誕生日会の前日の事。
公爵家には長らく子供が授からず、やっと産まれた一人娘の記念すべき初めての誕生日会と言う事で、その招待客の数たるや凄まじくドン引きよ……。
たかだかお誕生日会で500人もの招待客って有り得へん……。
その前日に王城に行って王様と王妃様、皇太子殿下と皇太子妃殿下に謁見とか……。
無理無理無理無理!?
中身は平民ってか寧ろ貧民の31歳おばちゃんのウチが、前世でも皇族の方なんてたった1回偶然にしかお目に掛かった事無いのに!!!
ってこの下り、産まれた直後にもやったんだった。
貴族家に産まれるって大変だぁ……遠い目
でも、やるしかない。
やるしかないのだ。
私は1歳、私は1歳、私は1歳
純真無垢にポシェットを前に差し出し小銀貨を1枚入れて貰うのだ!!
王様、王妃様、皇太子殿下、皇太子妃殿下の順に大丈夫……大丈夫……大丈夫……大丈夫……多分……
『リーファス国王陛下、アリス王妃殿下、並びにマルクス皇太子殿下、リメイラ皇太子妃殿下にご挨拶申し上げます。本日は私共の謁見にお時間を賜り誠に恐悦至極に存じます。』
〘堅苦しい挨拶は良い。表をあげよ。オルフェス並びにマーシャ。〙
『《ハッ!》』
〘皆の者、下がって良いぞ。〙
「「「「「ハッ!」」」」」
側近や騎士達がゾロゾロと部屋を後にする。
暫くした後、国王陛下が口を開く。
〘クラレンスちゅわーん、ジィジでちゅよ〜♡ささ、ジィジの膝の上に早よう♡〙
〖アナタ、ズルいですわよ!!クラレンスちゃんは私の方が良いわよね♡ささ、バァバに抱っこさせて頂戴♡〗
そう……そうなのだ……。
この威厳溢れるリーファス国王陛下と、めちゃくちゃお顔が整いまくったアリス王妃殿下は、ままんの実の両親なのだ……。
そのお陰か、長らく子が出来なくても表立ってぱぱんが他の貴族連中から側室を勧められる事が無かったと言う事らしい。
『クラレンス、行っておいで(ニコッ)』
私は一度大きく深呼吸してから、意を決して歩き出す。
短いく小さい手足でふかふかの絨毯はめちゃくちゃ歩き難い。
何とかバランスを取りながら、ふかふか絨毯ゾーンを越えて、次に待つのは大理石階段ゾーン。
ここにもふかふか絨毯は有るのだが、今回はこのふかふか絨毯をムンズと掴みながら階段登りにチャレンジする。
その間、誰も手を出さない。
勿論、階段登りは危険なので、ぱぱんとままんが後ろで待機しているが危なくなるまで手出しは無用である。
幼児ってめちゃくちゃ大変だよね……。
ふぅ……やっとこせ登りきったーーーと思って立ち上がったら頭が重い……
ヤバ、後ろに倒れる!!!
って思ったけど、ぱぱんがすぐ後ろで支えてくれた。
【パパ、あぁーと♡チュ】
ぱぱん昇天。
ジィジが悔しそうなのでぱぱんの事は知らんぷりしよう。
そして、保険屋で働いていた時の経験を活かすならば、まずは嫁を手中に収めよ。
(これは余談だが、まずは同性同士で話を進める方が要らぬ勘ぐりを避けられるからだ。)
って事で……
両手をこれでもかと広げ待ち構えるジィジより、控え目に広げ待ち構えるバァバの元へ!
