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悪女の悪あがき。2回目!~今度は親友の破滅フラグをへし折りたい~  作者: 杏仁堂ふーこ


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1.プロローグ ~届かなかった手~

 私の目の前で、親友が死んだ。

 歩道橋の階段で足を滑らせて転げ落ち、首の骨を折って死んだ。


 私は彼女の手を掴もうと咄嗟に手を伸ばした。けれど、触れ合うかどうかのところで私の体は別の友達の手によって後ろに引っ張られてその手を取ることは叶わなかった。

 尻もちをついた時には彼女はアスファルトに落ちていて、首がありえない方向に曲がっていた。血がじわじわと広がっていくのを呆然と見つめていた。

 何が起きたのかわからず、いち早く現実を理解して悲鳴を上げたのは誰だったのか。

 由実子だったのか、美雪だったのか、それとも私だったのか。


 彼女は即死だったらしい。

 現実感など沸かないまま、あれよあれよと通夜、葬儀が執り行われた。

 私たちはずっと泣いていた。あの子の家族もずっと泣いていた。

 火葬場では大変だったと、時間が経ってから妹ちゃんに聞いた。

 最後のお別れの時、お母さんが取り乱して泣き出し、妹ちゃん自身も辛くなって逃げ出してしまったらしい。「辛くても最後までやるんだった」と、彼女は小さな声で言っていた。

 私はただの友達で親族じゃないから、そこまではついて行っていない。

 でも、きっとその場いたら二人のようにまともじゃいられなかっただろう。


 手を伸ばした瞬間だけは酷くスローモーションで、あと一秒でもあればあの子の手を、指先だけでも掴めたんじゃないかと思う。

 何度も何度もその瞬間を思い返す。

 何年、何十年経っても忘れることはできなかった。

 高校を卒業して大学に進み、社会人になって、結婚をして子供ができても、あの瞬間を思い出す。

 死ぬ間際ですら、あの瞬間を思い出していた。



◆ ◆ ◆

◆ ◆



 そして、全てが遠のいていった。

 ふと気付くと、『ワタシ』は何もない虚空に向かって手を伸ばしていた。

 頭が朦朧とする。吐き気が酷い。

 ずっと意識が混濁している。うまく思考できない。

 今の記憶はワタシのものではない。けれど、無関係な記憶でもなかった。

 前世の記憶だ。何故かそれがはっきりとわかる。


 『こんなこと』にならなければ思い出すこともなかっただろう。

 弟によって真っ暗な部屋に押し込まれ、怪しげな薬を飲まされた。部屋は香の匂いで満ちていて、匂いと薬のせいで意識がどんどん曖昧になっていく。


 ――これは、洗脳の準備。そう理解した瞬間、背筋が凍った。


 弟は――あの子は、ワタシを殺したいの……?

 いや、殺すだけならこんな風に薬漬けにして生かす理由はない。調べられたら厄介なことになるはず。

 なら何故? と無理やり考えたところで、前世の知識と情報が蘇ってきた。

 ……そうか、あの子はワタシを貶めたいんだ。ワタシが築き上げた地位を自らの手で壊し、台無しにさせようとしている。そうして、ワタシがその地位に相応しくないと糾弾し、自分がその地位を手に入れようと企んでいる。

 くそ、くそ、くそ。

 ワタシは上手くやってきたはずだったのに。幼い頃から後継者になるために行動して、ようやくその地位が目前まで迫っていたのに……!

 あとは待っているだけだった。お父様がワタシにその地位を譲り渡すその日まで。


 けれど、ワタシは負けた。

 現状が全ての答え。


 また記憶が混濁してくる。頭の中で「りょーこ」と呼ぶ声が聞こえてくる。

 ああ、ワタシはもう本当に駄目かもしれない。戻れないかもしれない。こうやって狂っていき、あの作品の『悪役』になってしまう。実の弟の手で無様に洗脳されて、父親を刺し殺す愚かな『悪役』。

 たまらなく悔しいけれど、今のワタシには成す術がない。あの子に、弟に対抗する力が何もない。


 ごめん、ごめんね。あの時、手を掴めなくてごめんね。

 許さない、絶対に許さない。


 『前世』の懺悔と、弟への愛憎が交錯する。

 「ごめんね」と「許さない」という言葉を繰り返すワタシは、さぞ狂人に見えただろう。

 自分ではどうにもならない感情の渦に飲み込まれていき、やがて意識を失った。

お読みいただき、ありがとうございます。

本日から、新しいお話をお届けします。

本日は2話更新、2話目は21時すぎに投稿予定です。

よければ、もう少しお付き合いください。

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