彼女の正体
昼休みの出会いをきっかけに、春名ミサキと白神ユイは少しずつ言葉を交わすようになった。
ユイにとって、それは“日常”という名の救いだった。
けれど、出会いが偶然だけで成り立つほど、この学園は平穏ではなかった。
――放課後、校舎裏。
「ここ、本当に人気がないんだね」
ミサキは何気ない顔で言ったが、ユイの視線はすでに警戒していた。
(……空気の流れが変わってる)
微かな違和感。風の匂い、周囲の音、全てが“異空間に近い”。
「白神さん、あんたさ――異空間、見えるでしょ?」
ユイの心臓がドクンと跳ねた。
「……なに?」
「昨日の旧校舎。あの空間のひずみ、あなたが処理したでしょ?」
ミサキの目は、優しげな仮面を外し、研ぎ澄まされた刃のように鋭かった。
(どうして、知ってる……?)
ユイが一歩退こうとした瞬間、ミサキが右手を上げた。
その掌から、金色の紋が浮かび上がる。
「私も、“こちら側”の人間だから」
瞬間、校舎裏の空間がひび割れ、異空間が姿を現す。
だがそれはユイの《夢境転域》とは異なる性質───まるで“陽”と“陰”のような相反する空間。
「驚かせてごめん。でも、私があなたを見張っていた理由、これで分かったでしょ?」
「……見張ってた?」
「うん。私、異空間管理局の派遣学生。名前は“春名ミサキ”ってのは仮名。本当の名は――」
ミサキが口にしかけた瞬間、空間の奥で“何か”が蠢いた。
「――来たね。今は説明より、排除が先」
ミサキは指を鳴らす。
すると、異空間から這い出した黒い影が、一斉にこちらへ襲いかかってきた。
「白神ユイ。あなたと私、戦う相手は同じみたいだね」
ユイは驚きながらも、静かに頷いた。
(この人も……戦っているんだ)
こうして、二人の少女の“共闘”が始まる。