ジィジよ……そんな目で見ないでくれたまえ。
今日の夜も夫婦円満に眠りに着きたいだろ。
〖アラアラ〜、まぁまぁ〜、クラレンスちゃんはバァバが好きなのね♡〗
ほっぺにスリスリして喜ぶバァバ。
すかさず勝負に出る。
【バァバ、くたい♡】
〖えっ、私が臭いの……?〗
〘んブホッ……〙
苦虫を噛み潰したような顔をしていたジィジが、涙を流しながら笑いを必死に堪えている……。
ジィジよ……後でシバかれ確定だなこりゃ……。
《あぁー、違う違うのよ!お母様。》
《この子、まだ小さいから下さいが言えなくて(笑)》
〖あ、例の小銀貨集めね(笑)ビックリしたわ〜(汗)〗
〖陛下には後でお話がございますので。〗
〘ヒッ……〙
気を取り直してもう一度。
【バァバ、くたい♡】
〖はいはい!幾らでもあげちゃうわよ♡〗
ん?何だか大きさが違った様な?
小銀貨じゃない銀貨でも入れてくれたのかな?
王族だからそれも良しか、うんそだよ。大丈夫だぁ。
【バァバ、あぁーと♡ブチュ】
ほっぺに長めのチューをどうぞ。
〘がっ!ジィジもジィジも!!!ジィジもあげるぞ!!!〙
バァバ昇天。
その隙にジィジに掻っ攫われる。
【ジィジ、くたい♡】
〘ほれほれ、ジィジは2枚あげちゃおう(笑)〙
んんっ?やっぱり大きさ違くね?
色も何だか銀貨より綺麗な様な?
銀色で間違いは無いのだけど……何だろこの違和感?
まぁ……後でぱぱんとままんと確認しましょ。
って横で、ほっぺを突き出してバッチコイみたいな感じ出してる人いるよ……。
はいはい、お待たせ致しました。
【ジィジ、あぁーと♡ブチュ】
ジィジも昇天。
お次は……皇太子夫妻だけど、何だか浮かない顔してる……。
皇太子夫妻は結婚して3年になるが、子供が居ない。
そっか、そうだよね……。
ウチのぱぱんとままんよりも遥かに責任重大な立場で子供が居ないってなるとなぁ……。
チラリと皇太子妃に目を向けると、皇太子妃の下腹部辺りに小さなモヤモヤが見えた。
あれは!ぱぱんのモヤモヤに似てるな?
もう少しハッキリ見えないかなぁって思ったその時……。
はい!見えました。
ビジョンに映し出されたのは、卵管が詰まっている皇太子妃の子宮内部の映像。
どうする?
皇太子妃に頭突きする訳にも行かないし、かと言ってデリケートな問題だからなぁ……
良し。こうなったらバァバを召喚しよう。
【バァバ、バァバ、ちゅまってう】
〖はいはい!なぁに?クラレンスちゃん?〗
【ちゅまってう】
〖う〜ん、よく分からないわねぇ〜〗
バァバのお顔をガッチリ掴み、おデコを合わせてバァバの脳内に映像を流し込む。
その際に、皇太子夫妻とままんに電波する様に祈りながら。
〖なんて事なの……クラレンス、アナタが見せてくれたの?〗
【うんうん(ニコッ)ちゅまってう】
皇太子夫妻は呆気に取られ、ぱぱんとジィジは取り残されてオロオロしてる。
《お母様、クラレンスには不思議な力があって……以前私達もオルフェスが倒れる姿を見せられました。》
《オルフェスの場合は右側頭部の血管に小さな詰まりが見付かって、状態異常を補正するポーションを少しずつ塗り込んだら良くなっりました。》
《リメイラ皇太子妃の場合は治癒魔法士に見せては如何でしょうか?》
〖ねぇ、クラレンス。リメイラはそれで治るかしら?〗
【うんうん(ニコッ)】
私はトコトコ歩き、リメイラ皇太子妃の元へ。
【らいじょーぶらいじょーぶらよ(ニコッ)】
と、渾身のクラレンススマイルをぶつけた。
[叔父として感謝する。クラレンス、見付けてくれてありがとうな(泣)]
[私も叔母として感謝致します。この病いを治し必ず子を授かりますから、産まれたら一緒に遊んでやって下さいましね(泣)]
マルクス皇太子殿下とリメイラ皇太子妃殿下も1枚ずつポシェットに入れてくれた。
上手く隠されて見えなかったが、5枚しか入っていないハズのポシェットが重いのは何故だろう?




