表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第16章 ブルースター ── 幸福な愛、信じ合う心
93/108

第93話「家族になるということ」

覚悟をもって話した“結婚”という言葉。

それは、二人だけで完結するものじゃない。

親と向き合い、理解してもらう。

そうして少しずつ、私たちは“家族”に近づいていく――

今回は、里奈が大悟の家族と向き合う様子を描きます。

週末の午後、大悟の実家の玄関前に立つ里奈は、

どこか緊張した面持ちで息を呑んでいた。


「大丈夫、すぐに慣れるさ」


そう言って、大悟が彼女の手をぎゅっと握る。

その温かさに、ほんの少し緊張がほどけた。


そのとき、玄関の扉が開いた。


「里奈ちゃん、いらっしゃい!」


にこやかに顔を出したのは、結衣だった。

変わらぬ明るさで迎えられ、里奈の表情がふっと和らぐ。


「おじゃまします……なんか、ちょっと緊張してて……」


「大丈夫だよ。私なんか、最初に涼ちゃんのお母さんに会ったとき、ガチガチだったもん」

「えっ、そうなの?」

「うん。でも、話してみたら意外と優しくてさ。緊張って、案外自分で膨らませちゃってるだけだったりするよ」


「えっ、ほんと?」


「ほんとほんと!」


結衣の飾らない一言に、思わず笑いがこぼれる。

その空気のままリビングへと入ると、大悟の両親がすでに待っていた。


「ようこそ、いらっしゃいました」


母親が優しく微笑む。

父親は少し照れくさそうに目を逸らしながらも、「まあ座れ」と促してくれた。


テーブルには湯気の立つお茶と、小さなお菓子の皿。


「わざわざ来てくれて、ありがとうね」


「いえ、こちらこそ……今日は、お時間いただいてありがとうございます」


背筋を伸ばして、里奈が深く頭を下げる。


父は軽く肩をすくめ、にやりと笑った。

「おまえもすみにおけないな〜。でも、大事なお嬢さんなんだから、大切にしろよ」


母は穏やかな笑みを浮かべ、優しく言葉を添えた。

「ほんとよ。しっかり守ってあげてね」


それを見て、結衣が元気よく声をあげる。

「そうだ!そうだ!」


すると里奈がくすりと笑い、ふっと一言。

「結衣ちゃん。笑」


場が和み、空気が一層柔らかくなった。


「……大悟から聞いてるわ。ちゃんと、ご両親にも話したんですって?」


「はい。まだ反対というか、心配されてる部分もありますけど……

ちゃんと向き合って、少しずつ納得してもらえるように頑張ります」


その言葉に、母親が優しくうなずいた。


「真面目なのね。大悟が選んだ人だから、大丈夫だと思ってたけど……やっぱり、素敵な子だわ」


「ちょ、母さん……」


照れたように目を伏せる大悟の横で、父親が咳払いを一つ。


「ま、俺としては……大悟が相手を大事にして、ちゃんと支えていけるなら、それでいいと思ってる」


父の視線をまっすぐ受け止めながら、大悟が口を開いた。


「……覚悟してるよ。ちゃんと支えるから」


短くて率直なその言葉に、部屋の空気が少しやわらかくなる。


「ねえ、いいタイミングだからさ」と、結衣が空気を読んで ふっと笑う。


「写真、撮ろうよ。今日が始まりの日になるかもしれないし!」


「写真?」


「うん、全員で一枚。ね、お父さん、お母さんも!」


なんとなく恥ずかしがりながらも、皆が集まり、スマホのレンズに向かって並ぶ。


「はい、チーズ!」


カシャッというシャッター音とともに、

“家族”になろうとする人たちの、小さな一歩が切り取られた。


里奈は、大悟の隣でそっと目を閉じて思う。

――この人の隣で、ちゃんと笑っていたい。

そして、私もこの家族の一員として、誰かを笑顔にできたら。


きっとこれからも、いろんなことがある。

でも、今日のこの穏やかな時間が、未来への確かな支えになる。

お忙しい中、今日も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