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第19夜

お兄ちゃんのお誕生日編はこれで終了。今回、地味に長いです。

「みんな、飲み物はいきわたったわね。それじゃ、大兄、誕生日おめでとう!!」

「「「「おめでとうございます!」」」」


 ゆかりちゃんの音頭で私たちも一斉にお祝いの言葉を送る。遠峰先生は少し照れくさそうに笑いながら、ありがとう、と応えた。


「今年から美月ちゃんも参加してくれることになったから、今回は特別気合い入れて作ったのよ。思う存分食べていって」

「しかし、相変わらずゆかりの料理はすごいよな」

「じゃ、遠慮なくいただきます!!」


 そう言って真っ先に料理に手を伸ばしたのは大ちゃんだ。その手をゆかりちゃんがぺしっとはたく。


「あんたね。主役を差し置いて真っ先に手を出すとはいい度胸じゃない」

「え、だってゆかり、遠慮なく食べてって……、すいませんでした!!」


 うん。今のは大ちゃんが悪い。今回の主役は遠峰先生なんだから、それよりも先に手を出すのは良くないと思います。


「ということは、俺がはやく手つけないとお前らが食えないのか」


 遠峰先生が苦笑しながら唐揚げに箸をのばす。ゆかりちゃんはドヤ顔しながらその様子を見守っている。


「ん。うまい。今年はさらに腕を上げたな、ゆかり。毎年ありがとうな」

「当り前でしょ。さ、あんたたちも食べていいわよ」

「「っしゃあ!!」」


 ゆかりちゃんのお許しが出たので、意気揚々と料理に箸をのばす大ちゃんと陽ちゃん。……これは私も早く食べないと私の分が無くなる!


 私は若干慌てながらさっき遠峰先生も食べていた唐揚げをつまんで、口の中に放り込んだ。もぐもぐ。ん! これは!!


「ひゅひゃりひゃん、ぢょうしよう、こりぇ。しゅぎょきゅ……」

「ああ、分かったから口の中のもの飲み込んでから話そうね」


 私はゆかりちゃんに手渡されたお水を飲んで、一息ついてから口を開いた。


「ゆかりちゃんどうしようこれすごくおいしい」

「慌てなくていいからね。まだいっぱいあるから。で、あたしがどうしたって?」

「これ、すごくおいしい!!」

「でしょ? あたしの自信作よ。まだいっぱいあるからたくさん食べてね♪」


 私はゆかりちゃんの料理を心ゆくまで楽しんだ。そこでふと気がつく。……カロリー、やばくね?


「ゆ、ゆかりちゃん」

「今度は一体どうしたのかな」

「私、すごいことに気がついちゃった」

「すごいこと?」


 私の真剣な表情に、何事かと男性陣も耳を澄ませている。私は少し緊張しながら続きを口にする。


「ゆかりちゃんの料理がおいしすぎて、私、太っちゃうかも」

「………………」


 一瞬、部屋が静まりかえる。私はすごく緊張した面持ちでみんなの反応を待つ。そして次の瞬間、部屋に爆笑の渦が巻き起こる。あ、あれ? 私何か変なこと言った?


「真剣な顔して何言うのかと思ったら、太るって! ブフフ」

「美月ちゃんはもっと太ったほうがいいくらいよ! こうなったら徹底的に食べさせるわよ!」

「え、ちょ、待って。私ホントにお腹とかヤバいんだって!!」

「そう? 美月ってそんなに言うほど太ってないよね。というか痩せすぎじゃない?」


 凜君が私のお腹周りを見ながら言った。ちょ、ホントにヤバいんだから見ないでー!!

