裏切り者
経過時間:2日目の朝〜夕方
友情の綻びは、小さなヒビから崩れ落ちていく。
そして今日――さらなる火種が投下される。
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朝。
例によって、スピーカーが鳴り響いた。
「「皆さん、おはようございます。
本日は“最も信頼されている人物”の発表から始めましょう」」
「「それは――鳥越翼さん、あなたです」」
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翼「えっ……僕……?」
「「あなたに“特別なカード”を支給します。
このカードは、ある“重要な能力”を持っています。
ただし、使用方法は――自分で気づいてください」」
(機械音。小窓からカードが滑り出てくる)
翼が拾い上げたそれは――真っ白なカードだった。
表にも裏にも、何の印字もない。
賢治「白紙……?」
美乃「それって……何かの伏線じゃないの……?」
龍「“選ばれた”ってことは、やっぱり怪しいよな……」
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「「そして、本日の追加ヒントをお届けしましょう」」
「「加瀬美乃さん、あなたはかつて、窪田千紘さんへの“いじめ”に一度だけ参加しましたね。
千紘さんの母親からもらった大事なイヤリングを壊したという」」
千紘「……!」
美乃「……違う、違うの……私は……!」
千紘「見て見ぬふりじゃなかったんだ……本当に、やったんだ……!」
美乃「脅されてたの!断ったら、私も……!」
千紘「関係ない……私を傷つけたのは、美乃でしょ……!」
翼「千紘、やめて……!」
千紘「やめてって……何?翼くん、私に我慢しろって言うの?
“信じよう”って、何? あなただけ、何も暴かれてないから、そんなキレイ事言えるんだよ!」
(翼、言葉を失う)
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「「次に――五木田賢治さん」」
「「あなたは高校時代、親友・佐藤龍さんの“交際相手”と
密かに関係を持ちました。“ほんの出来心”だったそうですね」」
龍「……おい、賢治。今のは……」
賢治「……美鈴ちゃんのことだ……事実だ」
龍「……は?」
賢治「お前の彼女が、俺に告白してきたんだ。…」
龍「“だから”?なんだよ!断れば良かったろ!」
賢治「……そうだったな。すまん。
でも浮気されるお前もわるいだろ??」
龍「ふざけんなよ……!」
(賢治の胸ぐらを掴む龍)
翼「やめろ、二人とも!」
(龍が翼を突き飛ばす)
龍「お前もだよ、翼……!
何でお前だけ、何も出てこねぇんだ?
白いカード?信頼?“そういう役”を最初から割り振られてたんじゃねぇのか?」
賢治「……確かに。
このゲームの“運営”と通じてる可能性、ゼロじゃない」
美乃「まさか……翼が……?」
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千紘「……私は、違うと思う。翼くんは……」
(その言葉に、全員が千紘を見る)
千紘「……いや、やっぱり、わからない。
皆が壊れていくのを止めようとしてるようで……
それを楽しんでるようにも、思える」
翼「……そんなこと、あるわけない……」
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部屋の空気は、最悪だった。
全員が誰かを疑っていた。
視線の矛先が、静かに――翼に向かい始めていた。
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翼(心の声)
(……俺は……皆を信じたいだけなのに……)
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だが、その頃――
この様子をどこかで“見ている”何者かが、
ゆっくりと笑みを浮かべていた。
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(???)
「もっとだ……もっと壊れてしまえ。」