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あかべこ発見! しょっぴくわよ

・ ・ ・ ・ ・



「っつうかイーディ、おぇなぁぁ!? お父ちゃんやお母ちゃんが、どんだけ心配したと思ってんだよッ。かわいそうに姉ちゃんなんか、目ん玉泣きはらしてたぞ、ごるぁ!? 迷子探しが迷子になりゃがって、あんちくしょうッ」


「ううう、だってぇ」



 足が疲れちゃってもう歩けない、とぐずる少年をおんぶして行くヤンシーが、小言をいっている。



「まあまあヤンシー、とにかく無事に見つかったからよかったじゃない。まだ日のあるうちで、助かったわよ!」



 その後ろを、アイーズはのしのし歩いていった。ちょっとおくれたヒヴァラが、声をかける。



「りん、おいでー。りん



 騒動の大もとである脱走首謀者は、まるい瞳が実にかわいらしい黒牛だった。


 ヤンシーが常備しているしょっぴき縄、もとい捕縛拘束用の細縄を首輪につながれて、今はヒヴァラに引かれている。


 ……仔牛と言っても、ゆうにアイーズの丈を上回る壮大なお子様だ。



「おら慌てて出てきたから、べこ縄わすれて持ってこなかったんだ。りんはずうっと前に見つけてたんだけど、帰る方向に全然ついてきてくれないんだもん」


「縄を忘れてってなぁぁぁ。おぇ、巡回騎士がそれやったら、いっぱつでくび・・だぞぉぉ!? そういう時ゃあ、帯を外して使え! ごるぁぁ」


「あーそっかぁ……、ほだな~いだよねえ


「気づけ! ごるぁぁ」



 ヤンシーはまだまだ、イーディにぎゃんぎゃん説教継続中である。


 アイーズは仔牛の反対側、ヒヴァラの隣に寄っていった。



「……さっき、ごめんね。ヒヴァラ」


「なにが?」


「道あってるのかって、きつく聞いちゃったこと。疑って、ごめんね」



 知らない土地で不安があったし、疲れていたし……。正当化と言う名の言い訳を、アイーズは付け足さないでおく。何をどうしたって、余計にみっともなくなるだけだ。


 ふるる。高ーい位置にある頭を、ヒヴァラは横に振った。



「いいんだ、全然。どうしてイーディの行き先わかったのか、うまく説明できない俺が悪いんだもん」


「……でも本当に、すごいね? 探しもの得意って、昔はそんなこと言ってなかったわよね?」


「うん。最近とくいになったんだ」


「そうなの? ……おっと、りんや。みちくさはもうだめよ、きりきりお歩きー」


「あはは。ほんとかわいいなあ、赤んぼうべこ。あかべこー」



 ヒヴァラに声をかけられ引かれると、りんは素直についてくる。やんちゃな女の子なのに、なぜだか初対面のヒヴァラになついている様子だった。



「わたしも次に失くしものしたら、ヒヴァラに探すの手伝ってもらおうかな」


「うん、まかしといてよ。……でも、アイーズでも失くしものなんてするの?」



 しない。アイーズは子どもの頃から、ほとんど物を失くさなかった。忘れ物だってしない。


 そもそもあんまり物を持っていないし、大事なものにはきちんと気を配っている。



――いちばん大っきな失くしものは、自分から・・・・出てきてくれたしねー。



「? なに? アイーズ」



 アイーズが見上げて笑いかけるヒヴァラのやぎ顔が、不思議そうに小首をかしげた。



「おまわりのあんちゃん。おら、腹へったよう」


「どの口が言うんじゃ、お前ぇぇぇ」



 やがて細道の向こう側、農人らしき男性たちがやってくるのが見えた。



「あっ! イーディ、イーディ坊かよう!?」


っげでくれたんかー! おまわりさん!」



 手を振ってくる男たちの中から、歓声が上がる。りんを引いたまま、ヒヴァラがヤンシーのそばにそうっと寄った。



「ヤンシーお兄さんが見つけた、ってことにしといてください。お願いだから」


「あー? おう?」



 ヤンシーは深く考えずに、ヒヴァラにうなづく。……



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