しがない保険外交員
「佐藤、おい佐藤ちひろ!!」
【はーいはいはい、そんなに怒鳴らなくても聞こえてますよ……まだ若いんだから(ボソッ)】
ギロっと周りのおば様達に睨まれる
「お前まだ成果出てないぞ!今月は記念月でお前のノルマまだ達成してないだろ?ちゃんと見込みは有るんだろうな?!」
【あ〜もう、今から行く所ですよハァ……】
「本当に持って来れるんだろうな?」
【持って来るので判子に息でも吹きかけて待ってて下さ〜い】
「あ、おいコラ!佐藤まだ話が!!」
【帰ってから聞きマース】
ゴリラは今日も絶好調。
男の癖に肝が小さい営業部長ことゴリラ。
離婚して自分の母と可愛い息子二人を養う為に朝から晩まで働きまくり、入社9ヶ月にしてゴールド営業主任になった私の名は佐藤ちひろ。
生活は楽では無いが、辛いだけの結婚生活を続けるよりずっとマシだった。
昔の同僚から「お茶しない?」と誘われ、自宅まで迎えに来ると言うので再会間もなく車に乗せられ連れて来られた場所が某大手保険会社だった。
あれよあれよと座らされ、履歴書らしきアンケート用紙に記入させられ……
気が付いた時には勉強会に。
その時別の仕事もしながらだったが、保険主任者の資格に合格してしまい本格的に入社の運びになってしまった……
目立たぬ様にと頑張った。
目立てば大奥では生きづらいからだ。
頑張ったのだが……やっちまった。
入社早々大口経営者保険獲得、社内で特約を新たに作りだし、地区表彰式やら何やらであっという間に出世してしまった……
お陰でおば様達の圧とノルマ増額でフラフラだった。
毎日毎日ノルマに追われ、だけどゴリラに啖呵切った手前、取れませんでしたと言いたくないのでキッチリ契約書を手にし事務所に戻る途中に事故は起きた。
事務所向かいの反対側から横断歩道に向けて歩いていると、一人の女の子がこっちに笑いながら走って来る。
【ダメ!!車に引かれる!!】
息子と同じ位の子供は見捨てられなかった……
その子に手が届きそうだって所で消えたんだその子。
その後はザワザワしてたけど……チビ達、お母さんごめんね。
保険……入っておいて良かっ……た




