信じる友達
冷たいコンクリートの部屋。
5人は、互いの顔を見ながらも、現実を受け止めきれずにいた。
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美乃「……ほんとに……なんなのこれ……」
龍「誰かが冗談でやってるとか……ドッキリとか、そういうんじゃねーのか?」
賢治「死ぬって言ってたぞ?下手な冗談なら悪趣味すぎる」
翼「でも……俺たち、なんでこんな目に……?」
千紘「……わかんない……」
不安な空気が流れる。
それでも誰も、誰かを疑うことはなかった。
それだけ、この5人の絆は――強かった。
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しばらく沈黙のあと、龍が声を上げた。
龍「なぁ、俺たちさ……高校のとき、何してたっけ?」
美乃「は?急に何言い出すのよ……」
龍「いや、だって……思い出話でもしてないと気が狂いそうなんだよ、俺。今思い出すの、高校の文化祭とか、楽しかったことばっかじゃん」
千紘「……あったね……懐かしい」
翼「……演劇部の出し物、全員でやったやつ……」
賢治「あれな。俺が脚本書いて、千紘が衣装、翼が音響、美乃が小道具、龍が……」
龍「俺は!主演だっただろ!」
美乃「という名のピエロ役ね。笑い取りまくってたけど」
龍「あのとき、女子からのアンケートで“笑える男子”堂々の1位だったんだぞ!?誉れだぞ!?」
千紘「ふふ……あのアンケート、懐かしい」
翼「“本当は頭良さそうな男子”1位が賢治だったな」
賢治「当然の結果だろ」
美乃「“将来詐欺師になりそうな男子”1位は……龍」
龍「なんでだよ!!信用ねぇな!!」
一同「あははははっ!」
笑い声が、ようやく部屋に戻ってきた。
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千紘「……こんな状況でも……やっぱり、みんな一緒にいると……安心する」
翼「うん……俺も。なんか、落ち着く」
美乃「……信じたいね、誰も裏切ってなんかないって」
龍「ああ。裏切り者とか、絶対いねぇよ。俺たちがそんなわけ、ねぇ」
賢治「同意。まずは落ち着こう。きっと、脱出の方法もある」
千紘「……3日あれば……きっと、何とかなるよね……」
美乃「大丈夫。私たちなら、大丈夫だから」
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5人は肩を寄せ合い、眠れない夜を静かに過ごした。
思い出話が、唯一の拠り所だった。
この中に「裏切り者」がいる。
そう告げられても、誰一人、それを信じてはいなかった。
今は、まだ。
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