 私がせめて少しは隠そうとお腹周りの服を引っ張ってみたり、足やら手やらで隠そうとしていると、後ろから手が伸びてきて脇腹の肉をつまんだ。


 私が声にならない悲鳴を上げて振り返ると、自棄に感心した顔のゆかりちゃんがいた。


「美月ちゃん細っ! ちゃんとご飯食べてんの?」

「もう、ホントにやめてってば!」


 私が涙目になりながら訴えると、ゆかりちゃんは悪い悪い、と笑いながら手を離してくれた。


「……女子同士っていいな。羨ましー」

「「……同感」」


 男子組が私のほうを見ながら何か言った。私が首をかしげて見つめ返すと、みんな一斉に私から目を逸らした。一体何なんだ?


「如月……。お前、さりげなく男泣かせだな」

「私が、ですか?」


 遠峰先生まで……。ホントに、男性陣は一体どうしたっていうのだろうか。

 そこで、私はふとかばんの中の存在を思い出した。料理も食べ終わってみんなだらだらと雑談タイムに入ってきたのだからそろそろ頃合いだろう。


「遠峰先生!」

「ん? どうした、如月」


 私はかばんの中をごそごそと漁りながら遠峰先生に声をかけた。そして目当ての物を見つけ出すと、それを先生に差し出した。


「これ、大したものじゃないですけど、お誕生日プレゼントです」

「そんな、よかったのに。でもありがとな。開けてもいい?」

「どうぞ」


 遠峰先生は早速丁寧に包み紙をはがし始めた。お、すごくきれいにはがせてる! びりびり! って破くよりも、丁寧にはがす人のほうが私は好きだな。ちょっと好感度アップ。


「これは、リストバンド? これなら学校でも使えるな。ありがと、如月」

「あー! 大地先生だけずるい!」

「ずるいも何も俺は誕生日だっつうの」

「あたしからもプレゼント。はい、これ」

「お、今年はネクタイピンか。そろそろ新しいのにするか迷ってたんだよな。さすが俺の妹。ありがと」


 私たちがプレゼントのことできゃいきゃい騒いでいると、凜君がふと立ちあがって部屋を出て行こうとした。


「凜君? どこ行くの?」

「ちょっとプレゼントとってくる」


 それだけ言って部屋を出て行った。一体どこまで取りに行くつもりなんだ?


「大地先生! これは俺達から」

「姉貴に見つかったらあまりにもこれはかわいそうだ、って言ってクッキー焼いてつけてくれたぞ」

「お前らはまた今年も小遣いなかったのか。でもありがとな。大知、梓紗ちゃんにお礼言っといてくれ」

「大地さん、これ」


 陽ちゃんと大ちゃんがプレゼントを渡し終えたところで凜君が帰ってきた。手には封筒を持っている。


「お、頼んでおいたやつか。ありがとう」

「そのくらいなら簡単ですから。これは僕からです」


 遠峰先生が凜君から受け取った封筒を開けると、中から十数枚の紙とUSBが出てきた。遠峰先生は中のカードを読むと、一つ頷いてまた封筒の中にUSBとカードをしまった。


「先生、中に何が入ってるんですか?」

「ん、これか? これは前凜に頼んでおいた写真だよ」


 そう言って遠峰先生は写真を見せてくれた。そこには仲良さそうに肩を組んで笑っている陽ちゃんとゆかりちゃんと大ちゃんと凜君が写っていた。いいなぁ、ホントにこの4人は仲がいいんだね。


 そんな私の気持ちが顔に出ていたのか、先生が私の頭をぽんぽんとなでてくれた。


「如月はこれからだよ。これからもあいつらをよろしくな」

「そうですね。私もこれからいっぱい仲良くします」


 私がにっこりと笑うと、先生も笑い返してくれた。


「さてと、そろそろ遅くなってきたし、お開きにしますか」


 ゆかりちゃんの一言で、一斉に片付けに入る私たち。……あれ、なんか曖昧になったけど、あのUSBには何が入ってるんだろう。聞くタイミング逃しちゃった。

ちなみに、凜君からのプレゼントのUSBには写真やビデオなどのデータが入っています。お兄ちゃんは仕事でゆかりちゃんの卒業式に行けなかったので、凜君に頼んでいたのでした。うん。相変わらずシスコン全開☆

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