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スターシステム★黒羽ちゃんとお供え騎士登場!

 

 猛禽のようなたくましい翼一対を背負ったその若い女は、にっこりと笑って老騎士を見上げた。


 たたんではいるものの、その黒きつばさは長身の老騎士を優に超える丈がある。しかしその中心にある女の身体は、ごく小さかった。


 女は白地にみどりの茎わかめ柄ねまきを着ているが、その長い裾から突き出た裸足のつま先は、石床に触れずに浮いている。



「驚きましたね~! 先だってファダンの≪五つ沼≫で、黒羽ちゃんの会ったお嬢さんが、バンダイン侯の妹さんだったとは!」


『そうそう、ふかふかのかわいこちゃん! わたし球技補佐きやでいのおばさんにのりうつって・・・・・・色々話したんだけど、ふかふかちゃんはお兄さんに全然似ていないから、さっぱり気が付かなかったわ~!』


「いやー黒羽ちゃん。毛の量だけみたら、わりとそっくり兄妹かもですよ~??」


『はっ! そう言われればそうね!?』



 常人の目と耳にはわからない存在に向かって、ミルドレ・ナ・アリエはぺらぺらしゃべっている。



「でもって、あの男の子でしょう? 呪われているって言うのは。黒羽ちゃんの手前、精霊たちは引っ込んでいるように見えましたけど……。私にもわかりましたよ。みやび・・・な感じなのと、てやんでえ風なのが一体ずつ、ついて・・・いましたねぇ!」


『ええ。おみやびなのは、あれは完全無害なお友達ね! 単に仲良しで一緒にいるというだけよ。でも、べらんめえ風と男の子が心配なの。ふかふかちゃんが不安になっているのも、もっともだわ! 悪いやつじゃないのが、まだ救いだけど』



 ふ~~、ミルドレはなま乾きの髪を揺らして頭を振った。金髪でなし、赫毛(あかげ)でなし、その中間が段々になった風変りなちりちり髪が、蜜蝋みつろうあかりに照る。



「私の前ではあの二人、呪いについてはおくびにも出さなかったけれど……。精霊に取りつかれている上に、父親が奴隷に囚われているかもしれないだなんて。ヒヴァラ君は、ずいぶんとこってり不幸を盛られたものですね……かわいそうに」


『でもあの男の子には、ふかふかちゃんって言う強烈な幸運がついているんだもの。あの優しくて真っすぐな女の子が一緒にいる限り、呪われ彼氏は大丈夫よ』



 黒い翼を持つ若い女は、そう言って笑った。


 闇夜そのままの豊かな黒髪がくるくると取り巻くその小さな笑顔を見つめて、老騎士ものほほんと笑う。



「黒羽ちゃんが応援するお嬢さんですからね。ミルドレも全力で応援しましたよ!」


『ふふッ、そうよ。わたしイリー守護神だけど、専門は恋の成就なんだもの。ふかふかちゃんは呪われ彼氏を、それはそれは大切に想ってるの。二人一緒に苦難さまざまを乗り越えて、どうにか幸せにたどり着いて欲しいわね!』


「ヒヴァラ君の方は、どうなのでしょう? 恥ずかしがり屋っぽいですね、私の前ではほとんどしゃべらなかったし。でも雰囲気的には、バンダイン嬢にずぶ沼ぞっこんなのかなぁ」


『……』



 朗らかに話していた女神が、ふつりと口をつぐんだように思えて、ミルドレはうらららららと思う。


 苦節四十年以上の付き合いだというのに、何ぞ女神の逆鱗に触れることを言ってしまったのだろうか?



「黒羽ちゃーん?」


『……ミルドレ』



 見上げてきた小さな顔。


 遠い昔に城の鐘楼の先っぽで出会った日から、まったく変わらないそのいとおしい顔が、悲しみに覆われている! 


 いまやおじい騎士となったミルドレ・ナ・アリエは、胸が張り裂けそうになった。


 ぎゅう!


 全力脱力ぶっちぎりのくつろぎ系、茎わかめ柄のねまき袖に包まれた両腕をのばして、女神はほよんと出ているミルドレのお腹を抱きしめる。


 やわらか弾力がはねかえる、ほよよん!















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