鈍さ
………なんだろう、この沈黙は。めっちゃガン見されている気がする、視線を痛いくらい感じる気がする。
私「あのう…。」
王子「首の血を拭け。」
私「いや、でも汚れてしまいます。」
王子「いいから早く拭け。」
私「……はい、すみません。」
王子「……。」
果てしなく気まずい雰囲気のなか無言で血をぬぐうと、ハンカチは予想以上に血で汚れてしまった。
私「洗ってお返しします。」
王子「お前本当にこの城の者か?」
私「ぇえ⁉」
王子「見知らぬ顔だ。そしてなによりも、王族にハンカチを洗って返すとか言う者を初めて見た。」
や、やらかしたーー!!!
私「あ、あの、えっとですね……そう、私は見習いの新人の下っ端なので王族の方のおられる場所には行きません。ハンカチは………本当に申し訳ございません。」
とりあえず下っ端の下っ端で、しかも新人だから右も左もわかんないフリしてごまかすしかない!!
王子「……もういい。以後気をつけろ。」
ご、ごまかされたー!!
母仕込みの演技力か、ただ王子が鈍かったのかわからないが、とりあえず良しとすることにした。
王子「医務室に行かなくて良いのか?」
私「大丈夫です。」
そう、治癒魔法は普通の人は使えない。才能のある人が、きちんと勉強して人体についてある程度の知識をもたなければ治癒魔法は出来ないのだ。
よって、この世界で治癒魔法の使える人は癒者と呼ばれる貴重な存在なのだ。
ちなみに、前世の知識がある私はある程度使える。なんてチートだろう。




