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なろうラジオ大賞7の応募作品

風鈴の音が聞こえる

作者: 霧澄藍

 おじいちゃんの家の縁側に腰掛けるなんて、ちょっと粋だと思う。隣に一人分の場所を開けて座る。

 きゅうりもナスもある。きっと彼女は、僕に会いにやってくる、はず。久しぶりに会える喜びと、これが最後になるかもしれない悲しみでソワソワする。

 この家には思い出が詰まっている。母さんが再婚してできた新しい父さんの父さんの家。初めて来た日のことは今でも忘れられない。母さんがすごい緊張してて、小学生だった僕はその緊張を感じて不安だった。

 何人かいた親戚の中で、子供は僕と従兄弟の彼女だけ。そこで人生初めての恋をした。

 二人で遊んだ関係は、それぞれが高校生になっても細く長く続いて、この家の持ち主が死んだあとは、二人でたまに掃除なんかもした。

 リン、と澄んだ音が響いた。この縁側に唯一残ったもの、風鈴の音だ。みると、切ったスイカを乗せた皿を持って、白いワンピースの彼女が立っていた。

「久しぶり。元気だった?」

 無言の彼女は小さく笑うと、僕の隣の定位置に座った。もうすっかり木がなくなった小さな庭を二人で見つめる。

 訪れた静寂を破るように、彼女が口を開く。

「スイカ、切ってきたんだけど」

「あー、ありがとう」

「苦手だったよね?」

「まあ、うん。だから僕の分も食べていいよ」

「私食べていい?」

「うん」

 この会話はいつぶりだろう。スイカが苦手な僕とスイカが好きな彼女が揃うといつもこうなる。

 彼女はスイカを一つ手に取って、器用に種を受け皿に落としながら食べ始めた。その横顔を見つめる。もう見ることはできないかもしれない横顔を。

「あのさ、ずっと言えてなかったんだけど」

 彼女はスイカを食べ続ける。

「好きだったよ」

 彼女の動きが止まった。食べ方を忘れたように硬直する。

「苦…っ」

 口元を手で押さえて種を吐き出した。どうやら嚙み潰してしまったらしい。頬に涙が一筋光っていた。

 その苦みはすごくわかる。だって僕は、初めてスイカを食べた時に間違って食べた種が苦かったから、スイカが苦手なのだから。

「一緒に食べれたらよかったのにな、スイカ」

 立ち上がって、スイカを持つ彼女の手に触れる。その温かさを感じることはできなくても、確かにそこに居た。

「またくるね」

 風が吹いて、風鈴が揺れる。澄んだ音とともに、僕の意識は空へと飛んだ。



 ◆



 リン、と音がして顔を上げる。自分と同じく縁側に取り残された風鈴の主張だった。

 もともと一人ぼっちだった縁側が、より一層寂しくなった気がした。

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