった。信仰先が神獣だったのだ。帝国に捕まってなお信仰の対象だったのだが、寄付も協会の人間も少なくなっていた。

 それを師匠の案で救護・職業訓練・養護施設に改装されていた。

 神獣を救出した大きな理由がこの信仰だったのだ。この国のほぼ全員が信じる聖獣を師匠が助けることによって国民の支持を得る。どこの骨とも分からない魔王さまに黙ってついてくる人なんぞ多くないからな。しかも魔族を迫害していたヒト種が魔王になったのだ。俺には知らされていないが反乱分子も出現していたのではなかろうか。だから国政をもっと円滑に行うために行ったのだ。

 前でも支持率は低くはなかったのだが、できるだけ高いほうがいいに決まっているのだ。

 解呪ができれば皆の前にお披露目だ。


「ところで、サチカ殿、カイト殿。後宮はどういたしますか?」

「「こうきゅう?」」


 俺と師匠の声が同時にあがった。しかし意味は違う。師匠には後宮のことを知っていたようだけど、俺は知らない。なにそれおいしいもの?


「こ、後宮とは王が子孫を残すための住まいというか……そのようなものです」


 ナイス俺の秘書。さすが。フォローは完璧だね。ちょっと無表情が赤くなっていますがね。とくには関係ないことだ。


「はー……でそれが?」

「お二人で使いますかな?」

「ううう……」


 師匠も赤くなっているじゃないですか。何かの急な病気か? 疲れが溜まっているのかな?


「師匠、どうかしたのですか?」

「ど、どどどどどどうもしないよ。なんにもないっ」

「というか俺達恋人じゃないですよ?」

「「「「「は?」」」」」


 空気が止まった。会議場にいる全員が凍った。なにそう思われていたの?


「た、ったたたたたたた、ただの師弟関係ですっ。それだけですっ」

 

 そうそう。師匠の言うとおり。そりゃいつかは師匠のような綺麗な人とそんな関係になれたらと思いますが。今のところはそのようなことはありません。

 はい……。

 

「……で、ではどちらが使いますかな?」

「えーっと……そこってカイトが今まで勉強したり泊まったりしていたところだな?」

「そうです」

「ならばこの際、学校にしてもらおう。後宮は当面なしだ。私たちは適当な場所でいい」


 俺もそう思っていた。

 今では慣れたけどさ。初日なんかベッドが高級感のあるフワフワで寝られませんでしたよ。

 元一般村人の俺には過ぎたものです。


「俺も簡素な寝床でいいし」

「それはあとで伺いましょう。それで……が、がっこうですか?」

「がっこうというものはなんでございましょう」


 俺もわからん。

 

「物事を学ぶところだが」


 ああ、学園のことね。教国のところにあるらしいよ。魔法学園のことだ。

 といっても平民以下には開放されていないし生徒たちもそこまでの使い手はいないらしい。

 ウチの諜報活動も頑張っているようで、宰相さんに教えてもらった。


「魔法学園……のようなものではなく一般人や子供たちを中心に文字や数字など最低限を教える場所です」


 それから師匠は学習内容や形式を説明していった。師匠が言うところのショウガッコウをするんだって。

 話を聞いただけではよくわからないが子供たちと勉強するところみたいだった。

 俺の勉強の方も落ち着いてきたし教師役とかやらされそうだ。

 あーベンキョ大変だったな……間違ったらバツとして叩かれたり詰られたり笑われたり罵られたり筋トレさせられたり……。

 懐かしい思い出ばかりだな……はあ。


「ということでカイトに学校長をしてもらうな」


 師匠からのありがたいお達しがあった。


「え、ええー、やっぱり……」

「お前がなんにも言わないから決定したぞ」


 他の皆さんもうんうんと頷いている。

 なに?

 俺が聞いていない時を見計らって進めるとは卑怯なり。


「学校長ということは俺は教えなかったり……?」

「しない。教師はカイトだけだからな。困ったことが起こっても自己責任で解決してくれ」


 そんな殺生な。もっと援助してください。というか救助を。


「まあ、それは目標だ。当分はわたしが助言するから安心してくれ」

 

 それなら……安心できないよ。結局二人で運営しているものじゃん。二人でもない1.5人ほどじゃないですかそれ。


「他に避ける人員がいないようなんだ。私に免じて頑張ってくれないだろうか」

「師匠にそんなこと言われたら……やりますよ」

 

 頑張るしかないじゃないですか。

 よし、一丁やってやるか。

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