始まりの不安
翌朝。
コンクリートの部屋に光はなく、時間の感覚も曖昧だ。
だが、天井のスピーカーから、再び無機質な音声が流れた。
---
「「1日目を開始します。以下が今日の支給品です」」
「・飲料水 5本
・クラッカー 10枚
・メモ帳1冊とペン1本」
「「それでは健闘を」」
---
龍「ちょ、ちょっと待て!?飲み物5本?クラッカー10枚!?一日でこれ!?」
美乃「……足りるわけないでしょ……」
千紘「みんなで分けよう……ちゃんと、平等に……」
---
5人は、部屋の隅々を調べ始めた。
鉄の扉、固定された監視カメラ、窓なし。空調口はあるが、手を入れられるほどの隙間はない。
賢治「この扉……電子ロックか。パスワード式じゃない。内側からは完全に開けられない構造だな」
龍「まじで密室じゃん……どうやって殺されるんだよ……」
美乃「やめてよ……想像するだけで怖い」
千紘「でも……脱出できる方法は、きっとあるよね?“裏切り者を見つけたら出られる”って言ってたし……」
翼「その“見つける”って、どうやって……?」
---
部屋の中央に、唯一の道具――メモ帳とペンが置かれている。
賢治「記録を取るためだろうな。誰が何を言ったか、何が起きたか……そういうのを。ゲームに必要ってことか」
千紘「……まるで、推理ゲーム……」
龍「いや、俺らリアルに命かかってんだけどな……」
---
メモ帳を誰が持つか、相談が始まる。
美乃「記録係、誰がいいかな。中立っぽい人がいいと思う」
千紘「じゃあ……翼くんがいい。前に、日記とかつけてたよね」
翼「えっ……あ、うん……別に、いいけど」
龍「文句ないぜ。翼なら変なことしなさそうだしな」
賢治「異議なし。情報の管理と記録は一任しよう」
---
こうして、鳥越翼が記録係を担当することになった。
メモ帳の最初のページには――
「1日目
支給品:水5、クラッカー10、メモ帳」
と、丁寧な文字で記された。
---
その夜。食料と水は少しずつ分け合い、5人は床に寝そべる。
明かりは一晩中、ついたまま。
不安は拭えないが――誰も、誰かを疑おうとはしなかった。
千紘「……明日も……生きていられるかな……」
翼「大丈夫。絶対、大丈夫だから」
龍「明日になったら、扉開いててさ。『ドッキリ大成功!』とか出てきたら、マジでぶん殴ってやる」
美乃「それなら、みんなで一緒に……ね」
賢治「ああ。……一緒に出よう。絶対に」
---