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第13話:原作主人公の任務報告2

 魔導列車には、特級車両を超える待遇のVIP車両がある。

 王族やそれに準ずる地位の者が緊急で魔導列車に乗る場合、利用してもらうための空間だ。 公爵家の者でも利用はできない。

 一両丸々高級ホテルのラウンジのような豪華で過ごしやすい空間が広がり、食事なども備え付けられている。

 そのようなVIP車両にクラウスは乗っていた。

 紆余曲折を経てジグルドたちが魔導列車に乗り、自分も急遽乗車した形である。

 クラウスは通信魔導具を使い、オズワルドと王都の大臣たちにジグルド監視の結果を報告していた。


「……というわけで、フェリオス湖で横暴を働いていた湖賊もジグルドにより壊滅いたしました」


 クラウスの報告を受け、会議室は静寂に包まれる。

 ドロッセ村を出た後、旅人を襲い金品を奪っていた盗賊紛いの魔物召喚士を倒し、ベルクタウンでは毒草を売っていた薬草売りを見抜き、フェリオス湖では湖賊を壊滅。

 さらに、エルザシティでは金色宝犬の密輸まで防ぎ……という報告だった。

 大臣たちは暫しの間目を白黒させた後、わっと笑顔で沸き立った。


「あの下劣貴族がそんな善行を積んでいるなんて驚きました! いやぁ、人って変わるものですね!」

「50年の刑期が終わったときはどうなるかと思いましたが、いざ終わると何のことはない! 悪人が善人に生まれ変わっただけでした!」

「きっと収監生活が堪えたんでしょう! アークホール刑務所は国内で最も厳しい環境ですからな、わっはっはっはっはっ!」


 現国王オズワルドの咳払いに、大臣たちは会話を止める。


「大臣、貴殿らがクラウス卿の報告に喜ぶのも無理はない。もし事実なら、これ以上ないほど素晴らしいことだ。だが同時に、ジグルドの悪行を忘れたわけではあるまいな?」


 まったく笑わない厳しい視線に、どの大臣も罰が悪そうに顔を背けた。

 そんな大臣たちに、オズワルドは追い打ちをかけるように話す。


「ジグルドは幼少期から下劣な人物だった。入学したガルシア魔法学園では、毎日のように暴れていたらしい。学園が所蔵する貴重な宝物、"女神の大槌"は彼に破壊されてしまったし、特待入学したクラウス卿にも酷い対応をしたそうだ」


 オズワルドの口からは、ジグルドの悪行が止めどなく溢れ出る。

 学校の試験は全て教師の進退を脅して点を取る。

 魔法技能を競い合う王都一の大会では対戦相手に毒を飲ませ、全治三ヶ月もの被害を与えた。

 クラウスの妻たる女性に相手にされないとわかると、完全に闇墜ち。

 終ぞ、善良な人間ならば考えつかない悪事を、学園卒業までのわずか三年で行ったのだ。

 

「……挙げ句の果てには公爵家の財力と人脈を利用して、魔王復活を目論む"魔拝教"たる組織を設立。魔王の魂を復活させようとした。まぁ、これはクラウス卿が止めてくれたが、今でも儀式が行われた王国北部の一体は立ち入り禁止区域だ。……僕の覚えている主要な事件だけでもこんなにある」


 中には罪の軽い悪事もあるにはあるが数が多いのと、終盤には重い内容も増えてくる。

 全部併せたら懲役50年に相応しい悪行の数々だった。

 オズワルドの話を聞き、大臣たちはみな押し黙る。

 みなジグルドが収監されてから要職に就いたが、その悪行は全て知っていた。

 失言したかと思い震える大臣に、オズワルドは「とはいえ」と切り出す。


「ジグルドに見習って先日施行した奴隷狩り狩り推奨法は、当初の予定を超える効果を出している。国民は懸賞金が貰えると大喜びで、毎日のように奴隷狩りが殺されるか連行される状態だ。まぁ、国内にまだこんなにいたとは僕も信じたくはないがね。これもまた、ジグルドの善行と言えなくもないだろう。……クラウス卿は今のジグルドをどう評価している?」


 咎められることもなく、さらに話の矛先がクラウスに向かい大臣はホッとする。

 そのような大臣たちを横目に、クラウスは持論を話す。


「たしかに、行動だけ見ればジグルドが行っているのは善行です。住民にもそれとなく話を聞いてみましたが、感謝していました。ですが、過去の悪行が消えることはありません。奴が心の底でどう思って行動してるのか、まだ見極めが必要と考えます」

「ああ、それは僕も同意見だ。件のジグルドはどこに向かっている?」

「何が目的かは不明ですが、交易都市ブライトミアを目指しているようです」

「……ふむ、ブライトミアか。良くも悪くも、あの街は活気がある。良からぬことを企んでいなければいいがな」


 オズワルドが顎に手を当て言ったところで、魔導列車のスピードが減少し始めた。

 車内アナウンスにて、ブライトミアの名が響く。


「オズワルド様、どうやらブライトミアに到着したようです。恐れながら、これにて一度失礼させていただきます。引き続き監視を進め、また時期を見てご報告いたします」

「ああ、よろしく頼む。王国の平和が真に保たれるのか、君だけが頼りだ」


 通信を解除し、クラウスは魔導列車から降りる。

 素早くホームを見渡してジグルドとコレットの姿を見つけると、気配を断ってそっと後をつけた。


(ジグルド、お前が改心したのか、それとも心は未だ悪なのか……見極めさせてもらう。この王国の平和を守るため、真実を確かめるために……)

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


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