表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/7

第7話「懲りず現れる誘拐犯」


「キミ、どうしたんだい?」

「あのっ……迷子になっちゃって……」



 リドラと俺が向かった先には、平原で泣き叫んでいる幼い少女がいた。

 わかる通り、少女は迷ってしまったようだ。気づいたら、共に出かけていた祖母とはぐれてしまったようである。


「困ったおばあさんだね、孫を置いていくなんて。極度の認知症かな?」

「ぐすっ……おばあちゃん……」

「まぁ待て、泣くんじゃないさ。ボクが面白いものを見せてやるから」

「面白いもの……?」


 少女がそっと顔を上げる。

 おいおい、面白いものってなんだよ。俺は目を細めながら、自信ありげなリドラの顔を見つめていた。


「ボクの実験をご披露。魔力による爆h……」

「もういいから! その実験おもんない!!」


 俺は思わず横から口を出してしまった。

 ふざけんな。研究所を壊した経験を、一瞬で忘れたのか!


 すると少女はリドラから視線を外し、真ん丸な瞳で俺を見下ろしてきた。


「ラビー! ラビーだ、かわいい!」

「うぉ……おう」

「しかも喋ってる!」


 少女は飛び跳ねながら、俺の体を持ち上げた。ちょ、力入れて掴むな……


 ともかく、少女は俺が声を出しただけで、すぐに笑顔になった。

 その様子を見て嫉妬したのか、リドラは頬を膨らませる。


「なんだい! 確かにラビーが声を出すのは興味深いけど、キミばっかり好かれたらズルいぞ!」

「は……?」

「ふふん。ボクの実験を見たまえ」


 リドラは胸を張りながらフラスコを取り出すが――すでに、彼女の周囲から、俺は少女を連れて離れている。


「……って、なんでキミたちは離れてるんだっ! もっと近くで! ……って、あ、叫んだ拍子にまた入れすぎた――」




 草原で、爆発が起こる。

 俺と少女は、呆然とした顔で、自爆した科学者を見つめていた。


「ゲホッ、ゲホッ……やっぱり、化学物質の量をちゃんと調整してから、魔力を入れるべきかなぁ?」

「おねぇさん、ボンってなった!」


 少女は真っ黒のリドラを見てゲラゲラと笑う。

 よかったな、リドラ。笑顔を見せてくれて。




「迷子か……。キミはおばあちゃんと、どこへ向かっていたんだ?」

「……ノースタウンへ」

「あぁ、知っている町の名前だ。場所はわかってる。ただ……ごめんよ、ボクは町に近づけないんだ。どうしようか……」


 おいおい嘘だろリドラ? 声をかけたのに助けられないとかないよな?


 するとリドラは俺を見つめてきた。


「……町まで来たら、残りはキミがおばあちゃん捜しを手伝ってやれないだろうか」

「えぇっ、俺!?」

「それくらいならできるだろ? 従魔契約で、ボクとキミが離れられる距離は100メートル程度。 ボクは町の外で待ってるからさ。頼む、ラビーが怪我しないようにだけしてくれ」


 リドラが少女にお願いすると、少女は小さく頷く。

 マジか……。俺がこの子のおばあちゃんを見つけなきゃいけないのかよ。





「ここがノースタウンだ。少し寒い場所だね」


 俺たちは数時間かけて、ノースタウンまで歩いてきた。

 北の方角にある町のせいか、気候が少し寒いらしい。でも俺はウサギの毛があるから、これくらい問題ないかな。


「じゃあ後はまかせたよ、ラビー君」

「はーいよ……」


 俺は手足をよちよちと動かし、少女を連れて町の中に入っていった。




「ぎゃあああああああああっ!!」


 町に入ったとたん、家の番犬に噛まれそうになった!

 死ぬ! やめて! 俺はランクEの俊敏性で、何とか番犬から身を隠した。

 でもさっき、丸い尻尾を爪でかすられた。それだけで痛い。このやわらかい体に刺激を与えすぎたら、絶対に即死する自信がある。


「大丈夫、ラビー?」

「ハァッ、ハァッ……」

「私が抱えてあげる」


 少女は俺の小さな体を抱き上げた。はぁ、これで犬に襲われることはないだろう……。

 やっぱりウサギの体は、こうやって町を歩くには不便だな。




 そして、周囲を捜しまわること数十分後。


「おばあちゃーん!」

「メアリー!? どこにいたんだい!」


 背筋が曲がったおばあさんに向かって、少女が抱き着いていった。

 あの人がこの子の祖母か。まったく、孫を平原に放置しちゃだめだぜ。


「喋るラビー、ありがとう!」

「……え? あ、どういたしまして」


 突然お礼を言われ、俺は驚いてしまった。

 ともかくよかった。少女が祖母に会えて。ひとまずこれで一件落着だな。

 ……さて、俺は真面目に、自分のことを考えないと。

 リドラに悪意があるようには見えないが、いずれ敵になったり、俺を無意識に殺す可能性がある。でも彼女からは逃げられない。外でも一人じゃ生きられない。……俺の人生、だいぶお先が真っ暗だな……


「ちなみに俺が仮に人間に戻ったら、従魔契約は解除されるのかなぁ」


 俺が人間に戻れば、あの破壊的なステータスを取り戻せるだろう。

 それに加えて従魔契約が解除されれば……ワンチャン俺は、力ずくでリドラから逃げられる可能性がある。

 俺は転生者だとバレてしまっているから、人間に戻れば世界中から追われるだろうけど、魔法の使い方とかを知れば、そいつらも蹴散らせるんじゃないか?


 人間に戻れた後、いっそ魔王みたいになって、最強ステータスを使いこなそうかとも考えたが……全世界を敵に回すのは、さすがに大学生の俺の勇気じゃ足りなさ過ぎた。


「困ったもんだな……」


 俺がため息をつきながら、リドラがいる場所へ戻ろうとしたとき。




 突然、頭上から声が響いた。


「おぉ、さっきこのウサギ、喋るラビーって言われてたよな~? オラは知ってるぞ~」

「……!?」


 聞き覚えのある声。

 俺が思わず顔を上げると――そこには、あの誘拐犯の一人が、ニヤニヤした笑みを浮かべて立っていた。

 間違いない。俺をラビーの姿に、魔法で変えた男だ。


「よくその姿で生きてたよねー。オラたちの仲間、大慌てで捜していたぞっ。モンスターに変えられた転生者で逃げ出した奴なんて、お前が初めてだ」

「……」

「ちなみに、元の姿に戻りたいとか考えてる? この魔法、すごく高度でさ。オラは魔法をかけたはいいけど、元に戻す方法はわかんないんだよね」


 大袈裟に笑う男。

 やばい、俺のこと捜されていたのか。逃げないともう一度捕まる……!


「さーてラビー。お前はオラたちに売られる運命なのさ。抵抗はやめて……」

「やめろっ! こっち来るなっ!」


 俺は急いで走り出した。

 男が俺を追いかける。だが、住民は誰も俺を助けてくれなかった。

 他人から見たら、ただの雑魚モンスターを男が追いかけているようにしか見えないのだ。


 俊敏性は高いため、すぐに追いつかれはしないが、やがて弱い俺の体力は尽きるだろう。

 やめてくれ……! リドラ、俺を助けてっ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