愛文
掲載日:2026/10/20
二十歳の誕生日、死んだ彼女から手紙が来た。
差出人を調べると、彼女の実家だった。
彼女が生前に書き残したものだという。
毎年誕生日に贈るという約束とともに。
最初は嬉しかった。
いつもの軽口に彼女を感じ、慰められた。
けれど数年経つと疎ましくなった。
日常のやりとり。他愛ない内容。
それでも「忘れないで」と言われた気になる。
次第に封を切らず、箱にしまうようになった。
幾度かの恋を経て、私は結婚した。
子供も孫も生まれたが、妻は熟年離婚を望んだ。
愛する家族は妻に続き、私は孤独になった。
メッセージは既読さえつかなくなり、やがて送らなくなった。
あの手紙が届き、誕生日を思い出す。
私が幾つまで生きると思ったのか。
気まぐれに封を開ける。
〈まだ生きてる?〉
そんな物言いに、目頭が熱くなった。
箱の手紙を全て読んだ。
彼女は何を想い、綴り続けたのだろう。
一方通行のこの手紙を。
私は便箋を探した。
一人、返事のない便りをしたため始めた。




