31話 第2の妄想犯行 解決篇 Part.2
第2の妄想犯行 解決篇 Part.2
【202X 1月1X日 PM15:00】
【ほこやぎビル 4階ほこやぎ商事 空き会議室 】
【残解決時間 91時間】
まずい、このままでは萬屋記録局の森咲とかいう局員に私の計画が暴かれてしまう…………
でもちょっと待って、あの日のあの時間のここでの山北と私のやりとり、私が山北を落とした方法までは、コイツは知らないし、知る術も無い。
でも、改良ゴーグルの事をうっかり話してしまった事は、こっちのミス。
だからと言って、山北を落として殺した犯人を私にすることはできないし、証拠もない。
「改良ゴーグルの事ぐらい、私は備品管理部に所属してるのですから、知っていて当然ではないですか? 森咲さん」
「その様なことを中崎さんが言って来る事は、僕は予想していました。
では中崎さん、この音声を聞いていただけますか?」
備品管理部の中崎杏さんに営業部所属の山北悟さんが、この会議室から転落事故に見せかけて、殺められた事件で、中崎杏さんが事件当時にこの会議室にいた事の根拠と考えを、これから僕は、この会議室にいるみんなに話をする。
まず僕がこれから聞いてもらうものは、事件当時に中崎さんが会議室にいた可能性を示す、根拠だ。
『ピー、202X年1月1X日 午前10時35分、業務用携帯端末以外からのペアリング接続を確認しました。
情報管理部セキリュティモードを起動…………機密情報漏洩防止の為、音声記録を開始します……』
『杏ちゃん、話があるってわざわざ空き会議室に呼び出すなんてさ。もしかしてやっと付き合ってくれる気になった?』
『ええ、杏、決めましたょ! 将来の有望の山北さんの奥さんになりますょ! でも山北さんが本当に杏だけを愛してくれるのか、確かめたいなー、ダメ?』
『なにを言ってるんだよ、杏ちゃん……で、どんな方法で確かめる? でも今は勤務中だし、会社の中では流石に誰か来るから、ダメでしょ?』
『えー 山北さんにとって私は、そのぐらいの位置でしかないんだぁ…………杏、かなりショック…………』
『泣くなよ、杏ちゃん。俺のモノになってくれるなら、なんでもやってやるよ』
『本当? じゃあ〜、私と中崎杏を愛していますゲームをやってくれますぅ?』
『いいね、どういうゲーム?』
『じゃあ〜、まずこのゴーグル、着けるね』
『いいねー、やってやるぞぉ! 杏ちゃん』
『ピー、202X年01月1X日 午前10時40分、ペアリング遮断、音声記録終了…………情報管理部のセキリュティ端末へのデータ転送完了』
この音声は、この会議室にある無線接続式スピーカー内蔵のテーブルに事件当日のあの時間に業務用端末以外からのスピーカーへのペアリングが確認された時、情報漏洩へのセキリュティ対策として、記録される音声データをほこやぎ商事の情報管理部のセキリュティ端末へ転送されたものだ。
「はあ? 勝手に録音するなんて、プライバシーの侵害ですよ! ありえない!」
「中崎さん、ほこやぎ商事の機密情報漏洩対策は、あなたを含めた社員さん達を守る為でもあるのですよ。
会社が用意したシステムに許可無く、私物のスマホを使って、アクセスする方が逆にまずいと僕は思ってしまうのですが、違いますか?」
「ぐっ……確かにあなたの言いたい事は分かってるわ、でも私は、ゴーグルを山北に嵌めただけ、違う?」
この人は、自分がまだ有利的なポジションにいると錯覚している様にも見えるな…………なら僕は、次の音声を流すだけだ。
「では中崎さん、次の音声を聞いてください」
「は? 次の……音声?」
『ピー、202X年1月1X日 午前10時50分、業務用携帯端末以外からのペアリング接続を確認しました。
情報管理部セキリュティモードを起動…………機密情報漏洩防止の為、音声記録を開始します……』
『おい! 中崎ぃ! どこにいるんだよ! 何が、中崎杏を愛していますゲームをやる為に、ゴーグル着けるねだ! お前! 俺を嵌めやがったな! 許さなねぇからな! 今すぐ! 何も見えないこのゴーグルを外せ!』
チャリン!
『コインの音? そこにいるのか中崎! チッ! イッテぇな! 中崎! どこへ行きやがった!』
『ここですよ、マウントルさん! こっち! こっち!』
『中崎、そこか…………テーブルの角?』
チャリン!
