それぞれ
素早くその場を立ち去って、母に教えてもらった隠し部屋に早足で向かう。柱の陰にある入口は、壁の小さな穴に鍵となる石をはめ込む仕掛けになっている。その石を何故母が持っていたのかは謎だが、おそらく若気の至りのひとつだろう。
隠し扉から入ると、なかはしばらく使われていないはずなのにやたら綺麗だった。
とりあえずスカートのすそを捲って足に取り付けてあるガーターベルトから荷物を取り出そうとすると、背後に気配を感じた。
その頃、オーシャン家では……。
兄「ただいまー!」
母「あら⁉そのまま城に向かうんじゃなかったの?」
兄「クロードに会ってから行こうと思って。最近拗ねて全然かまってくれないから…。まぁ、拗ねてるところも可愛いんだけど。ところでクロードは?」
母「…今日は、マリアおばさんの家に預かってもらっているの。クロード1人じゃ心配だから。」
兄「そうなんだ。それなら安心だな。じゃあ行く途中にちょっと様子を見に行こうかな。」
母「えぇ⁈クロードなら大丈夫よ!早く行きましょう、遅れたら大変!」
兄「でもまだ父さんが帰ってきてないよ。」
母「そ、それじゃあパパが帰ってきたらすぐに出発よ!!」
兄「じゃあ、父さんが帰ってくるまでクロードの様子を見に行ってくるよ。」
母「いや、そん『ただいまー!』パパが帰ってきたわ!行く準備してすぐに出発よ!」
兄「わかった。クロードにおやすみって言いたかったのに…。」
母「あなたー、おかえりなさい。すぐに行くわよー!」
父「わかったー。ところでクロードは?」
母「……マリアおばさんの家に預かってもらっているの。」
父「じゃあ行く途中に会ってから行こう。」
母「会わなくていいから、早く行くわよ!遅刻でもしたら大変!」
父「おやすみって言いたかったのに…。」
母「なんでうちの男たちは、同じこと言うのかしら?さぁ二人とも行くわよ!」
三人は出発した。




