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★特別な依頼

 有名になりました。

 『手伝いの精霊使い』として。

 あのね、結構な量のお手伝い依頼を行なってきたらいつの間にか呼ばれたのだ。

 うーん、意味はわかるんだけど不名誉なあだ名だよね。たぶん。それからランクはひとつ上がってしまったけれど問題ないよね。

 土木作業も依頼があるのだけど、あいにく僕らには合わない。ひ弱な精霊使いと女性のエルフでは使いものにならないのだ。

 屈強な前衛職の人ならこなすついでに鍛えれるのだろうけどね。僕らはね……。

 風と土の精霊を使って建物の解体はできるのだけど。ほとんどが木の建物なので【ウィンドカッター】で切り崩し土の精霊に地盤を揺らす。簡単だ。

 それをしていたら宮廷魔術師さんが話しに来た。なんでも戦争に参加しないかと。人殺しにも慣れていないので遠慮させてもらった。いや、人を殺すのに慣れても殺したくはないけれど。

 精霊使いは軍で有用なのだ。魔法使いでは応用が利かなく、精霊使いは一人がいるのとは違うのらしい。例えば、陣を作るとき、砦に土の壁を作るのだが、魔法で行うと単なる壁になる。しかし精霊使いが作ると細かくできる。ほりや塹壕も作れたりするし、任意に穴も開けられるのだ。

 その要請をしてきた宮廷魔術師さんはギルドに来てしまったので僕が精霊使いだと公にバレてしまった。

 別に隠してきたわけでもないけれど公にするのも違う。


「今日はどの依頼にしますか?」

「うーん。この子守とかがいいんじゃない?」

「では依頼してきます」


 よく行うのが子守とモノ探し。モノ探しはペットや宝石など。失敗しても大きい違約金は取られないしデメリットもないのだ。討伐系とは違うよなあ。討伐の依頼なら失敗が続くようだと降格もあるのだ。その点お手伝いは存在しない。

 子守ではニホンのお話がとっても好評。お伽話とか適当にアレンジしているけれど割とウケるのだ。こっちの世界は勇者伝説ぐらいしかないみたいだった。

 おかげで、お子さんとその親御さんは僕の評価をかなり高く思っているようだった。いろいろとまけてくれたりするし、道中で会釈するぐらいには。スローウナは子供相手が苦手だったらしい。エルフの里にはスローウナより若い子がいなかって。スローウナでも二十歳にならないぐらいなのだが、長寿であるエルフには子作りに励むことが少ないんだって。いや、この表現は間違い。生理活動の周期が人間より長いらしい。

 とまあ、のんびり生活したいた。

 今日も子守の依頼に精を出しますか。



 そろそろ生き物を殺すことに慣れてきたこの頃。今日もお手伝い依頼を終えてギルドに戻ってきた。

 今日も明日の予約が付いている依頼書をボードで適当なのを探していたら、カウンターのほうで大きい声が聞こえてきた。

 野太い男の声ではなく小さな女の子の声だ。男の声はよくあるのだ。報酬が少ないとかでゴネる奴らはどこにでも湧く。僕がそんなこと言える立場にはいないんだけどね。


「お金払うから、私の宝物あげるからぁ」

「お嬢ちゃん。お父さんかお母さんはいないの?」

「うんん。いない。おねえちゃんを探すいらいお願いします」

「あのね保護者がいないと子供は出せないのよ」


 ギルド員のハルシュが小さな女の子に応対していた。

 

「スイン様、行ってもよろしいですか?」

「うん、僕も行こうかなと思っていたところ」


 女の子に見覚えがあったのだ。どこかで子守をしたのかもしれない。一家族では依頼料を出せないのでいくつかの家庭が合同で依頼するため、預かる人数も多いのである。

 だから、顔はわかっても名前までは思い出せない子もいる。

 その子だと思う。


「どうしたんですか?」

「あらスインさんにスローウナ」

「あ、スイン兄ちゃん。こんにちは」

「うん、こんにちは、元気だった?」

「うん……でも、お姉ちゃんが帰ってこないの。だからここに来たの」

「えっとですね、そんな感じです。この子が依頼を出したいと言いまして」


 この娘、ソーシラから聞くところによると。

 お姉ちゃんのアーラルが仕事に行ったきり帰ってこない。今までも長期間、家を開けることはあったのだが、その時はちゃんとソーシラに伝えてから出かけていた。しかし今回はそんなこともなく一週間も帰ってこないのだった。心配になったソーシラは預けられていた家を飛び出して少ないお小遣いを持ってギルドに来たのだった。


「しかし、子供の依頼は保護者の許可が要ります。ですので……」

「ううう……」


 この場の大人、僕も含めて、全員はソーシラの涙を浮かべた表情に苦い顔をしたのだった。


「スイン様……」


 早くも降参したのがスローウナだった。この世界にもある豚の貯金箱を手に抱え不安げに見上げる少女にはかなわないのだ。

 ちなみに、お金は実体化できる。ステータスバーに表示されているのはクレジットカードやプリペイドカードと同じ認識で良い。データ化されたお金である。しかしそれだけでは実用に合わない事が起こる。一例を上げると、徴税時だ。集めたお金を誰が持っておくかに争いが増える。この世界に銀行やら何やらはないのだ。その代わり外貨もないけれど。

 経済の格差とかどうやって是正しているのだろうね。

 神様の右手だった? 左手? 右腕だったかも? 右耳ってことはないだろうし。忘れたよ。

 そんな神様ぐらいしかわからないことはどうでもいい。わからないものはわからないのだ。

 

「じゃあさ、僕が直接ギルドを介さずにこの子から受けたらいいんだよね」

「ええ、それならば問題ありません」

「いいの、お兄ちゃん?」

「まあ、解決できるかわからないけどね」

「お、お願いしますっ」


 お願いされました。詳しく話を聞くことに。何かお姉さんの見つかるヒントがあるかもしれないからね。暇だったようでハルシュも一緒に聞いている。

 

「ハルシュさん。なにか知りませんか?」

「え、私?」

「ええ、僕はまだこの辺のこと知りませんし。それならギルド員のハルシュさんのほうが色々情報が集まるんじゃないですか?」

「まあ、Fランクの冒険者よりは集まるでしょうね。でも、これといってはないわね」

「そうですか……」

「あ、情報屋紹介しようか?」

「いいんですか。お金とか」

「まあ、本当はCランク以上だけなのですが……今回は特例ということにしましょう。元Cランクがいますし、いいでしょう」

「ほんとですか……お願いします」


 これで解決の道筋がついた。

 紹介状を明日書いてもらう約束をして、今日のところは宿に帰る。時間も遅いしソーシラも連れて行く。





ありきたりの展開かもしれませんね……。

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