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再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第16章 ブルースター ── 幸福な愛、信じ合う心
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第92話「信じてくれるなら」

順序が違う、軽率すぎる――そう言われても仕方ない覚悟だった。

それでも、自分たちの選んだ道が間違っていないと信じたい。

今回は、大悟と里奈が里奈の両親に「結婚」の想いを伝える場面を描きました。

厳しいまなざしの奥にある、本当の気持ちとは。

里奈の実家の玄関前。

大悟と並んで立った里奈がインターホンを押すと、しばらくして中から母親の声が聞こえた。


「はーい、今開けるわね〜」


玄関が開き、優しい笑顔の里奈の母が現れる。

大悟は軽く頭を下げた。


「おじゃまします」


里奈は靴を脱ぎながら、大悟にそっと問いかけた。


「緊張してる?」


大悟は小さく笑って答える。


「してないって言ったら嘘になるけど……でも、逃げるつもりもないよ」


小さく深呼吸し、意を決したように、里奈はリビングへと足を進めた。


両親は、すでに席についていた。

母は落ち着いた様子だったが、父は やや険しい表情で二人を迎えた。


「……今日は、何の用だ?」


その一言に、里奈が背筋を伸ばす。


「彼と、結婚のことでお話をしたくて来ました」


父の視線が大悟に向けられる。

その重みを正面から受け止めるように、大悟は まっすぐ前を見据えた。


「里奈さんと、本気で結婚したいと考えています。……許していただけないでしょうか」


短くも、真剣な言葉。


空気が少し張り詰める。

わずかな沈黙の後、父は表情を和らげ、ゆっくりと口を開いた。


「同棲していると聞いた。順序が違うと思う。……簡単には認められん」

そう言った後、ふっと口元を緩めて続けた。


「って、前の俺なら言ってたな。……でも、里奈が選んだ相手だ。なら、俺たちは応援したいと思ってる。信じていいんだよな?」


大悟は一瞬、息をのんだ。


「……はい。どんなときも、ずっと里奈さんを大切にします」


その言葉に、父は静かにうなずく。


「なら、頼んだぞ」


少し緊張がほどけた空気の中、母が穏やかに微笑んだ。


「あなた、変わったわね」


「そうか?」


「うん。前なら、机叩いてたかもね」


父は、ばつが悪そうに頬をかく。


「……まあ、俺だって多少は成長するんだよ」


それを聞いて、里奈が小さく笑った。


「ありがとう。ほんとに、ありがとう」


大悟も、そっと頭を下げる。


「ありがとうございます。大切にします」


この家の空気が、少しやわらかくなった気がした。



帰り際、玄関まで見送ってくれた母が、ふいに里奈の耳元で囁いた。


「……遥香も胡桃も、来たがってたんだけど、今日は どうしても予定があって。でもね、二人とも、こっそりお父さんに話してくれてたみたいよ」


里奈の目が、ぱちりと見開かれる。


「ほんとに?」


「ええ。あなたの幸せのためならって。……あの子たち、ちゃんと あなたのこと見てるのよ」


それを聞いた里奈は、胸の奥があたたかくなるのを感じた。

大悟と手を繋ぎながら、玄関を出た。


外に出ると、春の風がやさしく頬をなでた。

しばらく歩いた後、里奈がそっと口を開いた。  


「遥姉も胡桃も……本当は来たがってたんだって。さっき、お母さんがこっそり教えてくれたの。お父さんのこと、二人で説得してくれたみたい」


「……そうなんだ。お姉さんも妹さんも、会ってみたかったな。……ボロクソ言われるかもしれないけど」


「ふふっ、ないない。大ちゃんのこと、悪く言う人なんていないよ」


夕日に照らされる帰り道。

二人の影が、寄り添うようにのびていた。

お忙しい中、今日も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!

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