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悪女の悪あがき。2回目!~今度は親友の破滅フラグをへし折りたい~  作者: 杏仁堂ふーこ


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6.難易度高めの再会イベント①

 そして三日後。

 思いのほか早く都合がつき、ザイン、ディディエ、カミルの三人があたしの住む屋敷、通称・椿邸に訪れる。意外にも彼らは護衛や側近もつけずに三人だけでやってきた。

 玄関をくぐり、ザインを先頭にあたしに近付いてくる。


「よぉ、ロゼリア。久しぶり」

「……久しぶりね」


 五年ぶりにも関わらず、ザインがやけに親しげ。あたしは一定の距離を保ったまま挨拶を返す。

 対してディディエは眉間に皺を寄せて腕組みをしていた。ひと目見ただけで挨拶なんて来たくなかったのがわかる。話しかけるなオーラが出ているものだから、そのままスルーした。

 あたしは五年ぶりの再会になるザインとディディエを観察する。

 ザインは相変わらずアクセサリーじゃらじゃらつけててチャラい。対してディディエは氷のような印象がぐっと高まっていた。身長は二人とも高いけどザインの方が少し高いわね。二人の容姿や印象の変化は、先にゲームで見てたからさほど驚きはない。

 そして、ディディエの横から現実では初めて見る顔がにゅっと出てくる。び、びっくりした。


「こんにちは! ロゼリアさん、お会いできて光栄です」

「こ、こんにちは」

「僕の名前は六堂カミル。六堂家の七番目です。良かったら仲良くしてくれると嬉しいです」


 そう言って彼は流れるような動作で手を差し出した。とても自然な動作だったから、釣られて手を差し出してしまう。

 しっかり握手を交わすことになり、カミルは嬉しそうに何度か揺らしてから手を離した。

 これが六堂カミル――年齢は十八歳。身長はメロと同じくらいかしら?

 ゲームでは見てるけど、対面するのは初めてね。第一印象としては「爽やかな少年」ってところ。ザインと雰囲気が似てる。ああ、そう言えば、ザインとカミルの母親は姉妹なのよね。摩訶不思議な家系だわ。


「兄様たちからお噂はかねがね」

「……その二人から聞ける噂なんて碌なもんじゃないでしょ」

「そうかな? 結構未練ありそうな感じですよ」

「ねーよ」

「あるわけないだろ」


 カミルがけろっとした様子で笑う。

 けど、即座にザインとディディエが息ぴったりに否定してくるものだから、カミルが苦笑してしまった。

 ……この二人があたしに対して未練があるなんて、天地がひっくり返ってもない。


「とりあえず、立ち話もなんだし、移動しましょ。近況でも聞かせて頂戴。興味ないけど」

「おめー、もうちょい可愛げってもんはねーのかよ」

「あたしに可愛げがあったとしてもそれを見せる相手はあんたじゃないわ」


 実際会ったらもっと気まずくなるかと思ったけど、案外そうでもなかった。悔しいけど、ザインとカミルの空気づくりがうまい。明らかに不機嫌そうなディディエの空気を中和するばかりじゃなく、話しやすい空気を作っている。

 あたしは三人を応接室に案内しながら振り返った。


「っていうか、いきなり挨拶なんてどういう風の吹き回し?」

「兄貴が挨拶しとけってうるせーからさぁ……」

「……兄さんの命令じゃしょうがない。オレ達は不要だと言っても聞く耳を持たなかったからな」

「僕はきっかけをもらえて嬉しかったなぁ。最近ロゼリアさんのことが話題だったしね」


 あ、ディディエがようやくまともに喋った。

 そう思って彼の顔を見ると、目が会った瞬間に不機嫌さを強くして顔を背けた。失礼なやつ。顔はめちゃくちゃ綺麗なのに面倒な性格してるのよね。

 一方カミルからはうきうきした様子が伝わってくる。


「兄貴とか兄さんって誰のこと? コウセイさん? それともアオさん?」


 扉を開けて応接室に通しながら尋ねる。

 するとザインが足を止めた。ディディエとカミルを先に応接室に入れて、あたしを見つめてきた。


「どっちもコウセイの方」

「ふーん。あんた、コウセイさんには頭が上がらないの?」

「……嫌なこと聞くよなー、お前」

「どういう意味?」

「関係ねーだろ」


 ザインがふいっと顔を背けて、応接室に入っていった。

 いかにも何か隠してますと言わんばかりの思わせぶりな態度。気にならないわけがない。

 三人に座るようにソファを指し示しながら、脳みそをフル回転させる。


 元々ザインがコウセイさんに頭が上がらないのか。ヴィオレッタがいなくなったことでコウセイさんの影響力が増して頭が上がらなくなったのか。

 後者ならコウセイ黒幕ルートの可能性が上がる。カミルに関してはまだ様子見よ。

 あたしには『ブラック・ロマンス』の情報があるけど、元々の兄弟関係に詳しくない。彼らの情報に対するアンテナは張っておきたいけど、全てを鵜呑みにするのは危険だわ。――決定的な証拠を掴むまでは。


