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母の昔話
当時まだ5歳だった息子を無理矢理座らせ、母は語る。
「パパがギルドマスターになった2年後、この都ではある怪盗が有名になってたの。
悪い貴族しか狙わず、その不正を暴き出し、そこから盗んだお金とかを貧しい人に分け与える、正義の味方。
当然庶民には大人気だったわ。
でも変装が上手で性別も顔も不明、わかるのは怪盗ブルームーンと名乗っていることだけ。
王国騎士団も捕まえられず、とうとう国1番のギルドに依頼があったの。
パパはあらゆるツテをつかって調査を進め、とうとうブルームーンを追いつめた。でも、パパは捕まえなかったの。
それからすぐに、ブルームーンは姿を消した。パパのギルドが国と協力して貴族の一斉捜査をして、不正が暴かれ始めたから。
それから一年後、捜査に一区切りついて落ち着いた頃。パパは青い瞳の女と結婚したの。婚約指輪はブルームーンストーン。
もうわかったでしょ?」
母の話はその後1時間続いたが、あとは全て「若い頃のパパも今と変わらずかっこ良かったのよー。」という惚気だった。