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宣言者になりました

展開早すぎですかね……。


 とまあ俺は戦場の最前線に来ている。開けた平野だ。

 あの会議から三日たった今日である。国境で帝国軍と相対している。

 師匠の作戦はこうだ。

 撤退しながらできるだけ時間を稼ぐ。その間に師匠たちが人質を救出するのだった。

 というわけで、最前線で騎乗の上にいるだ。

 なにするって?

 もちろん。


「我はこの国を治める魔王だ。もうお前らの支配は受けない。この地を乱すなのならば我を倒してからにしろっ」


 宣言するためだ。

 俺のこの言葉だが俺が考えたわけではない。もうねそんな言葉を考えるのはね難しいんだよ。ボツを何回食らったか。秘書にも師匠にも呆れられた。

 ということで、考えてもらった独立宣言だった。一応のため手のひらにカンニング用のメモがあったりする。

 大変なんですよ。作戦を覚えておくだけでも、元普通の農民には。

 この宣言を受け取った敵側は切れているようだ。主に貴族さんたちだけだが。一般兵はどうする?みたいな。

 

「と、突撃ーやつらを殲滅せよっ」


 貴族どもが叫ぶので帝国兵士たちが突撃してきた。

 こっちは一応砦を築いている。あんまり強く作ったわけではなくて木でバリヤードを作ったぐらいなのだけどね。

 いつでも撤退できるようにしてあるのだ。というか撤退用の罠も作っている。

 だってね、兵力差が激しいのだ。四千対一万二千は勝負にならないよ。

 でもそれは国力でも完全に負けているのだ。これからも当分これが覆ることはないだろうから頑張るしかないのだが。

 国力で比べると約八千対約八万なのだ。十倍である。

 もうね、頑張るとかそういうものではないよな。どうやって挽回するのだろうか。作戦でどうにかなるのだろうか。

 

「応戦せよ」


 こちらも戦闘態勢に、陣から出ないで抜剣。衝突に備え盾を掲げる。

 接敵したらしい。


「魔王さま、危険です。お下がりください」

「わかった……けど俺、魔王じゃないよ?」

「敵の誰が聞いているかわかりませぬ。当分はカイト様が魔王ということになるのでしょう?」

「まあ、そうだよな。下がるわ。後頼むぞ」

「はっ。おまかせあれ」


 俺は下がってしまう。

 うーん、作戦通りなのだが、負けているのは嫌だね。

 まだ衝突してばかりで入り乱れているわけではなく、重戦士たちが押さえ込んでいる。訓練の賜だな。

 

「これだけ戦えてるのにどうして負けていんだ?」

「あーえー、それは……」


 どうした将軍参謀。なにか気がひけることがあるのか。


「われわれは……団体行動が難しいのです」

「え?」

「だから、団体行動を訓練していなかったのです」

「ど、どうやって戦っていたんだ?」

「ええ、まあ……突撃と」


 突っ込んだだけだったらしい。なにしてんの。


「言い訳させてもらいますと、乱戦になると勝てるので」

「魔族は単体が強いからそうなのだろうけど、それはないわ」

「はい、サチカ様も呆れ返っておりました」


 ですよねー。


「サチカ様にご教授してもらい集団戦の大切さが理解出来ましたので安心してくだされ」

「ちなみに、師匠はなんて言ってた?」

「人は弱いから勝つためには作戦や数で上回るしかないと。基礎能力で勝っているこちらも同等の戦術を身につけることが出来れば敵はいないと仰っていました」

「うんうん、さすが師匠。いいこと言う」

「はい」


「そろそろ撤退の頃合いでしょう。合図を打ち上げます」

 

 この防衛ラインは捨てていくためのラインだ。

 師匠たち救出部隊が帝都で活動できる時間を作るための戦いである。そうでなきゃ、こんな見晴らしの良い所で野戦なんかするわけがない。

 負けるに決まっているのだ。

 ここの砦は第一防衛ラインである。絶対最終防衛ラインははるか後方、首都の前である。それまでに砦は十個以上建設している。魔法の力は偉大だ。

 【ファイヤーボール】を上空に打ち上げる。だいたいの魔法が心得がある人は使用可能な魔法である【ファイヤーボール】が空中で弾ける。古くから使い果たした連絡方法である。