『今度は前から? どこにいやがる! 中崎!』
『こっちですよー、マウントルさん! 早く杏を捕まえてみなよ! まあ〜、無理だと思いますがぁ』
『中崎ぃ、テメェ、そこか! ん? これはコイン? 寒…………冷た。雪、これは窓が空いてる?』
『はい、正解……でも残念、さようなら、マウントルさん!』
『ん? 中崎! お前、いつの間に俺の後ろに』
『……嫌だなぁ〜マウントルさん、杏はず〜とこの会議室にいましたよぉ…………でも最後に一言だけ…………今までお世話になりました!』
『中崎ぃ! やめろぉぉ! うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
『あーあー、落ちちゃったなぁ…………あ、忘れてた……………………キャァァァァァァ!』
『ピー、202X年01月1X日 午前11時05分、ペアリング遮断、音声記録終了…………情報管理部のセキリュティ端末へのデータ転送完了』
「…………チッ、私とした事が…………このテーブルが搬入された時の動作チェックテストをした際のペアリング設定をしたまま、設定を切り忘れていたなんて…………スマホの電源を切ればよかったわ」
これは、間違いなく事件発生時に中崎杏さんがこの会議室にいた証拠となる音声記録である。
あの時に聞いた悲鳴は、中崎さんが山北さんを転落させた後、誰かに山北さんを発見させる造られた声だった。
しかし中崎さんは、この音声を聴いてもなお、まだ自身の考えがある様だった。
「…………森咲さん、幸せコインをなぜ私が、探しに来ると分かったのです?」
「それは…………あなたが持っているコインが、実はあなたのコインでは無かった。違いますか?」
今回の事件で、使われた幸せコインは少なくとも、中崎さんのコイン、窓の排水路の雪に中へ隠した東川さんのコイン、山北さんを窓に誘導した際に使用された2枚コイン、計4枚だ。
僕が説明しようとすると、明堂警部が僕を制止して、ほこやぎ寺の話を始めた。
「あんた、昨日、ほこやぎ寺にいたな? 自分が無くした幸せコインを見つけたから、本当に自分が持ち主なのかを確認したいと職員さんに申し出たが、最終的に断われた。違うか?」
「…………だからなんだというのです、私はただ、自分のコインである事を確認したかっただけですよ」
「そうか………………森咲がロッカーの中で見つけた、隠されていた幸せコインの持ち主はあんた、だったよ。
ほこやぎ寺の幸せコインの過去の購入履歴データも見せてもらったが、あんたの名前があったのは、今年の幸せコインのみだったよ」
「…………………………」
中崎さんは沈黙してしまった。
これがあの子の妄想犯行計画を中崎さんに実行させた唯一の綻びである事の証明であった。
中崎さんがほこやぎ寺に幸せコインを持って行く時点では、自分のコインであると中崎さんは、信じ込んでいた。
しかし自分が持つ幸せコインが持ち主本人ではない場合は、個人情報保護の観点から拒否されてしまう。
だからその時、中崎さんはロッカーに隠した。
隠した幸せコインと自分のコインに、入れ違いが発生していた事に気付かずに……
だから今、中崎さんは僕達の前にいるのである。
「まさかそこまで逆算されるとは思いませんでしたよ…………でも許せなかったんです、あの男が……」
確かに山北さんにも原因があったのかも知れないだからと言って、山北さんを殺める以外の方法もあったはずだ…………でも、これはあの子が組んだトリック、中崎さんはその行動に従っただけなのである。
「中崎さん、あなたは人の命をなんだと思っているのですか? 確かに山北さんにも原因があったのかも知れない……でもあなたが、一人の人間である以上、完全なる犯行は、不可能に近いのです。
あなたは、一線を越えてしまった、それだけなのですよ、中崎さん」
「……分かってますよ、そんなことを言われなくても…………あなたは知らない、山北さんが…………」
中崎さんが僕らに山北さんの事を話そうとした時、ずっと僕と中崎さんのやりとりを見ていた八色さんが、中崎さんを制止した。
「そこまで! 中崎杏さん、あなたの話の詳細は、ほこやぎ署で聴きます。明堂くん、お願い」
「了解致しました! 萬屋警視」
明堂警部によって、中崎さんの両手には、黒い輪がかけられた。
そして、中崎さんはほこやぎ警察署に連行されたのであった。
【第2ステージ 暗落の妄想犯行 クリア!】
【残解決時間 90時間をリセット完了】
31話 第2の妄想犯行 解決篇 Part.2 完
32話へつづく!




