壊れていく友情
経過時間:1日と数時間
沈黙の朝が訪れた。
支給品は同じように届いていたが、誰も口を開かない。
クラッカーを口に運ぶ者、ただ座り込む者、遠くを見る者――。
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龍「……誰が、こんなこと調べてんだよ……」
美乃「……もう、食欲もない……」
賢治「昨日の暴露……情報源がどこからなのか気になるな、“見ていた者”がいるってことか。」
千紘「……そんなことより、どうするの?今後。
また、誰かの過去が暴かれて……信じられなくなるの……?」
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誰も、答えない。
昨日までの空気とは、明らかに違っていた。
ほんのわずかに、誰かが誰かを「避けている」様子がある、目をそらす。距離を取る。声をかけない。
翼「ねぇ、みんな……俺たち、変わってないよ。
言われた過去があっても、今の“ここにいる俺たち”は、同じじゃないか?」
賢治「お前は甘い、過去ってのは、そう簡単に消えるもんじゃない」
千紘「でも、翼くんの言うこと……私は、少し救われるよ」
美乃「……でも私……千紘を、助けられなかった、見てたのに、何もできなかった、こんな“友達”……いていいの……?」
千紘「……私も、信じたかった。美乃のこと、信じたかったよ……」
美乃「ごめん……ごめんね……」
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その時だった。
龍が、小さく舌打ちをした。
龍「ったく……この空気、耐えられねぇよ……」
翼「……龍……」
龍「何が“信じよう”だ、全員、何か隠してんだろ?
なあ、翼。お前はなんでそんなに“きれいごと”言えるんだよ?」
翼「……俺は……本当に、信じたいだけで……」
龍「それが怪しいんだよ、誰かを信じろなんて、
よく言えるよな。“裏切り者”がこの中にいるんだぞ?」
賢治「落ち着け、龍。疑い出せばキリがない。
ここで崩れたら、ゲームの思う壺だ」
龍「ならお前は、俺の“過去”をどう思ってんだよ?」
(場の空気が凍りつく)
賢治「……正直軽蔑してる……良くもまあ俺たちと酒を飲めたもんだなあってな!」
龍「賢治てめぇ!ふざけんな……!」
美乃「やめて2人とも!」
(千紘が小さく呟く)
千紘「この中に、裏切り者がいるなんて……思いたくないのに……誰かを信じるのが、こんなに怖いなんて……知らなかった……」
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「「本日は、追加の“暴露”はありません」」
「「ですが、皆さんの行動は常に監視されています。
“誰を信じ、誰を疑うか”は、あなたたち自身が決めてください」」
「「“最も信頼されている人物”には、特別な“役割”が与えられます―― 明日、発表いたします」」
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美乃「……信頼、されてる人……?なにそれ……役割って……」
千紘「なんか、ゲームが進んでいってる……?」
翼「“信頼される”ってことは……選ばれるってことだよね……?」
賢治「いや、違う。“選ばされた”かもしれない。
次に疑われるのは、その“信頼されてる”人間かもな」
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夕方。
5人の関係は、確実に変わりはじめていた。
互いの距離。
視線の動き。
一瞬の間。
――崩壊の音は、まだ小さい。
でも、それは確かに始まっている。