 

「ひけーひけー」


 各部隊の隊長が声を張り上げる。


「敵は恐れをなしたぞ。進めー。皆殺しだ」


 向こうのほうで騎馬兵に囲まれた華美な太っちょが喚いている。

 俺達はさっさと遁走するか。

 できるだけ被害がないように祈っておくぐらいしか俺にはできない。生き残るかどうかは運と個人の力量である。俺ならすぐに切られてしまいそうだが、そこは魔族の人たち。全体的に能力が高いからできるらしい。実際はどうかわからないけれど。本人たちがいうからには大丈夫らしい。

 普通なら被害が大きくなる撤退戦はこれからも数回行うからな。慣れていってもらうしかない。

 

「集合」


 一つの丘を越したところに構えていた第二の砦に集まる。


「被害・負傷者は?」

「死亡者はいません。負傷者は……まあ、動けないものはいません」

「よし、防衛準備。監視を増やせ」


 帝国軍はこのまま突撃してくる。一度、狼系獣人で構成されている別働隊が突撃して勢いを削いでいたので敵も俺達の作った陣で休息をとっている。

 突撃隊は獣人なので素早いし引っ掻き回すのが得意だ。対人戦も経験豊富だし、何より馬に載っていない。そのため丘を囲んでいる森から静かに接敵できた。獣に気配を消す技術は必須だからな。

 彼らは既に掻き回すだけ掻き回して帰還している。こちらも被害は僅かなものだけ。みんな優秀だ。

 そして、これは予想通り。

 このためにいろいろ仕掛けてきた。俺達の使っていた砦にな。

 例えば……ドゴアン。

 敵中で爆発した。トラップ系の魔法やそのままトラップとたくさん用意していたのだ。

 これですぐに攻撃を受けることはない。向こうも負傷者をたくさん抱えることになったからな。

 トラップとして作ったのは落とし穴と爆発物だ。落とし穴には針が用意してあったり、爆発するようにセットされた魔法をつけたものもある。開けると爆発するような箱も置いてきた。

 バコーン。ドコーン。ちょくちょく引っかかっているようである。そろそろ学習するぐらいだと思うけど、なかなか時間がかけてくれる。師匠の作戦大ハマリだ。

 

「警戒を厳にして今日は就寝」


 夜間の襲撃を気にするだけにして今日のところはお休み。そろそろ日も暮れるからな。

 夜は獣人のアドバンテージが高い。夜目が効きすぎているからな。だからヒト族は夜間襲撃を避けるだろう。代わりに警戒を厳しくしているだろう。

 こっちからは攻撃しないけどな。ふふふ。

 するわけ無いじゃん。こちらの狙いは時間稼ぎだよ。できるだけ兵力を減らさないように。

 いやー暇なんだよね。話す人が少ないんだよ。知り合いが少ないのだ。

 警戒は任せて幕舎で寝るとしようか。

 師匠は上手く行っているかな。つーかまだ納得できねえ。


「どうして俺を置いって行ったっ」


 俺、ニンジャなのだが。潜入は俺の専売特許じゃないの。

 レベルが低いのは認めよう……。

 いや、認めない。認めたら置いて行かれるのが当たり前になるじゃん。俺がレベル上げをする時間がなかっただけなんだ。俺の怠慢などではない。

 俺の時間の大半を奪った数術はどこで使うよ?

 師匠に教えられた『れんりつほうていしき』とかどこで使うんだ。数字に星や丸の記号を使う意味がわからん。

 三角形の大きさを図るのは面積を測ることができるので有用だとは思うのだが、あれはねえ。

 語学はまあ使えるようになると便利というか必要だとは思うんだけど、数術はあんまり実感したことないね。買い物も言っていないし。それぐらいなら元々計算できたけどね。

 

「今から師匠のところに行くのも不可能だし……寝るか」 

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