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あまがみ

とにかく謝り倒したい……

「う……」

小さな呻き声が暗い室内を満たした。

寝室に、橙の頼りない明かりをつけているだけのうすらぼんやりとした空間。

橙の光に照らされて、よくは見えないが室内はシンプルにまとめられているようだ。

ドアは一つだけ。そのドアの向かいにセミダブルのベッドが一台と隣に照明の乗ったサイドテーブル。

四隅には暗い闇がひっそりとたたずんで、固唾を飲むようにして息をひそめていた。

「っ……」

興奮したような熱い息が漏れる。

切羽詰まったような苦しげな息遣いは艶を帯びるように妖しい。

と、ベッドの上の影が身じろいで、壁の薄い影を揺らした。

ベッドの端に腰掛けるようにしている華奢な体躯の少女が一人。そしてその少女の下に跪くようにして立て膝を立てている男が一人。

見ると、少女の手が伸びていて男の片手に手首を掴まれている。男は照明の下でより細くみえるその手の人差し指を口内に咥えていた。

中指と薬指もてらてらと光っている。

男の、口から時折覗く舌が少女の指をぬらりと這うたびに少女の肩が跳ねる。

それを上目に見て、男は愉快そうに目を細める。

「あっ、は……っ」

ついには首をすぼめるような格好になり、少女は膝を擦り合わせた。

けど、それは男が急に足を持ち上げたことでできなくなる。

男は空いた片手で少女の足を持ち上げ、足の指の間、裏を爪先からかかとに撫であげるように触れていく。

官能的なその動作に、男は咥えた少女の指先が震えているのを感じた。

窓も閉め切った室内に、湿り気を帯びた声と細い水音が響く。

流れるような空気の通り道はなく、籠った風が二人の肌を熱くさせて汗ばませていく。

少女の顎から伝った汗の玉が、首元のシャツに沁み込んだ。

切なげに寄せた眉が作る影がより一層濃くなって、男が掴んだ足の膝がぐんと曲がった。

「あっ……」

「はっ……なんだよ、おわりか」

口内から解放した少女の白い指の先から唾液の糸が伸びて切れた。

少女の哀れで切なげな格好を見た男が、足を離し、少女に覆いかぶさるようにベッドに乗った。

少しだけ軋むベッド。沈むマット。柔らかなシーツは、少女が上体をそらしても受け止めた。

上体を後ろに倒して逃げようとした少女を追いかけるように、男は少女の身体の脇に手を突き、首元に顔を埋めた。

そして、乱れてむき出しになった肩の産毛を唇に感じながらゆっくりと舐めていく。

首から滴ったと思われる汗のしょっぱさと少女の甘い香りが舌と鼻をくすぐる。

漏れそうになる声を抑えようとしてか、両手を持ち上げようとしたが、察した男が肘で片手を封じた。

余った片手の甲を噛んで、少女は何かに耐えようと顔を男の方からそむけた。

「こっちをみろって」

「っんぁ……ぁ」

べろりと大きく首の筋を舐められた。熱い息が耳元にかかって少女の芯が熱を持つ。

離してしまった甲の代わりに人差し指の側面を噛む。

「ん……っはぁ」

「素直になれよ」

囁くように言われて、耳の中を生ぬるい舌が巡る。

耳の奥に響く厭らしい音が脳の中を白く乱す。

肩口をかすめる男の髪が、嫌に艶らしく思えてもどかしい。

「は……」

この……。

男が息を大きく吸うように身体を僅かに持ち上げた。

目の前にあらわになった無防備な褐色の首筋に、少女は甘く噛みついた。

出っ張った喉笛を舐めるように舌でくすぐって離れると、ぼうっと照らされた首筋に浅い歯型が浮かんでいるのを見つけて少女は甘く頬を緩ませてほほ笑んだ。

そして、次に降ってくるだろう抱擁と唇を受け止めるべく小さく胸を広げた。

読んでいただけた方、ありがとうございました。

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