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再生回数7回のラブストーリー  作者: 市善 彩華
第15章 ブルーデージー ── 協力、支え合い
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第87話「好きの証拠」

“好き”の気持ちって、

本人から直接じゃなくても、ふとした誰かの言葉で伝わることがある。


今回は、涼也から結衣、そして里奈へと届いた、

大悟のちょっと不器用な“好きの証拠”のお話です。

夜、食後の片づけを終えた頃。

涼也がふと口にした一言が、結衣の指をスマホへと向かわせた。


「そういえば、今日、大悟さんが“占いも悪くないかもな”って言っててさ。

それで、“里奈が『俺たちの相性が抜群だ』って言ってたんだよな”って、ちょっと照れながら話してたよ」


「えっ、兄が?」


結衣はスマホを手に取り、そのまま通話ボタンを押した。

数コールの後、電話の向こうで、里奈の明るい声が響く。


「もしもし? 結衣ちゃん?」


「ねぇねぇ、涼ちゃんから聞いたんだけど、兄が“占い信じたくなった”って言ってくれたんでしょ?」


一瞬、驚いたような沈黙。

そして、里奈の声が少しだけ柔らかくなった。


「えっ……ほんとに言ってたの?

大ちゃんのことだから、私が喜ぶと思って優しい嘘ついたのかな〜って思ってた…

でも……本当に思ってくれてたなら、すごく嬉しい……!」


その声に、結衣はソファにもたれながら微笑んだ。


「里奈ちゃんおめでとう。兄がそんなこと言うなんて、かなりレアだから(笑)

……きっと、それだけ大事に思ってるってことだよ」


電話の向こうで一瞬の沈黙。

結衣は、里奈が少しだけ涙ぐんでいると思った。


「……ありがとう、結衣ちゃん」


「どういたしまして。ほんと、よかったね」


その後の数秒は、お互いに何も言わなかったけれど、

その沈黙すら心地よくて、夜の静けさに溶けていった。



大悟は手元のスマホをいじっていた。

テレビは ついていたけれど、内容は全く頭に入ってこない。

ふと、画面をスリープから戻すと、検索履歴の一番上に浮かんだ文字列に、自分でも少しだけ苦笑する。


──「牡羊座 山羊座 相性」


ついさっき、自分で打ち込んだワードだ。

思わず、「……なんだよこれ」と自分で突っ込みながら、でも──そのまま検索ボタンを押した。


表示された画面には、似たようなタイトルが並ぶ。


「真逆の二人が惹かれ合う理由」

「山羊座×牡羊座の恋愛は、慎重と情熱のバランス」

「真面目と直感、だから惹かれる」


大悟は一つ一つに目を通しながら、眉間に軽くしわを寄せる。


「……ベストバランス、ねぇ……」


あのとき、彼女がそう言ってた。

今も、その声が耳に残っている。


「……俺、何やってんだろ」


ぼそっと呟いた声は、自分自身に向けたものだった。

けど、画面を閉じることはなく、しばらくそのままスクロールを続けていた。


「牡羊座は、勢いと情熱の星座」

「山羊座は、慎重と計画性の星座」

「反発するようで、実は支え合える関係」


思わず、口の端が少しだけ緩む。


「……信じるわけじゃねぇけど」


だけど──あのときの彼女の言葉は、確かに胸に残っている。


「……大ちゃん好き」


それでも、その言葉を思い出すたび、胸の奥がじんわりと熱くなった。

テレビの音は──いつの間にか消えていた。

画面の光だけが、静かな部屋に淡く灯っていた。



大悟がリビングに戻ると、ソファにいた里奈が嬉しそうに振り返った。


「電話、結衣ちゃんだった!」


「へぇ。話し声、活き活きしてたな。……仲良いな、相変わらず」


「うん! それでね、涼兄経由で、すっごい嬉しいこと聞いたの!」


「……まさか俺のことじゃないよな?」


ニヤつきながら聞く大悟に、里奈はパッと表情を明るくしてうなずいた。


「そう! 大ちゃんが“占いも悪くないかもな”って言ってたって!」


「……ああ、話が広まってんな……涼也、覚えてろよ」


目をそらしながら苦笑する大悟に、里奈は くすっと笑った。


「涼兄も結衣ちゃんも、大ちゃんのことに関しては、ほんっと筒抜けだよね(笑)」


「……ほんとにな」


「でもね、2人のおかげで知れたから、私は幸せ!

大ちゃんのことだから、私が喜ぶようにって無理して優しい嘘ついてくれたのかな〜って思ってたんだ。

でも……本当にそう思ってくれてたんだってわかって、めっちゃ嬉しかった……!」


「最初から信じてほしいんだけどな。

……俺にとって里奈の影響力、マジで絶大なんだわ」


照れ隠しのように言いながら、大悟は そっと、里奈の髪を撫でた。


その指先が離れると、大悟はポケットからスマホを取り出して、言った。


「……あと、ほら」


差し出された画面には、「牡羊座 山羊座 相性」「カップル 占い 相性」などの検索履歴と、いくつかのページが開かれている。


目をそらしながら耳を少し赤らめたまま、大悟は言った。

「……な、何となくだけど。里奈の言ってたこと、ちょっと気になって」


里奈は驚きと嬉しさで、ふっと笑った。


「なにそれ……かわいすぎるんだけど……!」


「うるさい。忘れろ、今の」


「忘れられるわけないよ。むしろ、ずっと覚えてる!」


「……ほんと、里奈には敵わねぇな」


そんなふうに笑い合う二人の間には、占いよりもずっと確かな“何か”が、確かに存在していた。

──それは、誰よりも信じ合えるという「相性」だった。

お忙しい中、今日も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!

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