第8夜
吐く! 砂糖吐く!!
作者本人が言っているのだから間違いありません。
もう一個別に書いているほうが若干シリアス気味なのでその分こちらで発散です。
やっぱり書くならベタ甘恋愛だよね☆
その日の放課後、私は昨日と同じメンバーと並んで帰り道を歩きながら、今日の出来事について愚痴っていた。
「それでね、あの後予習しようと思って教科書眺めてたら寝ちゃって……結局大地先生が入ってくるまで気がつかなくて起こされた……」
「お前教科書読んで寝るタイプか! ハマりすぎてて笑える!」
「ちょっと、陽ちゃんに大ちゃん、笑いすぎ!」
私が噛みついているのは陽ちゃんと大ちゃんの2人だけだが、ゆかりちゃんと凜君も遠慮容赦なくクスクスと笑っている。まぁ、私もそれ狙ってたから気にしないけどね。むしろ一緒に笑ってる。
「もしかして、美月ちゃんは勉強苦手な人?」
「うぅ、その通りです。ここに入れたのもびっくりするくらい……」
「何だ、じゃあ俺と一緒だな!」
「いや、いくらなんでもお前と一緒にしたら美月が可哀想だ」
大ちゃんの言葉に陽ちゃんが遠慮容赦なく突っ込む。その横では凜君がやれやれ、とでも言うようにため息をついている。大ちゃんの成績ってそんなに悪いんだろうか?
「うわぁ、そんなこと言われると来週のテスト心配になってきた……」
「私もだぁ。入試のときと一緒って言われてもそんなのもう頭から抜けちゃってるよ……」
大ちゃんと2人仲良く頭を抱える。今日はもう金曜日だから、テストまで実質あと3日だ。
「ちょ、そんなに? 大ちゃんはともかく美月ちゃんまでそんな子だとは思ってなかったわ」
「いいなぁ、ゆかりちゃんは余裕そうで。凜君は……言わなくてもよさそう」
「ちょ、ちょっと待て。なぜそこに俺が入ってない?」
「え、だって陽ちゃんはこの2人に比べてあんまり……」
だって、陽ちゃんって結構バスケバカだったみたいだし、この性格と勉強ってあんまり結びつかない。せいぜい私と同じくらいかと……。
「あら、美月ちゃん。こう見えても陽ちゃんは北中で結構成績良かったのよ。このメンバーでは凜ちゃんとあたしの次くらいに。学年で言うと……30番くらい?」
「ゆかり~、そこまでバラさなくも……。恥ずかしいだろ」
陽ちゃんが照れてる……、って、突っ込むところはそこじゃなくて! 陽ちゃんって運動もできるのに勉強もできるんだ! 私とは大違いだなぁ……。
「ねぇ、勉強ってどうやったらできるようになるのかな?」
「あ、それ、俺も聞きたかった。万年最下位争いの俺にも教えてくれよ」
あ~、やっぱり大ちゃんって最下位争ってたんだ。よくそれでうちの高校入れたね? 逆に尊敬です。
「そうね……。よし。みんな土曜日空いてる? あたしんちで勉強会開くわよ! 美月ちゃんももし暇だったらおいで。専属教師が見てくれるから」
そう言って少しだけ意地悪そうにゆかりちゃんが笑った。専属教師って、大地先生のことかな? ゆかりちゃんのその顔でなんとなく察せられた。
「お、大地先生が見てくれんの!? よっしゃ、絶対行く!」
「久々に大地さんが見てくれるのか。じゃ、僕も行こうかな」
ん? 大地先生って何気に人気? 勉強がとてもよくできそうな凜君までもが楽しみにすると言うのだから相当なものだろう。
「俺、大地さんのおかげでこの高校入れたようなもんだしな……」
「そうねぇ、あんたが大兄に1番迷惑かけてたもんねぇ」
ゆかりちゃんのその一言でまたもや喧嘩勃発。しかし私にはもうそれがただのじゃれあいにしか見えないのでさらりと無視する。
そんな私に凜君がこそっと教えてくれた。
「僕たち、受験勉強するときにみんな大地さんに教わってたんだよ。大地さん、教えるの上手だし。1番危なかった大知だから、大地さんもつきっきりで勉強見てたな」
「あはは、っぽいね」
「そういや凜も自分の勉強あるのに大知の勉強見てやってたよな」
「まあね。僕もみんなで同じ高校に行きたかったし」
お、何気に凜君の仲間思いなところ、発見か? しっかし、あの1番ピリピリする受験で他人の勉強まで見る余裕のある凜君……恐るべし。私は絶対に見てもらう側だな。
「ったく、勉強会するんでしょ。美月も困ってんだから早く予定決めちゃわないと」
凜君の仲裁でやっとゆかりちゃんと大ちゃんの言い争い(じゃれあい)が終わった。ホントに仲いいな、この2人は。ここまでくると逆に羨ましい。
「それもそうね。じゃあ、確か陽ちゃんは美月ちゃんと家近いのよね? 陽ちゃんはあたしんち知ってるはずだから美月ちゃん連れてきて。時間は午後2時から! 時間厳守よ!」
そう言って、いつの間にか駅の前まで来ていたので、そのまま凜君と大ちゃんを引きつれて立ち去っていくゆかりちゃん。もう、ホントに男らしい人です。
ゆかりちゃんの後ろ姿を見送った後、陽ちゃんと私は顔を見合わせて笑った。
「というわけで、時間厳守らしいので、1時半に迎えに行くよ」
「え、迎えに来てもらうなんていいよ。大変でしょ?」
「どこが大変なんだよ。家すぐ近くなのに。駅に向かう途中みたいなもんだし、気にすることねーよ」
「そう? じゃ、お言葉に甘えて……」
うわあ、なんか恋人同士みたいな会話だなぁ……。なんてことを考えていたら、ホントに恥ずかしくなってきた。内容的にはただ勉強会に行くだけなのに!
「ん、どうした、美月。顔赤いぞ。熱あるなら明日行くのやめとくか?」
「あ、いや、別に熱とか無いから気にしないで! じゃ、また明日!」
「また明日って、同じ電車だろうが」
うわぁ、私のバカ! 何でこのくらいでテンパってるのよ!
それから少し気まずい雰囲気(陽ちゃんは何故か機嫌よさそうだったけど)のまま電車に揺られて帰る放課後でした。ホント、今日1日ついてない。




