頼み
私「手伝ってほしいんだ。できれば誰にも手を借りずに自分ひとりの力でやり遂げたかったんだけど、予定が狂いすぎて一人じゃ修正しきれないんだ。」
風「いいだろう。私としては最初から手伝いたくて仕方がなかったのだが。」
私「ありがとう。契約のこともちゃんと考えるから。」
風「ああ。そしてクロードよ。今夜の襲撃の噂は真だ。気を抜かぬほうが良い。」
私「やっぱりか。母さんの女の勘は当たるからな。」
襲撃のうわさが本当なら、準備に不備があってはならない。
黒幕までは捕まえられなくても襲撃犯は一人も逃さない。
舞踏会の時間は着々と近づいていた。
私は風の彼と舞踏会の会場に忍びこんだ。彼は精霊だから私以外には見えないだろう。
私も隅のほうで目立たないように不自然でないくらいに気配を消す。
いるかいないかわからない、見たとしても記憶に残らない、靄がかかったように幻のように。
これは母から教わった技だ。ブルームーンはこれで正体を隠し逃げ続けた。
習得するのは苦労したが、痕跡を残さないのに一番いい手だ。
魔法を使って姿を隠せばなんらかの痕跡が残ってしまうため、
見る人が見ればわかってしまう場合がある。
空気と同化しながらひたすら人間観察をして、時を待つ。
敵の狙いは間違いなく王族だろう。陛下が現れた時か挨拶のときが勝負。
私はひたすら待っていた。