 そして。

 ジェイル、メロ、ユウリの三人が当たり前の顔をして応接室に入ってきた。

 少し遅れてアリスがお茶を持って入ってきて、ザインたちとあたしの前にお茶を置いていく。そして、あたしの座るソファの後ろにジェイルたちと一緒に並んだ。


 ――昨日の夜。

 あたしは四人に会話の邪魔をしないことを散々言い含めた。

 昨日のやり取りを思い出して小さくため息をつく。

 最初、「個人的な客だから同席は控えて欲しい」と言った。けれど、あたしが口にした「個人的」という言葉に全員が何故か反感を持ってしまった。


『はぁーーー?! こ、個人的って……まさかお嬢あの二人のどっちかとヨリを戻す気!?』

『違うわよ! なんでそうなんの?!』


 メロがやけにショックを受けた顔をして食って掛かってきた。ほんと馬鹿。そんなわけないのに。


『お嬢様。ザイン様たちはあくまで”六堂家の人間として”、挨拶にいらっしゃるのです。

 個人的な客とは言えません。我々も同席します。全員が駄目なら自分だけでも同席させてください』


 ずい。と、ジェイルがあたしの目の前に立つ。百九十近い身長の仏頂面であたしを見下ろしてくる。相変わらずの威圧感だわ。

 そしてジェイルの「自分だけでも」という言葉に他の三人がカチンと来たのが伝わってきた。

 ジェイルを押しのけて、アリスが出てくる。


『ロゼリアさまっ。ディディエさまやカミルさまはともかく、ザインさまの女性関係が派手なことは有名です! そりゃあ以前のロゼリアさまほどじゃないですけど……”個人的に”お話するのは良くないと思います!』

『……あんたも余計な一言が多いわね』


 ため息混じりに言うと、アリスがハッと口を押さえた。

 唯一ユウリは口を挟まずに黙っている。けど、ここぞという時にジェイル以上の理詰めで来るのはわかっていた。

 ――全く。最近、本当にこういうことが多くなってきたわ。

 これまで好き勝手に振る舞ってきたことへの反動なのかしら。立場上制限が多くなってきている。理解も覚悟もしていたけどね。想像よりも制限が多くて驚いている。

 ……まぁ、目の前にいる四人に関して言えば、『あたしが元カレと会うこと』が気に入らないんでしょうけど。

 純粋な好意からの嫉妬がちょっと新鮮だわ。

 両手を腰に当てて、思いっきりため息をついた。四人がギクッと肩を震わせる。


『わかったわよ、同席を許すわ。けど、会話の邪魔をしたり、余計なことを言ったらすぐ摘み出す。

 ――いいわね? 特にメロ、あとアリスもよ』


 言いながら、四人の前をゆっくり歩く。一人ひとりの顔を見ながら、釘を刺すように。

 メロとアリスは「なんで名指し?!」と言わんばかりの顔をしていた。

 ジェイルとユウリは神妙な顔をしている。この二人が他人事っぽいのは気になるのよね。確かにこれまで余計なことは言わなかったけど。


『相手が何を言ってきても邪魔するんじゃないわよ』


 そう言ってジェイル、ユウリを見つめた。二人は困惑しながら頷く。

 ザインとディディエは同い年ゆえの気安さと過去のことがあるから失礼なことを色々言うと思うのよね。ジェイルが食って掛かりそうなのよ。

 あたしはあいつらの言動を受け入れた上で引き出したい情報がある。そのためにも、ジェイルたちに好き勝手させるわけにはいかない。好き勝手して欲しいのはザインたちだからね。


 ――で、今に至る。

 昨日のことを思い出しながら、お茶に手を伸ばす。

 目の前にいる三人――ザイン、ディディエ、カミルの三人にも「飲んで頂戴」と勧めた。

 さて、と。

 まずはヴィオレッタのことを少しでも喋ってもらうわよ。あたしはよそ行きの笑みを浮かべてザインを見つめた。


「ところで、ヴィオレッタさんは元気かしら?」


 三人の空気があからさまに変わった。

 あらあら、案外崩しやすそうだわ。――あたしは心の中でほくそ笑んだ。

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