空気の入れ替え
男「随分と久しく呼んでくれなかったではないか?私は寂しかったぞ。もう少しで拗ねて自然災害でも起こしてやろうかと思うくらいには。」
私「それはやめれ。呼ばれなくてもどうせずっと見るか聞くかしていたんだろう?」
男「まあ私や眷属たちはどこにでもいるからな。それにしてもこの部屋は空気が悪い。少し風を通そうか。」
男がそういった瞬間、さっきまで埃っぽかった空気が窓から入ってきた風と入れ替わるかのように変わった。
そうこの男は以前にも出てきた、私が生まれた時からいつの間にか気づくと部屋にいる超絶美形の風の精霊さんだ。
生まれてからずっとそばにいるこの男は前世の記憶が邪魔をして、こちらの言葉や常識、性転換して男になってしまったことをなかなか受け入れられなかったときによく相談に乗ってくれたりした。母のスパルタ教育が始まったころから精霊魔法を教えてくれて一緒に修行もした。たぶんいろんな意味で私の一番の理解者なのである。
私「それに久しく呼んでくれないって、たった二・三日のことだろう?今日の準備で忙しかったんだ。」
男「たった二・三日だと・・・?私はずっといつ呼んでくれるのかと待っていたのに。本気で拗ねるぞ?」
私「どうせ近くにいると思ってたし名前知らないのにどう呼べばいいのさ?勝手に出てくればいいじゃん。」
男「名前を教えたら契約になってしまうだろうが!私は早く契約したいのにお前の準備が整うのを待っているのだぞ?そんなこと言うなら契約するまで片時も離れずにずっといるからな。」
私「ヘイヘイ。ごめんね?」
風はどこにでもいるから彼はいろんなことを教えてくれる。精霊は誰にでも見えるわけじゃない。
ただ精霊は自由気ままで、たとえ精霊を見ることができる加護持ちでも契約に応じてくれることはごく稀であり、一人のもとにとどまり、なおかつ自ら契約を持ちかけるなどということはまずない。
契約者は国に特別な称号を与えられ担ぎ上げられ将来を保証されるが、自由はあまりなく、ぶっちゃけ買い殺されるようなものだと思う。
私は目立ちたくないし縛られたくないし、何よりも彼を自分縛りつけて買い殺すようなまねは絶対したくない。
だから契約するならある程度力をつけてからにしたかったんだけどな。
とりあえず今日無事に帰れたら考えることにしようと思う。




