第88話「子ども2人(仮)」
今回は、ふとした会話から将来の家族像を描く、穏やかなひととき。
「子どもって何人欲しい?」そんな話題から広がる未来のイメージに、思わず笑ってしまうやりとりも。
二人で綴る“これから”の一歩が、細やかだけど確かな幸せを感じさせてくれるお話です。
「ねえ、結衣ちゃん。子どもって……何人欲しい?」
夕飯の後、のんびりソファに座りながら、涼也がぽつりとつぶやいた。
「ん? どうしたの、急に」
湯呑みを持っていた結衣が、ちょっと笑いながら振り返る。
「この前、料理のイベントで話した人が、子ども3人いるって言っててさ。毎日大騒ぎって言ってたんだけど、俺は翔平がいてよかったなって思ったんだ。兄弟ってやっぱ、いいよなーって」
「うん、それは わかるなあ。私も……2人くらい欲しいかな。ちゃんと育てられる余裕があればだけど」
「そっか、2人か……いいな」
結衣ちゃんは、そばに置いてあったお気に入りのノートを手に取り、さらさらとペンを走らせる。
涼也が何気なく覗きこむと、そこには こう書かれていた。
『子ども2人(仮)』
「えっ、仮!?笑」
思わず笑いながらツッコむ涼也。
「うん。まだ増えるかもしれないってこと♪」
「いやいや、軽っ! “仮”ってそんな軽く言う!?」
「だって未来のことなんてわかんないし〜」
そう言ってくすっと笑う結衣ちゃん。
それにつられて、涼也も照れくさそうに笑った。
ほんの些細な会話。
けれど、その一言一言が、未来への種まきのようで――
その夜。
並んで布団に入ると、涼也がぽつんとつぶやいた。
「……結衣ちゃんとの子どもに、早く会いたいな」
「ふふ。私もだよ」
ノートのすみに書かれた「(仮)」の文字。
そのメモが、意外と早く現実になるとは――
二人とも、まだ想像もしていなかった。
お忙しい中、今日も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!