小さな救世主になりました
オンライン小説の書き方なんてよくわかっていない未熟者の作品です。温かい目で見てくださると幸いです。
忙しいので投稿時期が開くことが多いと思いますがよろしくお願いします。
俺たちがいろいろと探索していると。
「きゃー助けて」
との声がするのでそちらの方へ。助けてとのことなので、鞘から剣を引きぬいておく。戦闘準備は必要だろう。
声の先にはソルジャーアントに囲まれた美少女が。胸が大きい。これは助けて……うふふ。
「お兄ちゃん……」
「なんだ? 妹よ」
「鼻の下伸びてるよ」
「そ、そんなことないぞ。……まあ、ミーナ」
「わかってるよ。炎の魔法だよね」
さすが俺の妹。意思疎通は完璧である。
その後の救出方法も簡単に相談しておく。
ミーナの持ちうる最上級魔法を打ち出し、囲むアリ五匹のうちの一匹を討伐し、美女の元へ。
「あ、ありがとう」
「まだだ、それは逃げてから言おうよ」
「う、うん……」
その美女はかなり上等そうな武具を装備しているんですけど。その割に剣を構えるのがたどたどしい。
うーん、親の七光なのだろうか。
「もう一発妹が魔法をかますから、それに乗じて逃げるからな」
「わかった……」
ジリジリと時が過ぎていく。アリ共もなかなか攻めてこない。
「『ファイヤレイン』」
ミーナの範囲魔法がアリに振りかかる。範囲内にいる俺たちにもダメージがあるんですけど。
もっといい魔法ないの。
やめて熱い。痛い。
それでもここまで来たら大丈夫だろう。範囲魔法でダメージが分散されており殲滅にはいたらなかったことだろう。
それに俺もダメージを食らってHPが半分ぐらいまで減っている。美少女さんはマジ、一割も減っていないと言う。パーティ登録してもらって見せてもらっても本当だった。自分のはともかく相手のHPが登録しないと見えないというのは不便だよな。
登録してもらったことにより名前も知ることができた。
「大丈夫ですか、サ、チカさん……?」
「うん……えっと、カ、イトくん……?」
「カイトでいいですよ」
「わたしもサチカってよんでいいよ」
「あたしミーナっていいます」
自己紹介らしきことも済んで。
「「ってええええええええええええええええ」」
俺とミーナが何に驚いたかというと、サチカさんのレベルの高さに。
「なんですか、このレベル83は」
「どうやったら80代まで上がるんですか」
ちなみに俺は5。ミーナは3。俺達の村で一番高い人でも23。もう、俺から見たら勇者・神様レベルだった。
「えっと、地道に……かな」
そんなの地道に上がるわけがない。できたら全員が80レベルだよ。
ドラゴンでも倒してきたのかな。魔王討伐した勇者だったりして。
まあそんな人がここでピンチに陥るわけがないのだけどさ。
剣握ったことのないようだったし。うーん怪しい。ずるしてるのかな。どうやってるか皆目分からないが。
そんな疑いが俺の顔に出たようで。
「えっと、あの……わたし記憶があんまりなくて、困ってる」
「そうなんですか。それは仕方がないですね」
そうか。それは剣の扱いとか慣れてなさそうだね。
ぐぐぐぐうー。
「あ、あの今日はまだ何もたべてないので……」
「とりあえず、うちに来ますか?」
「……お願いします」
この世界、大帝国が世界の半分を手中に修めて数十年。俺の村はほそぼそとそれなりの生活を立てていた。
俺は子供の頃はイタズラっ子で村中に名をはせていたが、父親をなくしてからは母に楽させてやろうと真面目に働いていた。
暇な時間にはレベル上げに勤しんでいたりもするけど、それは村のためだから。モンスターが村を襲うので狩っていかなければならない。
「かーさん、帰ったよ」
「おかえりカイト。あら、お客さん?」
「うん、村のはずれで記憶無くしたみたいだから連れてきた」
「サチカといいます、お世話になります」
「あらあらこちらこそ、汚いところですけど、それでも良ければ……」
「そんなことないでよ。ありがとうございます」
母は病気で床に臥せがち……なわけではなく、とっても元気。畑仕事とかもしているし。
サチカにも畑仕事を手伝ってもらいながら、数日を過ごした。その間、世界の情勢とか、常識とかダラダラと教えてあげていた。あと、剣術も。レベルの高いおかげでみるみる上達していって、レベルに会う戦闘力を持つようになった。才能もあったんだろうね。
サチカは高レベルの聖騎士。一般に白魔法と呼ばれる魔法が使える剣士。剣は聖属性を持つセイントセイバーだった。希少性で言えばサチカ自身と同じぐらいの剣。
聖騎士というのはジョブ。ジョブの有用性は明白。スキルによる補助が得られ、技も習得ができるのだ。
俺はまだ一般人。村人。ジョブについていない。スキルは何でも取れるけれど、ある程度からはうまくならなくなる。
その点ジョブに付くと特定のレベルまで上がると上級スキルに進化したりするそうな。有り難みはわからないよ。上手くなった基準がないから。あってないようなものなのでどうでもいいが、あって困ることでもないのだ。
ないと困るのがジョブ。これは技が習得できる種類に関わるので。
俺の持つスキルは《剣術》《投擲》《隠密》《蹴脚》《打撃》《尾行》《料理》《索敵》。レンジャー的スキルが充実しているのは、悪戯していたおかげである。
