第11夜
途中で自分が何書いてるのか分からなくなりました……。
今回ちょっと(かなり?)グダグダです。ごめんなさい。
「先生、次、数学なんですけど……」
「ノート? どれ、見せて……」
私がおずおずと差し出したノートを受け取ってざっと目を通す遠峰先生。みるみる表情が引き締まっていく。
「………………」
遠峰先生は無言でノートを閉じて置くと、また無言で部屋を出て行った。そして戻ってきたときに一緒に手に持っていたのは、また何やら分厚い本。
「予想外だった。まさかここまでの奴が大知のほかにもまだいたなんて。とりあえずお前はこっからここまでのページ、全部やってみろ。簡単な計算問題だから分かるだろ?」
「えーと、√12+√3=……√15?」(※3√3です。)
「そっからか!? ……お前、よくうちの高校合格したな」
というわけで私は遠峰先生に言われたページをひたすらせっせと解いていた。2時間ほど続けていると、だんだん解くスピードが速くなってきた気がする。
その間、凜君やゆかりちゃんや陽ちゃんが遠峰先生に、
「この問題の※⁉‡†‱′√∸∹∧☠☐☇☉☆」
「ああそれは、☀★☓✡✤❤☯☞☌♋★☖☦☈☹☼☿」
読者様ごめんなさい。私の中でうまく脳内変換できなくてこのような結果になってしましました。恨むなら私の馬鹿なこの脳を恨んでください。
何はともあれ、このような難しげな質問をしていた。
「そろそろ休憩にするか」
遠峰先生が、今にも(というかすでに)頭から湯気を出しそうな私と大ちゃんの様子を見たのか、休憩宣言をした。
その言葉に一斉に伸びをする私たち5人
「そうだ、これ、うちの姉貴から。勉強の息抜きに作ったから良ければ食べて、だって」
「梓紗さんから!? やった!」
一気にテンションが上がる私と大ちゃんを除く4人。何この異様なテンションの上がりよう。そして梓紗さんって誰?
私の疑問に気がついたのか、大ちゃんが説明してくれた。
「梓紗っていうのは俺の姉貴」
「梓紗さんのお菓子って、すごくおいしいんだよ。美月も食べてみる?」
そう言って陽ちゃんが差し出してくれたのは貝殻の形を模したお菓子、マドレーヌだ。黄金色に焼けたその菓子は、見るからにとてもおいしそうだ。
思わず唾をごくりと飲み込んでしまう。
「……いただきます」
陽ちゃんからマドレーヌを受け取って、一口食べてみる。瞬間、口の中に広がるバターの香りと、砂糖とは違うほのかな甘み。
「これは……、蜂蜜?」
「美月よく分かったな。そう、蜂蜜。姉貴、お菓子作る時は隠し味に蜂蜜使うのがこだわりなんだって。砂糖とは違う甘みがあるらしいんだけど、俺には正直分からん」
そうか、やっぱりこの甘さは蜂蜜か。一人納得していると、目の前にもう一つマドレーヌが差し出された。顔を上げると、そこにいたのは陽ちゃん。
「美月、これ好きなんだろ。俺、甘いの苦手だし、良かったら俺の分食えよ」
「そんな、悪いからいいよ。それに、陽ちゃんも食べてみたら? これなら食べられるかもよ」
「んー、食えないことはないんだけど、俺が食うより美月が食べたほうがいいかな、って思って。美月、すごく幸せそうに食べてたから」
「なっ!?」
顔が一瞬で真っ赤になる。私、そんな顔で食べてた!? 確かに甘いものは好き。特に手作りのお菓子は作った人の気持ちが伝わってくるような気がして、特に好きだ。だからといって、人前で頬を緩ませるようなことはしてなかったはずだ。
「私、頬緩んでた?」
「かなり」
「……見てた?」
「バッチリ」
恥ずかしさのあまり顔を俯かせてしまう。まあ、女の子同士だったらこの幸せを共有できるし、なにせ同性だからまだ許せる。だけど陽ちゃんは男の子だ。異性にアホみたいに頬を緩ませているところを見られていたなんて、恥ずかしさで今なら死ねる。
「美月が幸せそうに食べてるところ見たらさ、もっとあげたくなるんだよ。何故か。だから、俺の分も食べて?」
「……陽ちゃんって実は、タラシ?」
「な!? バカ、そんなつもりじゃ……」
「そうよね、陽ちゃんって結構罪作りな男なのよね~」
「わ、ゆかり!? お前急に入ってくんじゃ……」
「あら、美月ちゃんと二人っきりで話してたかったの? ごめんなさいね~」
「そうじゃない~!!」
ゆかりちゃんが入ってきてくれたおかげで私はなんとか落ち着きを取り戻せたけど、陽ちゃんはまだゆかりちゃんにからかわれている。それを見ている外野男子3人も笑って(大ちゃんは大爆笑)見ているだけで止めようともしない。
……陽ちゃん、だんだん涙目になってきてるぞ。顔はもう真っ赤だし。ゆかりちゃん、そろそろやめたほうがいいんじゃ……。
とは思いつつも、陽ちゃんがこんなにいじられているところはなかなか見れないのでよく見ておくことにする。
「ゆかりの馬鹿!!」
最後に陽ちゃんがゆかりちゃんにそう言って部屋を飛び出していじりタイム終了。それを見た大ちゃんがさらに爆笑している。陽ちゃんの後ろ姿は、まるで少女漫画で『うわーんっ!』って言いながら走り去る女の子のようでした。結構おもしろかった。
「ゆかり、お前、もうちょっと手加減してやれよ。慰めに行くの、俺だぞ」
「いいじゃん、仲いい証拠だよ♪ じゃ、大兄、あとは任せた」
「はいはい」
遠峰先生はやれやれ、とでも言うように陽ちゃんを追って部屋を出て行った。
「ゆかり、ホントに男子には容赦ないよな」
「そうそう。僕も何度泣かされたことか」
「え、凜君も?」
「あんたは小2まででしょ。まったく、すぐに可愛げがなくなっちゃって」
凜君は小2のころから凜君だったようです。