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転校生、白神ユイ
新学期の朝、白神ユイは緊張した面持ちで校門をくぐった。
制服の袖をぎゅっと握りしめ、周囲を見渡す。まだ誰も知らない、この学園に転校してきたばかりの少女。
「新しい場所、うまくやれるかな…」
彼女の声は誰にも届かず、風にかき消されていく。周囲の生徒たちは、ちらりとこちらを見てささやき合う。
「また転校生か」
「なんだか冷たそう…」
そんな視線を感じながら、ユイは教室へと歩みを進める。
窓の外、青空の向こうにわずかに揺れる景色。誰にも見えない夢の城プラシア城の輪郭が浮かんでいた。
ユイは息を吐くと、心の中でそっとつぶやいた。
「夢境転域、準備完了」
その瞬間、微かな波紋が彼女の指先から広がり、見えない異空間の扉が静かに開き始めていた。
物語の幕開けを告げる転校生の一歩。――白神ユイの異界を操る日常が、静かに動き出す。