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いま明かされる、荘園の秘密!!

 

「ちょっと待って!! それじゃあここって、ディルト侯の荘園・・なの!?」



 アイーズも、叫ぶように聞かずにはいられなかった。


 ≪荘園≫、長兄アンドールから可能性として話は聞いていたが……。ディルト侯はやはり、北部穀倉地帯に財源を持っていたのだ!



「うん、そう」



 ペレーグはあっさり認めてうなづく。



「レイミアとダウルの父親が買ったのを、今はダウルが相続してんだけどね。俺はまあ、義理の庶子のおこぼれと言うか……。レイミアの身内ってひいきで、ダウルに管理を任されてんのさ」



 ペレーグの母親は、北部人と結婚したイリー女性だった。この地で未亡人となっていたのを、故ディルト老侯が幼いペレーグごと引き受けて、ここカシュトーン荘園の屋敷に住まわせていたのだと言う。



――荘園に、奥さんって……。荘園所有者のイリー貴族は、現地にはほとんど行かないって話じゃなかったのかしら?



 故ディルト老侯が例外だったのかどうかはわからないが、とにかく老侯は北部穀倉地帯へよくやってきた。やがてレイミアが生まれる。北部とイリーの混血であり、どっちつかずの容貌のペレーグと異なって、完全にイリー系にしか見えないレイミアを、老侯はかわいがった。



「子ども心には、悪い人じゃなかったよ。来るときゃレイミアにだけでなく、俺にも菓子だの本だの見つくろってきてくれてさ? ただ……」



 幼い娘を膝にのせ、上機嫌の父親はまろやかな話ばかりをした。



≪レイミアちゃんがたくさん勉強をして、すてきなお嬢さんになったなら。イリーのお父さんの国に連れて行こうかね? 向こうでお姫さまのように暮らすかい!≫


≪うん!≫



 荘園の外にも出て、現実・・を知っていたペレーグ少年は何も言わなかった。時々やってくる義理の父が、どういう人なのか。ここ北部にいない時間に、何を隠しているのかを、ある程度知っていたからだ。けれど叶わない夢を抱えているくらいは、妹にも許されると思っていたのである。


 ところがある時、突然転機が訪れた。その頃だいぶ来訪の頻度が減っていたディルト老侯が、息子を従えてカシュトーン荘園にやってきたのである。


 当時の荘園経営陣に、老侯はダウル・ナ・ディルトを紹介した。ゆくゆくは長子に、荘園の全権を相続させるのでそのつもりでいるように、と。


 ダウル・ナ・ディルトの姿に、ペレーグはたまげていた。十四のレイミアは、さらに驚いていたのだろう。初めて会う異母兄は、金髪碧眼で絵物語に出てくるようなイリー貴公子そのものだったから。


 数年後、令嬢をマグ・イーレに引き取ると言う便りが届いたとき、レイミアは全く迷わずに準備をして出立する。妹はむしろそれをずっと待っていた、とペレーグには思われた。


 妹のついで・・・恩恵を受け、家庭教師からイリー式の教育を施されていたペレーグは、その後カシュトーン荘園の経営を任されるようになる。


 東部大半島からやってくる流入民を厳選して園内で働かせ、栗の質を維持して国外に高く売りつける。主な卸先はテルポシエのティルムン貿易商だった。ペレーグは昔も今も、頻繁にテルポシエと北部穀倉地帯を行き来している。妹レイミアからの便りで、ダウル・ナ・ディルトが順調に昇進を重ねたこと、王子の目付け役としてティルムンへ行ったことも知っていた。


 レイミア本人は、マグ・イーレのディルト家からファダンの文官騎士に嫁いだ。だいぶ年齢の離れたやもめ・・・の家に行った妹を不思議に思い、ペレーグはこっそりファダンを訪れたことがある。



≪ダウルに言われたことですから≫



 非の打ち所のないイリー貴婦人に変わっていたレイミアは、ペレーグに対しそう繰り返すばかりだった。



「……うちに、来てたのかい? ペレーグさんに会ったおぼえ、ないんだけど」



 ここまでで十分、長い話である。アイーズとヒヴァラは緊張してはいたが、ペレーグを強く見据えたまま、すでに腰掛に座していた。


 そうしてただしたヒヴァラに、ペレーグは頭を振る。



「いや。君が生まれる前の話だからね。その後ソーマさん……おやじさんとは、家の外で会っていたし」




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