最初のゲーム「嘘発見ゲーム」
経過時間:3日目 朝
壊れ始めた信頼の中、運営が次に提示したのは――言葉の矛盾で犯人をあぶり出すゲームだった。
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(部屋、朝。誰も口をきかないまま、沈黙が続いている)
「「3日目の朝です。
本日から、“嘘発見ゲーム”を開始します」」
「「ルールは単純です。
・運営から出される“お題”に、順番に答えてもらいます
・必ず真実を答えること
・ただし――“犯人だけは嘘しか答えられません”
・3つの質問終了時、全員で“誰が犯人か”を議論してください
・間違えた場合、罰があります」」
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美乃「嘘しかつけない……? どういうこと?」
賢治「つまり……犯人は、正直なことが言えないってことだな。
たとえそれが自分にとって都合が悪くても、“真実”は言えない」
千紘「うそしかつけない……か」
龍「どうやって見抜くんだよ。そんなの……」
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「「では、第1のお題です。
“昨日、あなたは誰を最も疑っていましたか?”」」
【順番:千紘 → 美乃 → 賢治 → 龍 → 翼】
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千紘「……私は、美乃。
私へのいじめの件で、嘘をついてるかもしれないと思ったから」
美乃「私は……千紘。
昨日、妙に感情的で、あの暴露を利用してるように感じたから……」
賢治「……俺は、千紘
はっきりいって何を考えてるか分からなんからな」
龍「俺は翼。
ずっと“信じよう”って言ってて、何か企んでるように見えた」
翼「……俺は、誰も疑ってなかった。
信じたいって思ってたから」
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「「第2のお題。
“この中で一番信頼しているのは誰ですか?”」」
【順番:美乃 → 賢治 → 龍 → 翼 → 千紘】
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美乃「翼くん。今も、少しだけど……信じたい」
賢治「……千紘だな。昨日も冷静だった」
龍「誰も信じちゃいねえけど……強いて言うなら、美乃」
翼「千紘。今は一番、正直に向き合ってる気がするから」
(このタイミングで千紘の顔に、ゆっくりとした「笑み」が浮かぶ)
千紘「ふふ……私も、翼くんかな。
でもね……“信頼”って、簡単に崩れるものなんだよ……?」
翼(………千紘??)
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「「第3のお題。
“この中で“最も自分に都合の悪い情報”を握っていると思う人物は?”」」
【順番:賢治 → 龍 → 翼 → 千紘 → 美乃】
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賢治「……龍。昨日のゴタゴタで疲れたわ」
龍「賢治。裏切りは一回だけじゃなかったかもしれねぇからな」
翼「……美乃。昔の俺の家のこと、知ってたし……」
千紘「ふふっ……みんな、上手に隠すね。
でも、私は賢治かな。“何か”をずっと、隠してる気がするから……」
(賢治、ぴくっと眉が動く)
美乃「私は……千紘。なんか、全部お見通しって顔してるの、怖いよ……」
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沈黙が落ちる。
3つの質問は終わった。
千紘が、静かに立ち上がる。
その口元には、依然として笑みが浮かんでいた。
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千紘「さて――嘘つきは、誰でしょう?」
(全員、千紘を見る)
千紘「私は、こう思ってる。
“嘘しかつけない”というルールは、ものすごく不自由。
それはつまり、“真実を隠す”だけじゃなく、
“自分が本当に思っていることを、言えない”ってこと」
(千紘、ゆっくりと歩きながら、皆を見渡す)
千紘「例えば、“一番信頼してるのは誰?”という質問で、
“千紘”って答えた人が2人いた。
――賢治さんと翼くん。
……それって、“ほんと”?」
賢治「……あぁ?俺は……そう思ったから答えたまでだ」
千紘「でも、“あなたが最も疑っている相手”に、私の名前を出したわよね?」
(その言葉に、賢治の目が細くなる)
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千紘「矛盾。
その言葉が、このゲームのカギだよ。
矛盾こそが、“嘘つき”の証だから」
(千紘、にぃっと笑う)
千紘「面白いね、これ。
人って、隠してるものが多いほど、矛盾を作りやすい。
でも、それが一番、バレやすいんだよ?」
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美乃(小声)「……千紘?」
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「「それでは、10分間の“話し合い”を開始してください」」
「「この時間が終わったら、“犯人”を指名してもらいます」」
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(その瞬間、カメラのようなものが「カチッ」と音を立て、部屋の天井から照明が一段階明るくなる)
皆の影が、はっきりと映し出される。
照らされる本性。暴かれる言葉。
そして――その中のひとつだけが、偽りの光を帯びている。
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(???)
「ちっ……うるせぇ女だ……!
このまま黙ってりゃ、乗り切れる……乗り切れる……!!」