ジョブを得るためには巨大都市にある専門の神殿で神の祝福を得なければならない。この辺で言うと帝都になる。一般人からの転職では、なりたいジョブを知っていればどんな上位ジョブでもなることができるが、下位ジョブに戻ることはできない。逆に下位ジョブからは多くの上位ジョブに転職できるため、自分に合うジョブが見つからない場合、下位ジョブから始めるほうが良い。多くの人はこうする。
サチカのスキルも充実していた。《聖剣士》《魔力》《白魔法》《詠唱短縮》《ステップ》である。
スキル《聖剣士》は一部の武器を除いて装備が可能にする。暗黒剣とかが不可らしい。
妹のミーナは《魔力》《魔法》《魔力増力》ぐらいかな。一般人にそんなにたくさん求めないで。俺が特殊な例だから。
これらがサチカの覚えている知識と俺の知る情報のまとめだ。
「そうそう。そんな感じで腰を入れて剣は振るうんだ」
もう下心なんてありません。レベル差がはっきりしてるので比喩ではなく殺される。
「ふっ、ふっ、ふっ……」
「じゃあ、俺と模擬戦ね。当たらないぐらいで寸止すること」
「うん…………はっ」
「し、師匠と呼ばせてくださいっ」
途中まで俺が剣術の師匠を務めていたのだけど、一転、俺が弟子になった。レベルが高いから身体の自由も聞くし、上達も早い。
あと、サチカのモンスターやジョブについての知識は忘却されていなかったようで、十分に残っていた。
「師匠、また、旅にでるんですよね。俺も連れて行ってください」
「ま、まあ……落ち着いたらな」
「俺もジョブになりますから。絶対ですよ、絶対ですからね」
「わ、わかった。お母さんが許可したらな」
「ありがとうございます」
「ええー。お兄ちゃん出て行っちゃうの。だったらあたしも行く」
「はいはい、お前はやめとけ」
「いーやーだー。あたしも行くからね」
妹がうるさい。
「ところで、カイトはなんのジョブにつもりなのだ?」
「えーっと……何がいいでしょうかね?」
「あーレンジャー系がいいとは思うが、上位ジョブでいうと……ニンジャはどうだろうか」
「ニンジャ、ですか?」
初めて聞いた。知らなければなれないだろう職種である。
「うん。レンジャーの上位ジョブで、《剣術》と《投擲》スキルが必要な職業だな。ユニークスキルで《忍術》も習得できるな」
「おおー《忍術》ですか」
「知っているのか?」
「知りません」
だってニンジャも知らなかった俺である。ユニークスキルを知っているわけがない。
「はあ……《忍術》は魔法の一種で雷や炎技が習得できたり、影分身を使えたりするな」
「おおー影分身。それは聞いたことがあります。俺、決めました。ニンジャになります」
「じゃあじゃあ、あたしはウイザードになる」
妹よ、俺に対抗しようとするな。
ウイザード。ほぼすべての魔法を習得できる魔法職。これも上位ジョブなのだが、以前この村にやってきた魔法使いがこの職業だったのだ。ロリコンだった魔法使いは妹に好感度のため、魔法を伝授したのだ。そのおかげでミーナは魔法を習得している。一般人に合わない高レベル魔法までも。ジョブなしだから威力が減衰しているのだけど。
この時には既に村全体にサチカの高レベルの話は広がっていて、帝都まで噂になっているそうだ。
帝都はこの村の一番近い町でもある。
「あなたがサチカ殿ですな。ちょっと帝都まで来ていただけないでしょうか」
そういう男がある日やって来た。
明らかに貴族に仕える使用人だった。
「話はここで聞きましょう」
このサチカの判断は偉い。帝都に行くと奴隷にされたりするらしいのだ。実際エルフやドワーフの奴隷も少なくない。それぐらい治安も悪化しているらしい。用事がないときは、できるだけ帝国に近づかないというのが、俺達一般人の常識だ。
「それでは、少しだけ話をさせていただきます。私の主がある病気にかかってしまわれました。その治療薬に必要な薬草を取っていただきたいのです。しかし、その薬草は北の洞窟の奥にしかなく、しかもドラゴンが守っていると言われています。そこで、サチカ殿のお力で採取してきていただきたいのです」
「いわゆるクエストですね」
俺が口を挿む。
「あなたは?」
「わ、わたしのパーティメンバーです」
サチカが言ってくれた。正式に認めてくれるんですね。ありがとうございます。
「そうですか」
「そうです。依頼となるんでしたら、報酬の方はどうなるんですか?」
「そうですね……1万Gでどうですか?」
「カイト安い?」
「安すぎるわ。そんなのじゃドラゴン有りの依頼じゃないでしょう。少なくて十万Gでしょう」
1万Gって贅沢した生活一日分ぐらいだよ。
「では……前金で十万Gにしましょう。納品できましたらもう十万を払うことでよろしいですか」
あれ? もっとふっかければよかったのかな……?
「お金は……?」
「もうそちらに渡したはずですが」
怪訝な顔をされてしまった。
「師匠。お金はステータス表示に書かれてありますよ。ログも残りますし」
「ほんとだ。確かにいただきました。……現金持ち歩かなくて便利ね。キャッシュみたい」
サチカがよくわからないことを言っていた。
薬草は帝都の冒険者ギルドに納品すれば良いことを聞き、契約書を交わす。
「ええ、薬草の見本はありますか?」
「こちらに。もらって構いません。では、よろしくお願いします」
と淡白に去っていってしまった。
「さて、行きましょうか師匠」
「まてまて。お母さんに言ってこないと」
「それもそうですね」
まず、目指すのは北の帝都。ジョブを得たいと思う。それからさらに北の洞窟。
VSドラゴンかぁ。腕がなるぜ。……師匠の。俺はコソコソすると思うけど。